歴史の中でも特に人気な「戦国時代」。戦国時代をテーマにした大河ドラマや、戦国時代をモチーフにしたアニメや漫画・ゲームなどが火付け役になり、今や若い女性にも戦国ブームが到来している。
「戦国武将」についても、大河ドラマでのイケメン俳優の抜擢などで拍車がかかり、戦国武将のイメージへの思い込みが独り歩きしている。(実際は多分、みんなけっこう普通のおっさん…)
そこで一石を投じたいのは、戦国武将が乗っていた馬のこと。大河ドラマでも、戦国武将の巧みな馬使いに魅了される人は多くいると思うが、実はこの馬、私たちがイメージしている馬とは到底かけ離れているようだ。
今回は、戦国武将が乗っていた馬の雑学を紹介しよう!
【歴史雑学】戦国武将が乗っていた馬は「ポニー」
【雑学解説】戦国時代の馬は大河ドラマのような競争馬ではない!
戦国時代ファンからすると、ショッキングな事実ではあるが、戦国武将は大河ドラマのような競走馬に乗っていたわけではない。
ドラマで使われているサラブレッドはイギリスで誕生し、近代に競争馬として改良された品種である。体高160~170cmと、スラッと背が高く、時速60キロで走る躍動感あふれる姿が合戦のシーンに華を添える。
しかし…彼らが日本に入ってきたのは約150年ほど前で、約500年前の戦国時代には絶対にいない。
…じゃあ、戦国武将たちが乗ってた馬って…?
戦国時代の馬がポニーだといわれる理由
ポニー
「戦国武将」「馬」と聞いて、武田信玄の騎馬隊を連想する人は多いんじゃないか。
信玄の拠点である信濃(現在の長野県)が、日本の在来種である「木曽馬(きそうま)」の産地であったことも、信玄の騎馬隊が有名になった理由のひとつといわれている。
問題はこの木曽馬がどんな馬だったかだ。以下に山梨県にある「秋葉台木曽馬牧場」での乗馬の様子が収められている。
大きめの頭部にぼてっと太った体つき。太くて短めの肢、そして体高は約125~135㎝。つまり、分類的には「ポニー」と呼ばれる馬種帯だ。
平均体高が約160㎝ほどあるサラブレッドと比較すると、とても小さな馬で、もちろん時速60kmで走ったりなんてできない。
動画は公家風の格好でそれなりに速度が出ているが、重たい鎧武者がまたがれば、もう歩兵が走るのと変わらないぐらいの速度しか出せない。そんな可愛い馬、戦に連れてかないで~!
武田家の本拠である甲府の躑躅(つつじ)ケ崎館で、戦国時代の馬の骨格が発掘されており、その馬骨の復元をすると、その体高は約120㎝ほどしかないことも分かっている。
このほかにも日本には北海道和種・野間馬・御崎馬など、いくつかの在来種がいたが、いずれも馬種帯はポニーである。
こういったことから、戦国武将はポニーに乗っていたと考えるのが妥当な線だといえる。
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戦国武将は、戦の最中に馬を使っていたわけではない
小さなポニーにまたがってつつき合う戦国武将はなんともシュールだが、実のところ、これらの軍馬は戦の最中は使われなかったといわれている。
戦国時代の戦というと、数千同士がぶつかり合う混戦。そんななかで特別速くもない馬にまたがっていれば逆に動きにくく、敵の標的になってしまう。
また戦国武将にとって馬はステータスだったため、大事な馬を傷つけないためにも、合戦には馬から降りて臨んでいたというぞ。
要するに馬は戦地に赴くための足である。木曽馬などの在来種は性格もおだやか。頑丈で粗食にも耐えられるため、長い距離を移動するにはむしろ向いている。一方、サラブレッドはたしかに足は速いが、デリケートで扱いにくい面があり、長い移動には耐えられない。
そう、運搬用の馬としては、在来種はめちゃくちゃ優秀なのだ!
信玄の騎馬隊がもてはやされるのは、ほかの大名よりもっている馬の数が多かったからで、彼らも騎馬隊といいながら、合戦自体は馬を降りて行っていたようである。
移動中に乗っているのも有力武将だけだったみたいだし、それで騎馬隊というのもいかがなものか…まあ、後世の人が勝手に呼び出したのかな。
ちなみに織田信長は100頭以上も馬をコレクションしていたなんて話も。戦には使わないし、移動中も有力武将しか乗らないならそんなにいらないよね。これに関しては完全な趣味という感じか…。
【追加雑学】戦国時代の馬はポニーではないという説も!
戦国時代におけるポニーの有用性を説いておいてなんだが、実は「ポニーではない!」という説も挙がっている。
木曽馬は農民が使っていた小型の農耕馬のことで、戦国武将はモンゴルから来た立派な馬に乗っていたというのだ。
昔の日本での馬はかなり重要な役割で、農耕や荷役、運用など様々な分野で、それぞれの用途に応じて馬種が育成されていたという。軍馬についても、育種技術が盛んに行われ継承されていたことから、戦国時代には、戦闘のために特化した軍馬が存在したということだ。
競争馬のようなサラブレッドほどではないにせよ、体高が約145㎝を超える馬も存在していたとも考えられる。しかも、軍用に特化して育成された馬なので、体力や闘争心の強さは別格だったともいわれている。
雑学まとめ
戦国武将が乗っていた馬に関する雑学をご紹介した。歴史の真実はひとつのはずなのに、新史料の発見や発掘調査などにより、歴史上の出来事や人物の解釈が変わることは多々ある。歴史の教科書も毎年書き換えられていくため、世代によっても歴史の内容に違いが生じて、しばしば話題になることも…。
今回のテーマもそのひとつで、イメージからかけ離れている馬の実体にショックを受けた人も多くいるだろう。しかしよく調べていくと、それにしても歴史の断片をつぎはぎして解釈したに過ぎないことが分かる。
実際にその時代を過ごした人がいない状況では、答えの出しようもない。私たちの頭のなかのイメージが素晴らしいものなら、それもそれでありなのではないか。
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