「Welwitschia mirabilis」…ウェルウィッチア・ミラビス。なんだか上品な女性のような名前をした植物だが…、その日本名はなんと「キソウテンガイ」…? そう、奇想天外なのだ。
植物の名前は舌を噛みそうな学術名から、「なんだこれは?」と思う通称まであって、興味深い生態をもつものも多い。
しかし…ウェルウィッチアの奇想天外さ加減には、並大抵の珍植物では敵わない。今回はそんなとっても珍しい植物・ウェルウィッチアの雑学に迫ろう!
【自然雑学】ウェルウィッチアという植物の日本名は「奇想天外」
【雑学解説】世界三大珍植物のひとつ「奇想天外」とは?
奇想天外ことウェルウィッチアは、アフリカはナミビア共和国および、アンゴラ共和国に位置する世界最古の砂漠、ナミブ砂漠に自生する植物だ。何を隠そう、ナミブ砂漠以外にはどこにも咲かない。
その寿命は1000年を軽く超えるといわれ、1500年の個体も存在する。日本の歴史でいえば古墳時代から生き続けているものもいるわけだ。こいつはとんでもない…。
まずは動画でその奇妙な全貌をご覧いただこう!
ウェルウィッチアという名前は、1859年にこの植物を発見したオーストリア人探検家フリードリヒ・ウェルウィッチという人物に由来する。
一方の奇想天外という和名は、1963年に石田兼六という人物が命名したものだ。見たまんまというか、またわかりやすい名前を付けたもんだ。
このほか、観葉植物として人気の万年青(オモト)に似ていることから、「砂漠万年青(サバクオモト)」という別名で呼ばれたりもする。やっぱり変わり者にはたくさんニックネームが付くんだな。
世界三大珍植物でも奇想天外さは隋一
ウェルウィッチアはその断トツの珍妙さから、世界三大珍植物にも選ばれている。三大珍植物のラインナップは以下の通り。
- ラフレシア
- オオオニバス
- ウェルウィッチア
…となっている。ラフレシアなんかはポケモンの名前にもなっているし、かなり有名なので知っている人も多いだろう。
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ウェルウィッチアは、そんな珍しい3つの植物のなかでも隋一の希少性である。
ラフレシアとオオオニバスには類似植物が4種類程度あるが、ウェルウィッチアは1科1属1種。地球上のどこを探し回っても似た植物が存在しない、オンリーワン中のオンリーワンなのだ!
植物分類学上の分類項目は、研究者によってさまざまな説があるが、とにかくこの世に類似植物がないことはたしかだ。
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生涯伸び続ける奇想天外な葉っぱ
ウェルウィッチアの見た目はとにかく文字にするのが難しい。たくさんの葉があるように見えるが、実は本葉は2枚しかなく、それが生涯伸び続ける。伸びる過程で裂けていき、360度に広がるので、たくさんあるように見えるだけだ。
1枚の葉は長いもので4mにもなるといい、それこそ長寿の個体は規格外のでかさである。葉先は枯れていくが、根元からどんどん新しく伸びていくため、先っちょがシワシワという余計に変な見た目になる。
「不死の二枚葉」なんてカッコイイ通り名も付いているのだが、「世界で最も醜い植物」にランクインするくらい、見た目がアレだ。感想としては…地面に落ちたカツラって感じか。
よく言われているものだと、「気が狂った踊り子」・「立ち往生したタコ」などなど。ほんとうにニックネームの多いヤツである。というか軒並み人聞きが悪い。
まあ、これは立ち往生したタコだよね…という動画を見て下さい。
うん…お世辞にも綺麗とは言い難い。
【追加雑学①】過酷な環境で生き残るために進化した「奇想天外」
ナミブ砂漠は日中の気温が40度にも達する灼熱の砂漠だ。おまけに年間降雨量は平均25mm程度。参考までに東京の平均年間降雨量は、1528mm。雨の少ない12月でも1ヶ月で51mmである。
…ナミブ砂漠に雨なんてほぼ降らないのだ。ウェルウィッチア…マジでどうやって生きてんの…。
そう、ウェルウィッチアの奇妙な姿は、この過酷すぎる環境で生き延びるためのものなのだ!
冷却機能に優れた葉っぱ
まず生涯伸び続ける葉っぱは表裏の両面で同数の気孔をもっており、大気中から湿気を吸収し、蒸散させる能力に長けている。
この水分を取り込んで蒸散させる働きで葉っぱの温度を下げ、灼熱の環境に耐えているのだとか。
地中10mにも伸びる根っこ
ウェルウィッチアは非常に深く根を張る植物で、長いものだと10mもの根を伸ばす。これで乾燥したナミブ砂漠でも、地中深くの地下水を吸い上げて生きられるわけだ。
ナミブ砂漠は2~4月に雨季があり、その時期にはとてつもない集中豪雨が降ることがある。これが洪水を起こすほどのこともあるといい、ウェルウィッチアはその際にできる川沿いに自生している。
1年の降雨量が少なくても、集中的に降ったその雨が染み込んだ地下水を頼りに生きていくのだ。また海岸には年間100日ほど霧が発生する箇所もあり、その水分を頼りに咲いている場合も多い。
…雑草ではないが、これがほんとの雑草魂である。
【追加雑学②】奇想天外は種子をつけるのに25年もかかる
ウェルウィッチアは雄花と雌花が別の株に分かれている植物だ。雌花は茎の中心部から8cmほどの枝を伸ばし、松ぼっくりのような球果状の種子を実らせる。雄花はこれよりも枝が短く、小さい胞子嚢が6つ付いている。
ウェルウィッチアは寿命もとてつもなく長いが、種子を実らせるのにもとっても時間がかかる。なんと雌花が発芽してから種子が実るまで、25年もの期間を要するというぞ!
植物って普通は毎年実をつけるものなんじゃないの…? びっくりするほど気が長い…。
そのためウェルウィッチアは株数がなかなか増えず、貴重な植物として保護管理されているのだ。ちなみに花といっても雌花は緋色・雄花は灰ががった緑と、いっちゃ悪いがそんなに綺麗なものではない。
こちらは珍しい奇想天外(ウェルウィッチア)の花です。 pic.twitter.com/DVvQNNEh
— みけ (@happanoouti) August 11, 2012
【追加雑学③】奇想天外は自分で栽培可能!国内でも見られる
世界中でナミブ砂漠にしか自生していないウェルウィッチアだが、実は日本でも栽培することができる。そりゃあナミブ砂漠で生きられたら、もうどこ行っても平気でしょ。
サボテンの扱いに近く、本来は音質で育てるのが望ましいというが、案の定、適当に育ててもけっこうとなんとかなるという。そういや、サボテンも世話するのは楽だしね。
ヤフオクやメルカリなどでも出品されていることがあるが、生産販売をしている「浦部陽向園」など、専門のお店で買ったほうが状態のいいものが手に入りそうだ。しかしさすがに希少なだけあって、お値段は一株2~3万円を超えてくる。
日本国内の植物園で見れる施設は、大阪にある「咲くやこの花館」。
また茨城県の「筑波実験植物園」でも見ることができる。近くに住んでいる人は、見に行く価値も十分にあるぞ!
以下は、「咲くやこの花館」のPR動画。ウェルウィッチアも4:50~しっかり映っている!
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【追加雑学④】奇想天外以外の長寿な植物たちを紹介
1000年超えという驚きの長寿を誇るウェルウィッチアだが、実は植物界で1000年以上生きている猛者は少なくない。
以下にそんな植物の長老たちを紹介しよう。
縄文杉(日本)
日本にも、樹齢1000年を超える植物は存在する。鹿児島県の屋久島に生息する屋久杉はそもそもご長寿揃いだが、その中でも「縄文杉」と呼ばれる木は、樹齢3000年から7000年という恐ろしい長寿だ。まさかの紀元前生まれ…。
この縄文杉という名前は、縄文時代から生きているから・縄文時代に作られていた火焔(かえん)土器にその形状が似ているから…などというところにちなんでいるという。
以下の動画で縄文杉を始めとする、屋久島の古木たちが紹介されている。なんとも神秘的な雰囲気だ…。
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オウシュウトウヒ(スウェーデン)
オウシュウトウヒは、原産地がヨーロッパの常緑針葉樹である。主にスカンジナビア半島やアルプスなどに生息しているこの植物はモミノキの仲間であり、クリスマスツリーとしてよく使われている。
そのほかにも材木として、建築材・ヴァイオリンやギターの表板などに使用されているそうだ。現地人からすると親しみ深い木材なのかも。
高さが50mにもなるというこの巨大な木の中でも、2008年にスウェーデンのダラルナ地方で発見されたものは、樹齢約9550年ということが判明している。あと450年で10000年!
クレオソート・ブッシュ(アメリカ)
クレオソート・ブッシュは、アメリカ南部やメキシコの砂漠などで見られる常緑低木である。この植物は、自らが育つために周囲の土壌に毒性の物質を排出し、他の植物が生育しないようにするという。
そんな変わった性質をもったクレオソート・ブッシュの中でも、カリフォルニア州のモハーヴェ砂漠に生息しているものは、なんと樹齢12000年なのだという。どんなに長生きであろうが、周りに誰もいない一生なんて楽しいのだろうか…。
以下が問題のクレオソート・ブッシュを映した動画だ。たしかに等間隔に木が生えていて、周りにほかの植物がないことがわかる。
…と、ここで気付いたが、これらの長寿な植物たちは、総じてどれも木である。そう考えると草なのに1000年以上生きているウェルウィッチアはやっぱりすごい!
ウェルウィッチア(奇想天外)の雑学まとめ
今回は、世界一奇想天外な植物ウェルウィッチアの雑学をお届けした。
優美な学術名のわりに見た目がアレなウェルウィッチア。とてつもない長寿を誇るこの植物を家で育てれば、世紀を超えて生き続け、家宝に昇格するかもしれない。
そう考えるとロマンがあるが…、難点はゴミと間違って捨てられないかどうかだ。
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