アルミホイルにアルミ缶、一円玉…使用例を見てみても、アルミニウムは私たちの生活にとっても身近な金属だ。
アルミニウムは錆びにくいことが優れている点のひとつに挙げられるが、この「錆びにくい」という解釈…実はちょっと間違っているという。
アルミニウムは錆びにくいのではない。すでに錆びているのだ。
どういうこと? 「錆び」って赤くてザラザラしたアレのことじゃないのか? アルミは総じて銀色のツルツルで、錆びてるなんてこれっぽっちも感じたことないぞ!
…これはいったいどういうことなのか? 今回はそんなアルミと錆びの雑学について解説していこう!
【生活雑学】アルミは錆びにくいのではなく錆びている
【雑学解説】アルミが錆びてもボロボロにならない理由とは?
「錆びる」とは、金属が酸化することだ。酸化すると光沢が失われ、強度が落ちてボロボロになると認識している人も多いだろう。
そういう意味では、たしかにアルミは錆びにくいといえるかもしれないが、酸化はしている。
実はアルミは鉄よりも酸化しやすい。しかしアルミが酸化すると酸化アルミニウム(別名アルミナ)となり、この酸化アルミニウムが表面を覆い尽くすことでアルミ内部の酸化を防ぐのだ。
つまりアルミは表面だけ錆びており、その錆びた部分が膜のようになって内部を守ることで、ボロボロになるのを防いでいるのである。
このような金属の表面に生じる膜は、アルミ以外にクロムやチタンにも発生しやすいことが発見されており、不動態被膜と呼ばれている。
というわけで、アルミはたしかにすでに錆びている! すでに錆びている…といわれるとちょっと驚くけど、表面がアルミナでコーティングされている! といわれると嫌な気はしないな。
アルミが例外的な錆び方をするケースはけっこうある
実のところ、アルミナが表面をコーティングしていても、条件によってはアルミがボロボロな錆び方をしてしまう例も珍しくない。
金属は小さな結晶が集まることで形成されていて、結晶同士のあいだには原子の並びが安定していない「粒界」という境界が存在する。この部分はほかより錆びに弱く、アルミが錆びるときはここから錆びていくことが多い。
つまり、アルミにも錆びに弱い箇所が存在し、いろいろな条件で錆びが進行してしまうケースがあるということだ。具体的には以下のような場合が挙げられる。
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アルミが純度100%ではない場合
アルミは強度などの関係で、ほとんどの場合ほかの金属と混ぜて使われる。ジュラルミンと呼ばれる銅を加えたものや、アルミ缶に使われるマンガンを加えたものなどが主な例だ。
そのため表面をアルミナで保護するというアルミの性質が薄れ、錆びてしまうことがけっこうある。
アルミが塩気にさらされた場合
海の近くなど、塩気のある環境でも、アルミの錆びが進行してしまうことがある。
塩気の正体である塩化物イオンはアルミナを破壊する性質をもっている。そして表面のアルミナが破壊されると、その箇所から小さな穴が空くような局部的な錆びが進行するのだ。これを孔食(こうしょく)という。
海の近くに建てた家などの劣化が早いといわれるのはこのためである。
ほかの金属と接触している場合
アルミは単体で使われるより、ほかの金属と合わせて使われることのほうが多い。たとえば機械の部品なら、このパーツはアルミだけどこのパーツはステンレス…のような状態も想像しやすいだろう。
このようにほかの金属と接触している状態において、アルミは錆びやすくなる。ガルバニック作用といって、複数の金属が同時に水に濡れた場合などは、酸化しやすいほうが選択的に錆びていく原理が働くからだ。
アルミは表面をコーティングすることで錆びの進行を防いでいるが、前述したように本来は酸化しやすく、この原理の影響を受けやすい。そのためほかの金属と接していると、単体のときよりも錆びに弱くなってしまうのだ。
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アルミの表面に出てくる白っぽい錆びは?
ボロボロになってしまう錆びとは少し違うが、「アルミって、白い粉のような錆びが出ている気がするけど?」と思った人もいるかもしれない。雨などで水に濡れることで、このような錆びが出ることもある。
アルミを酸素だけで酸化させたものがアルミナだが、さらに水素分子が結合して水和酸化物へと変わることがあり、それが白い錆びのように出るのだ。つまり、表面がアルミナになるか、白い粉状の水和酸化物になるかの違いである。
窓のアルミサッシなどは、小まめに水分を拭き取ることである程度この錆びを防ぐことができるぞ。また白錆びが発生するのは表面だけなので、以下の動画のように研磨剤などで綺麗にするのも簡単だ。
【追加雑学①】ステンレスは錆びない金属?
ステンレスも、アルミなどと同じように錆びない金属として有名だが、厳密にいえばこれは金属というより、錆びにくく配合された合金というのが正しい。
ステンレスはその他の金属のような元素名ではなく、複数の金属を混ぜ合わせたものの呼び名なのだ。
ステンレスは英語にすると「stainless steel」。これを和訳すると、より名前の意味がわかりやすい。
- stainless … 錆びない、錆びにくい
- steel … 鋼(炭素を0.04~2%含んだ鉄の合金のこと)
うん、そのまんま錆びにくい合金だ。ちなみに、ステンレスの成分の50%以上は鉄。そのほか、クロムとニッケルを混ぜることで強度を上げている。
そして、このうちのクロムがアルミと同じような「不動態被膜」を発生させる役割を担っているのだ。そのためステンレスも厳密には表面だけが錆びるといえる。
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【追加雑学②】錆びない金属って存在しないの?
錆びを酸化として捉えるなら錆びない金属は存在しないが、めったに酸化しないものなら、金やプラチナが挙げられる。
金やプラチナは化学的に非常に安定した物質で、ほかの金属のように、酸素などの物質に触れて化学反応を起こすことがほとんどない。
王水(濃い塩酸・濃い硝酸を混ぜたもの)のような強い酸を除けば酸化させられる物質はないので、普通に暮らしていて錆びることはないといえる。着けたまま温泉に入るなんて人はたくさんいるだろうが、まさか酸をぶっかける人はいないだろうし…。
金やプラチナが変色したりするのはなぜ?
「でも、金やプラチナのアクセサリーでも変色したり、光沢が落ちたりするよね?」と思った人もいるだろう。
あれは、ほとんどの金・プラチナが純度100%のものではないからだ。
金やプラチナは単体ではとても柔らかく、変形しやすい。また非常に高価なため、強度や価格などの側面から、基本的にはほかの金属と混ぜて使われるのだ。そのため、その混ぜられた金属が錆びて、光沢が失われたり、変色したりするわけである。
歴史の授業で出てくる小判などが総じてボロボロなのはこのためだ。そういえば、金塊以外の金アクセサリーにツヤツヤなイメージというのもあまりないかもしれない…。持ってないけど。
「アルミと錆び」の雑学まとめ
今回は錆びにくいアルミが、ほんとは錆びている! という雑学を紹介した。
錆びのイメージがどうしても赤茶色のザラザラだから、アルミ製の物干し竿を使っている私はちょっと焦ってしまった。
表面にすごく強力な膜を張っているってことは…アルミは何もしなくても塗料を塗られてるようなものだよね? それってすごくお得だね!
今回の雑学をきっかけに、身近なアルミ製品を観察してみるのもおもしろいかも。新たな発見があったら教えてください!
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