「そばとうどん、どっちが好き?」という質問は、「犬と猫、どっちが好き?」と同じくらい意見が分かれそうな質問だと思う。そば派もうどん派も数としてはいい勝負なのではないだろうか。
しかし「年越しには、そばとうどん、どっちを食べる?」という質問になれば、おそらくほとんどの人が「そば」と答えるのではないだろうか。年越しそばの習慣は昔から日本人につよく根付いた風習である。
ところが「うどん県」として有名なうどんの聖地、香川県では、年末に「年越しうどん」を食べる家庭が多いのだという。うどんは香川県の誇りだから、気持ちはわかる。しかしこれは、昔からの風習なのか、それとも…? 今回はこの真相についての雑学をご紹介しよう。
【食べ物雑学】香川県では「年越しうどん」が定番
【雑学解説】香川県民が「年越しうどん」を食べる理由
香川県の「年越しうどん」が全国的に注目を浴びたのは「秘密のケンミンショー」というテレビ番組で紹介されてから。なんと、香川県では昔から、年越しそばの代わりに年越しうどんを食べる家庭が多いとか。
しかし、年越しそばにはたしか「麺が切れやすいそばで厄災を断ち切る」という意味や、「幸せが細く長くつづきますように」という意味が込められていたような…。その点は香川県民は気にしないのだろうか?
年越しうどん派の主張としては「うどんは長寿を願う縁起の良い食べ物」「太く長く生きられますように」というポジティブな解釈がされているようだ。
たしかにうどんは短いわけではないので問題なさそうだ。少しだけこじつけ感はあるが、年越しという大事な場面こそ、うどん! 香川プライドといっていい。
それにしても、一年中うどんの消費が多いのだから、大晦日くらいそばを食べたいと思わないのだろうか? あまり大きな声ではいえないが、実は香川県民に調査したところ、年越しそばを食べている家庭が意外に多いことがわかった。
とはいえ、他県と比較すると年越しうどんを食べたという家庭が非常に多いのは事実。年越しそばとうどんの両方を食べた家庭の数を合わせると、年越しうどんを食べた家庭のパーセンテージは、年越しそばだけを食べた家庭と同じくらいなのだ! 他県ではこうはいくまい。
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【追加雑学①】新たなブーム「年明けうどん」とは?
年越しにうどんを食べる県民性に「さすがうどん推しの香川県」と感心したかもしれないが、いくら香川県とはいえ、年越しにそばを食べる家庭も多いようだ。年越しうどん率が思ったより伸びないのは、実は新たなうどんの風習が台頭しつつある証拠かも知れない。
その新たな風習とは、年越しそばの真逆をいく、その名も「年明けうどん」だ!
「年明けうどん」は、なんと「どん兵衛」などのカップうどんとして販売もされている。年末年始にスーパーやコンビニで見かけたことはないだろうか。白いうどんに梅干しなどの赤いものをトッピングすることで、縁起の良い見た目も人気の秘密。
元旦から小正月の1月15日までに食べるという定義もあり、新しいながらも非常に取り入れやすい風習だ。大仰なおせち料理や面倒な雑煮と違い、手軽に正月気分を味わうこともできる。
仕掛け人は「さぬきうどん振興協議会」さん。実によくできた新風習だと思わないか? わたしはすっかりのせられて「来年の正月は年越しうどんを食べよう!」と張り切っているぞ。
香川の郷土料理「しっぽくうどん」
年越しそばのかわりに食べる、香川県の「年越しうどん」は、代表的な郷土料理のひとつ「しっぽくうどん」というものらしい。単純にいつものうどんで年越ししているわけではなさそうだ。
「しっぽくうどん」は、香川県の寒い時期に考えられたうどんの食べ方なのだ。温かいうどんに、季節の野菜をだしで煮込んだ具材をたっぷりかけて食べる。もちろん、うどん屋のメニューにもあるから、県外から訪れても味わうことができるぞ。
年越しは郷土料理の「しっぽくうどん」をいただき、年が明けたら縁起の良い「年明けうどん」で祝う。これが香川県民のスタンダードということになるだろうか。
うどんに次ぐうどん。飽きたりしないんだろうか…。本当は少し無理していないか?
【追加雑学②】香川県のうどんへの情熱がスゴい
ごりごりのうどん推しが印象的な香川県だが、実際香川県におけるうどんの消費量は全国平均の2倍もあり、大量にうどんを食べているといっても過言ではない。このうどん消費量、実はちょっとした問題を抱えているのをご存知だろうか。
残念ながら香川県は、糖尿病による死者が多いことで知られている。
うどんだけが糖尿病の原因というわけではないのだが、うどんを2玉・3玉食べたうえに、おにぎりやおいなりさんをセットで食べる県民も多く、つまりは「炭水化物の過剰摂取」につながっている。
そこで、香川県は立ち上がった! 知恵をしぼって、なんと「血糖値を下げるうどん」を開発したのだ。
この新しいうどんには「長命草」が練りこまれている。長命草は血糖値を下げる働きをするポリフェノールなどの栄養素が多く含まれていて、マウス実験でもその効果が証明されているという。
さらに、うどんの汁も飲み干す香川県民のために、塩なしのうどん汁にする改革もはじまっている。「うどんの消費を抑える」という選択肢は香川県にはないのだ! うどんを心から愛している証拠ではないか。
もうひとつ、どうしてもご紹介したい香川県の「うどん愛」がある。香川県が薬物根絶標語を募集したところ「すいたくなったらうどんを吸うよ」という標語が選ばれ、ポスターになった。もはや香川県のうどん愛は、人道を踏み外さないための旗印にまでなっているということだ。
年越しうどんの雑学まとめ
香川県のうどんに対する熱いおもいが全国に広まり「年越しうどん」は周知されつつあるし、いまや「年明けうどん」は新たな習慣のビッグウェーブになりつつある。ひとえに、考え抜かれたPR活動の賜物である。
わたしはそばアレルギーをもっている。成人するまではそばが大好きで、もちろん年越しにはそばを食べていた。ところが、二十歳を過ぎたある日突然、アレルギー反応が現れたのだ。当然、それ以来年越しそばを食べることができなくなった。
大晦日、家族が皆おいしそうに年越しそばを食べている…。悲しかった。だから、この「年越しうどん」の存在はわたしを勇気づけてくれた! 決して大げさではない。「太く、長く」縁起の良い年越しうどんは、香川県民ではないけれど、わたしのスタンダードに決定だ。
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