名探偵コナンの登場人物は、推理作家や推理小説のキャラクターが名前の由来になっていることが少なくない。灰原哀は、人間が幼児化する薬を作った人物で、作中屈指の人気キャラクターである。
灰原哀の名前も探偵から考えられたといわれていたが、実際は全く違う人物の名前が由来になっていることが判明している。それは、シャーロック・ホームズシリーズで大きな存在感を見せた女性の名前である。
灰原哀のモデルにまつわる雑学をご紹介しよう。
【サブカル雑学】「名探偵コナン」の灰原哀のモデルは、シャーロック・ホームズが愛した唯一の女性?
【雑学解説】灰原哀のモデルはアイリーン・アドラー
名探偵コナンに登場する灰原哀は、人間が幼児化する薬・アポトキシン4869の開発者である。主人公の工藤新一がこの薬を飲まなければ、作品は成り立たないという意味で非常に重要なキャラクターである。
灰原哀というのは偽名であり、2人の女性探偵「コーデリア・グレイ」の「グレイ=灰色」と「V・I・ウォーショースキー」の「I=アイ」から、阿笠博士とともに彼女自身が考えたとされていた。
下の動画はV・I・ウォーショースキーが主人公の映画の予告編だ。
しかし、原作者・青山剛昌が雑誌「ダ・ヴィンチ」の中で、灰原哀の名前はアイリーン・アドラーから考えたとコメントしている。
名前の元になった人物を隠していたことと、アイリーン・アドラーはシャーロック・ホームズシリーズで特別な存在だけに、ファンに与えた衝撃は大きかったようだ。
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アイリーン・アドラーはホームズを負かした女性
アイリーン・アドラー(Irene Adler)は、シャーロック・ホームズシリーズの最初の短編「ボヘミアの醜聞」に登場した女性である。
ボヘミアの醜聞は、ボヘミアという架空の国の国王が、ホームズの元を訪れたことから物語が始まる。国王は皇太子だった5年前に、オペラのプリマドンだったアイリーン・アドラーと交際していた。
しかし、国王はスカンジナビアの王女と婚約してしまう。そこへ、アイリーンから2人で撮影した写真を、婚約発表の日に王女に送りつけるという手紙が届く。
国王は写真を手に入れるために強盗などあらゆる手段を使うが、写真を見つけることはできなかった。婚約発表の日が迫り、焦った国王はホームズを雇って写真を手に入れようとしたのだ。
変装したホームズは怪我人のフリをして、堂々とアイリーンの自宅に入れてもらう。さらに、ホームズの雇った人間が近所で偽の火事騒ぎを起こす。
ホームズは火事に焦ったアイリーンの様子から、写真の隠し場所を特定する。翌日、写真を回収することにしたホームズは自分のアパートに戻るが、玄関で若い男性に挨拶される。その声に聞き覚えがあったが、誰の声か思い出すことができない。
翌日、国王と一緒に写真を回収に行くホームズだったが、アイリーンは「自分も結婚するので写真を悪用するつもりはない」という手紙と、自分1人が写った写真を残して、姿を消してしまっていた。
アイリーンは、火事騒ぎが写真の隠し場所を調べるために仕組まれたものと見抜き、変装してホームズの後をつけていたのだ。声をかけた若い男性は、変装したアイリーンだったのである。
ホームズは国王に依頼を果たせなかったことを謝罪する。しかし国王は、アイリーンが写真を悪用しないといった以上安全だと断言し、とりあえずの謝礼としてエメラルドの指輪をホームズに渡そうとする。
だがホームズは、指輪よりも貴重なものとして、アイリーンが写った写真を国王から受け取っている。
それからホームズは、アイリーンのことを「The woman」と呼ぶようになったという。定冠詞をつけて呼ぶことは尊称と考えられる。これらの態度からアイリーン・アドラーは、ホームズにとって特別な女性と考えられている。
作中で「The late Irene Adler」という表現が使われているが、この表記は普通故人に使われるものだ。そのため、姿を消した後にアイリーンは死んだと考えられている。
ただし、まれに既婚者に使われることもあるので、単に結婚したことを書いただけかもしれない。コナン・ドイルのコメントは一切ないため、真相は不明である。
【追加雑学①】原作でホームズが恋愛感情を抱いた描写はない?
シャーロック・ホームズは女性を見下したような部分があったが、アイリーン・アドラーに出会ってからはそういった面がなくなったとされている。
いずれにせよ、女性との恋愛が全く描かれないホームズが、明らかに特別な反応を示した女性であることは間違いなく、アイリーン・アドラーはホームズが愛した女性と紹介されることが多い。
「シャーロック・ホームズ ガス燈に浮かぶその生涯」「冬のさなかに ホームズ2世最初の事件」などの二次創作の小説で、ホームズとアイリーンの子供が登場している。
名探偵コナンの映画「ベイカー街の亡霊」の中でもはっきりと、ホームズが愛した女性と明言されている。工藤新一の憧れの名探偵はシャーロック・ホームズである。そのホームズにとって特別な女性だったアイリーンが、灰原哀の名前のモデルというのは非常に大きな意味があるように感じる。
ただし、シャーロック・ホームズシリーズの作中で、ホームズがアイリーンに恋愛感情をもっている描写がされたことはない。あくまで、その可能性があるような描かれ方をしただけで、語り部であるワトソンは、ホームズは恋愛感情をもっていないと明確に否定しているのである。
もちろん、これはワトソンの私見であり、真実かどうかわからない。しかし、後の原作内でホームズは自分は人を愛したことがないと述べている。
少なくとも表面的には、シャーロック・ホームズの恋愛感情は完全に否定されているのである。また、アイリーンはホームズとまとも話したことはなく、普通に考えれば恋愛感情はないだろう。
ホームズがアイリーンを愛しているというのは、ホームズの恋を望んだファンの願望なのである。ちなみに、名探偵コナンの原作でもホームズがアイリーンを愛しているというセリフは一度もない。
「アイリーン・アドラーはホームズが認めた唯一の女性」という表現にとどまっている。ホームズとアイリーンの関係には、ファンのあいだでは議論の種になっている。
デリケートな問題なので、言及を避けたのかもしれない。
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【追加雑学②】アイリーン・アドラーはさまざまな作品に登場している
アイリーン・アドラーはシャーロック・ホームズシリーズでは、短編に1回登場しただけで出番はほとんどないといっていい。しかし、ホームズを扱った小説・漫画・映画・テレビドラマにはアイリーンが多数登場している。
なぜか、アイリーンは犯罪者にされてしまうことが多い。しかし、原作では国王の結婚を破談にするため写真を送りつけようとしているだけであり、アイリーンが犯罪を犯したことはない。
2009年の映画「シャーロック・ホームズ」ではプロの泥棒として登場し、テレビドラマ「SHERLOCK」では、「SMプレイの女王」として登場し賛否両論を呼んだ。
2012年のテレビドラマ「エレメンタリー ホームズ&ワトソン in NY」では、ホームズのかつての恋人という設定で登場している。下の動画はこのドラマを紹介したものだ。
ホームズの宿敵ジェームズ・モリアーティに殺されたことになっていたが、モリアーティの正体こそアイリーン・アドラーだったという驚愕のストーリが展開された。
モリアーティが主人公の「憂国のモリアーティ」では、アイリーン・アドラーはイギリスの醜聞を知ったせいで命を狙われている。下の動画は「憂国のモリアーティ」のPVである。
イギリス諜報部のMI6と取引し表向きには死んだことになるが、男装してMI6に加入しジェームズ・ボンドを名乗るという驚きの展開になっている。
【追加雑学③】原作の灰原哀はコナンの2巻から登場している?
名探偵コナンで灰原哀が初登場したのは、原作では18巻、アニメでは128話とされていることが多い。しかし、実は原作では2巻から登場している。正確には灰原哀ではなく幼児化する前の宮野志保の姿が、2巻の時点で描かれている。
灰原哀の姉の宮野明美は、アニメの中では灰原哀が登場する直前の回で殺されている。しかし、原作漫画で宮野明美が殺されたのは2巻のエピソードであり、宮野志保はコナンの初期に後ろ姿だけ登場しているのだ。
名探偵コナンは短期で連載終了するつもりの作品だったため、幼児化する薬の開発者の宮野志保は、初期の段階で登場が決まっていたキャラクターだったのだ。ただし、この頃から幼児化した姿で登場する予定だったのかはわからない。
後ろ姿だけ描かれたキャラクターが、何年も経って幼児化して登場しただけに驚いたファンは多かっただろう。
灰原哀の雑学まとめ
灰原哀のモデルは、アイリーン・アドラーだという雑学についてご紹介した。
原作では非常に出番が少ないにもかかわらず、アイリーン・アドラーは人気の高いキャラクターだ。ホームズを扱った作品の中での、その存在の大きさは驚くほどのものがある。
名探偵コナンの作中ではホームズは特別な探偵だ。ホームズを扱ったエピソードや映画が作られており、アイリーン・アドラーの名前も登場している。
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