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【声優養成所講師が解説】声優になりたい人が養成所前にやるべきこと
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どうも、福原安祥です。
ナレーターをしたり、声優養成所の講師をしたり、会社の経営をしたりしています。
今回のテーマは『役作り』です!メチャクチャ大事なテーマでございます。。
動画のコメント欄にいただいた質問にお答えしていこうと思います!
今回の「役作り」についてなんですが、これは世界中でいろいろな説があって、しかも「正解がまだわかっていない」っていう分野でもあるんですね。
なので、世界中の演者さん達が、教えてもらったことをベースにしながら、自分なりの方法を模索しているというかんじなんです。
今回は「僕の説」をお話ししていきますので、「これが絶対正しいわけではない」ということをご了承いただいたうえで、これからのお話を聞いていただければと思います!
今回の話を聞いたうえで、自分なりにアレンジするのはもちろんOKですよ!
動画はこちら↓
声優の「役作り」とは?
まずは、「役作りってなんなの?」というところから解説していきますね。
役作りって…なんだと思いますか?
よくある回答としては、「キャラになりきる」っていうものがあると思うんですけど、僕の意見はちょっと違うんですよ…。
キャラになりきるのは無理だと思います!ハイ。。
特に日本人はそうだと思うんですよ。日本人は外国の方に比べると、心のガードが分厚いんです。エヴァ視聴者にしかわからないネタですが「ATフィールド全開っ!」ってかんじなんですね。
日本人の先祖の人たちって、島国から出る手段がなかなか無かったので、「島国の中で嫌われたら人生終了」っていう状況だったわけです。逃げ場がなかったんですね…。
なので、本心をズバッと言わずに「空気を読む」という能力が発達したわけです。
その代わりに、「言いたいことを言う」っていう力が、日本人は育たなかったんですよ!なので、歴史的に見ても、日本人の心のガードは分厚いんですよね。
これは良し悪しではなくて、文化の差っていうかんじです。でも、そういう経緯を持つ日本人が、心を完全にオープンにして、キャラクターに完全になりきるっていうのは、なかなか難しいところがあるということですね…。
キャラの親友になれ
そういった事情があるので、僕が思う「役作りのポジション」というのは…「親友」です!
「キャラクターと親友になる」ということですね!地球上の誰よりも、そのキャラと仲がいい状態になることが役作りだと思っています。
どういうことか説明しますね。まず、アナタの親友を想像してみてください。親友がいないとか寂しいことを言わずに…がんばって想像してください…!
親友のことを人に聞かれたときに、「あいつだったらこう返すかな」とか「あの子だったらこういうふうに言うだろうな」っていうのは、なんとなくわかりませんか?
「こういうことがあったら喜ぶだろうな」とか「こういうこと言われたらムカつくだろうな」とかもわかりますよね?
そういう状態であれば、アナタはその親友の「代弁者」になれるはずなんですよ!親友の代わりにしゃべることができるということですね。
役作りというのは、これを「キャラにすること」なんです。
キャラクターは絵ですよね?絵であるキャラは言葉をしゃべれないし、感情を出せません。そこで親友であるアナタが、キャラのかわりに言葉を出したり感情を出したりすることが、役作りということなんですね。
プロが「アドリブがうまい」理由
この部分が「プロがアドリブがうまい」っていう話にも通じていくところなんですよ。
役作りをキッチリして、キャラクターと親友になっているので、現場でアドリブをポーンと振られてもすぐに返せるわけですね!
「そのキャラクターだったらこういうことを言うだろうな」っていうのがわかっているってことです。
よく養成所生とか新人声優さんに「アドリブの練習ってしたほうがいいんですか?」って聞かれるんですけど…
プロは、アドリブがうまいというよりも、「役作りがしっかりできている」ということなんですよ。なので、プロがインプロ(即興演劇)がうまいかというと、また別の話なんですね。。
アドリブというのは、役作りから生まれているということなんです!
こういう理論を知ってもらったうえで、ここからは実際に台本を使って役作りの練習をしてみましょう。
声優の役作りの練習をしてみよう!
実際に台本を使って、役作りの練習をやっていきましょう。
台本は、以前『セリフのオーディション対策』という動画で使用したものを使っていきますね。
まずは男性版からいきますね。
ルキ…なぜ裏切ったんだ…
ターガは…お前のことを心から信頼していた…
なのになんでこんなことを…
許さない…
お前を絶対に許さない!
つづいて、女性版です。
ルキ…なぜ裏切ったの…
ターガは…あなたのことを心から信頼していた…
なのになんでこんなことを…
許さない…
あなたを絶対に許さない!
役作りでまずやるべきこと
さて、役作りをするときに、まず1番最初にやらなきゃいけないのは…「事実を拾う」ことです。
アナタはこれから役作りを通して、キャラクターの親友にならなきゃいけないわけです。リアルに考えたときに、なんの情報もないのに親友になるってありえませんよね?親友のいろんな情報を知っているから、仲良くなれているわけです。
そして、その情報というのは…事実なんですよ!予想ではないということですね。
新人さんによくありがちなのは、「事実と自分の予想が混ざっちゃう」ということです。自分の予想はあくまで予想で、キャラクターに実際に起こったことではありません!
現実世界でいうと…噂話が流れてきて、それをあてにして親友になることはありませんよね?それと同じことなんですね。。
なので、役作りの一番最初は、「事実をピックアップしよう」ということです!
キャラの人生を考えることが大事?
ここで、よくある誤解についてお伝えしておきますね。
よくある誤解というのは、「役作り=そのキャラの人生を考えること」って考えてる人が多いってことなんですよ…。どこで生まれて、両親はなにをしていて、子供の頃はこんなかんじで…ということですね。
これもスゴく大事なんですけど、それ以上に大事なことは、「そのシーンで、キャラクターに起きてること=状況」です。
役作りと読解というのは、ものすごく近いということですね!これについても後ほど解説していきます。
メモを取れ
そして役作りのときの最大の注意点は…メモを取れっていうことですね!役作りは書きながらやってください!
頭の中でやっちゃう人がけっこう多いんですけど、よほど頭がよくないかぎり、絶対整理できません。
よほど頭がいい人でも、書くことで情報が目で見えるようになるので、それによって違った角度の想像が生まれたりすることもあるんです。なので、絶対に書いて整理してくださいね!
では、ここからは皆さんも一緒にやってみましょう。
まずは「台本から事実を拾う練習」をしていきましょう!
台本から事実を拾ってみよう
先ほどの台本から事実を拾ってメモってみてください。事実だけですよ…くれぐれも…!
やってみましたか?それではここからは一緒に事実を拾っていきましょう。動画ではホワイトボードを使って説明しているので、そちらもチェックしてみてくださいね!
まず最初の部分からわかる事実は「1,ルキがターガを裏切った」ということですね。
その次に「2,ターガはルキを信頼していた」ということも事実ですね。
さらに続けて台本を読んでいくと「3,演じるキャラクターはルキに激怒している」ということも事実です。台本から拾える事実はこれくらいですね!
上でも書いたとおり、役作りだからといって自分のキャラクターのことばかり考えてしまうと、1〜2の事実がごっそり抜けてしまうんですよ。
アナタが演じるキャラの「周辺情報」を含めて事実だいうことを注意してくださいね!
実際にアニメの主要キャラとかになってくると、例題のセリフ量よりもたくさんのセリフがありますので、その中から事実をピックアップしていくことになります。
設定を作る
事実を押さえたら、役作りで2番目にすることは…「自分で設定を作る」ことです!
台本は、家でいったら「設計図」みたいなものなんですよ。まだ図なので、書いてないことがメチャクチャあるんですね。
書いてないことに関しては、自分で設定を作るしかありません。
このときに注意してほしいんですけど…「台本と矛盾する設定を作っちゃダメ」ですよ!新人さんはけっこうやりがちなので注意してくださいね。
台本でいうと、ルキが裏切り者の設定になってますけど、「実はルキは無実で、主人公に詰められて、いま困惑している」という設定は…マズイんですよ。
なんでマズイかというと、演じるキャラはめちゃめちゃ怒ってますけど、自分で作った設定が「実はルキは無実なのに罪をきせられてる」みたいになってるわけです。
これ、アナタが演じるキャラが「怒れない設定」になってるんですよ!自分で本気で怒れない設定にしちゃってるわけです。。
どう考えても「怒り」のセリフなのに、怒りのボルテージを自分で下げちゃってるということなんですよ。なのでこれはマズイ設定というわけですね。
で!いい設定を作らなきゃいけないわけなんですが、今回は例として「ルキがターガを裏切った」という事実について設定を考えてみます。
ルキがターガを裏切ったのは事実ですが、その内容についてはまったく書かれていませんよね?こういうところを埋めていかなきゃいけないんです。
どうやって埋めていくかというと…「どんな裏切り方をしたのか?」とか「裏切られた結果、ターガはどうなったのか?」というとこなんかを、自分の設定で埋めていかなきゃいけないわけですね。
今回は「ターガは裏切られた結果、どうなったのか?」を考えてみましょう!
ここで考えられるのは…
- ターガが敵に捕まった
- ケガをした
- 死んでしまった
みたいなケースですね。この3つの中から自分が選ぶとしたら…どれを選べばいいでしょうか?
設定はドラマチックなほうを選べ
ターガがルキに裏切られた結果、どのパターンを選べばいいのかという話です。
先ほど考えたように、選択肢がいろいろある場合のポイントは…「ドラマチックになるほうを選べ!」です!
つまり、自分の感情が強くなるものを選ぼうということですね。
感情が強くなった結果、視聴者に訴えかける気持ちが強くなるので、視聴者はそのぶんひきつけられるというわけです。なので、ドラマチックな選択肢を選ぶことがポイントというわけですね!
どの選択肢が1番感情が強くなると思いますか?間違いなく「死」ですよね!
なので、ここでは「ターガがルキの裏切りのせいで死んじゃった」という設定にすれば、最後辺りの怒りのセリフをメチャクチャ強く言えるわけです。
たとえば、現場で「もうちょっと怒りのボルテージ下げてもらっていいですか」と言われたときは、「敵に捕まった」か「ケガをした」の設定にすると、怒りのボルテージも自然と下がるはずです。
こんなかんじで、台本に書かれていないことを自分でどんどん決めていって、キャラクターとアナタが親友になるように、「わからないところを埋めていく」という作業が必要ということですね!
役作りはどのくらい時間をかけるべき?
難しいのは、キャラクターのことを考える作業って無限にできちゃうってことなんですよ。
養成所の生徒とか新人声優さんとかに「役作りってどれくらい時間かければいいですか?」って聞かれることがけっこうあるんですけど、正解はありません!時間が許す限りやってください。
もちろん、それぞれの生活があるので、時間の都合が許す限り、本番前までキャラと仲良くなる努力をいっぱいしてくださいね!キャラクターのことを考えれば考えるほど仲良くなれますよ!
キャラの外見を決めよう
ここまでくれば、「キャラクターの外見」がぼんやりと想像できるようになってきたはずです。ここでハッキリさせましょう!
役作りでやらなきゃいけないことの3番目は…「外見を決める」ことです!
絵が描ける人は、このタイミングで自分が演じるキャラクターの絵を描くのが一番いいですね。ただ、僕もそうなんですけど、絵心が地獄。。みたいなかんじの人は頭の中でイメージすればOKですよ!
あとは、「あのアニメの、あのキャラみたいなかんじ」とかでもOKですよ。「髪の色・髪の長さ・体型・どんな服を着てるのか」このあたりは最低限考えてくださいね。
声を決めるのは最後!
「ぜんぜん出てこない!」って思った方もいるかもしれませんが…役作りの4番目でやっと「声」がでてくるんですよ!どんな声をしてるのかってことですね。
新人さんにありがちなんですけど、役作りで声から決めちゃう人が8〜9割くらいいるんですよ。そういう人はだいたい失敗します。。
よくよく考えると、キャラクターの情報がなにもない段階で声を決めるのって無理じゃないすか?キャラのことをいっぱい知ったうえで、たぶんこんな声なんだろうなって決めるほうが自然だと思います。
なので、「声はあくまで最後」ですね。このときに、声質だけ決めちゃう人がけっこういるんですけど、そのキャラクターのしゃべりのテンポや抑揚も考えなきゃいけません!
ここまでで4段階紹介しましたね。これで役作りはいったん完了です!
「声優の役作りの方法」のまとめ
今回は声優にとってメチャクチャ大事な『役作り』について解説してきました。まとめると…
役作りのステップ
- 台本から事実を拾う
- 設定を自分で考える(ドラマチックな選択肢を選ぶ)
- キャラの外見を決める
- 声を決める
ということでした!とりあえず、いま僕が紹介した感じでやってみてもらえると、けっこう深みのあるキャラクターに仕上がると思いますよ!
とりあえずやってみて、それからアナタのやりやすいようにアレンジするのは、冒頭で書いたとおり自由です!
困ったことに、新人声優さんの多くは役作りの威力というものをスゴく軽く見てる人が多いんですよ。。「そこまでしなくてもセリフしゃべれるじゃん」って思ってる人が多いんですね。。
でもですね、役作りをしっかりした声としてない声…ぜんぜん説得力が違うんですよ。役作りをしっかりしたキャラって、声が生きてるんですよね。逆にいえば役作りをしていないキャラの声は生きてないんです。どこか人間的じゃないってことですね。
ここで手を抜かないのがプロで、手を抜いちゃうのがアマチュアですよ!
プロの領域にくれば、否が応でも役作りしなきゃ周りのエグイ人たちにとても勝てないということがわかると思うんですけど、プロになってから気づいても遅いんですね…。
今のうちに「役作りは大事なんだ」ということに気づいてもらって、役作りをがんばってするようにしてくださいね!
それではまたお会いしましょう。
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