どんなに強い怪人でもワンパン。主人公が強すぎて一切苦戦することがないという、普通はおもしろくなるはずがない設定の漫画『ワンパンマン』。…でも、おもしろいんだよなあ…。
そんなワンパンマンの世界で、初めて主人公サイタマのパンチを受けて死ななかった敵が、ボロスだ。ボロスの登場からずいぶんとストーリーが進んだ現在でも、作中最強クラスの敵キャラとして根強い人気がある。
そんなボロス。実は本来、原作者のONEが描いていた別の漫画のキャラクターだった。彼がワンパンマンに登場したのは、その別漫画にて原作者が果たせなかった"ある想い"を果たすためだった…?
ということで今回は、ワンパンマンの魅力あふれる敵キャラ、ボロスの雑学を紹介しよう!
【サブカル雑学】ワンパンマンのボロスは他の漫画のキャラだった?
【雑学解説】主人公サイタマが初めてワンパンできなかった強敵ボロス
ワンパンマンはWebサイトでの無料公開から少しずつバズり、テレビアニメ化にまでいたった人気作品である。原作も継続中のなか、リメイク作品が『となりのヤングジャンプ』の看板作品として連載されるなど、今なお人気ぶりは健在だ。
もとは強すぎるヒーローがどんな敵でもワンパンで倒してしまうため、退屈している様子を描いただけのギャグ短編だったが、人気が出たため最終回までプロットが作られ、長編作品に。
結局物語終盤になっても、主人公サイタマは一切苦戦しないけど…なぜかおもしろい。かなり異質な魅力をもった漫画である。
そんなサイタマが、初めてワンパンで倒せなかったのがボロスだ。
ボロスはサイタマと戦うために地球へやってきた
ボロスは宇宙でも隋一の自然治癒能力を誇る一族出身の怪人。なかでも能力が抜きんでていたため、その強さを活かして「暗黒盗賊団ダークマター」を結成し、宇宙を荒らしまわっていた。
しかし自身が強すぎるがゆえ、どんな相手と対峙しても歯ごたえがなく、退屈な日々に虚無感を抱き続けていた。
そんなボロスはあるとき、とある占い師から「自分と対等に戦える相手が地球にいる」という話を耳にする。そこから20年の歳月をかけ、彼はサイタマと戦うために地球へやってきたのだ。
強すぎる自分に虚無感を覚えてしまうという点は、サイタマもまったく同じ。ふたりが対峙した際には、ようやく強敵に出会えたボロスの喜びがにじみ出ていた。
ボロスはワンパンマンに登場した初めての強敵?
サイタマはそれこそノリで連続攻撃を繰り出すことはあるが、実際はワンパンで倒せない敵などほぼ登場しない。
しかしボロスはパンチを受けても、鎧が砕けただけで大してダメージを受けず、サイタマの「連続普通のパンチ」も耐えている。最終的には、本気のパンチ「マジ殴り」1発で倒されてしまうが、サイタマが本気の一撃を出すまで長時間戦闘した数少ない敵である。
地球の表面を一撃で吹き飛ばすほど強力な攻撃も披露しており、初めて強敵が出現したかのような衝撃を読者に与えた。
またリメイク版では、地球の地表近くから月までサイタマを蹴り飛ばし、原作を知っている読者を驚かせた。それでもサイタマはダメージ受けてないんだけど…。
最近自分の中でワンパンマンブームが再来してるんだけどボロス魅力溢れすぎ。
もっと見たかった。全宇宙の覇者を序盤で殺さないでくれ... メタルナイトに回収されて後に登場するかボロスでスピンオフ描くかしてください(無理)🙇♂️ pic.twitter.com/zO7Nkabgjz— 三黒 (@aimai_mikuro) December 14, 2019
単眼なのにイケメンの雰囲気が出てるのも地味にすごいところである。
【追加雑学①】ボロスがラスボスとして登場した漫画『太陽マン』とは
ここでボロスのちょっと意外な出自を紹介しよう。
ワンパンマンの原作者ONEは10代の頃に、『太陽マン』という漫画を連載していたことがある。実はこの太陽マンに登場したラスボスがボロスだったのだ。
ONEは週刊少年ジャンプ編集部への持ち込み経験が一度はあるものの、連載には至らず、自身のWebサイトで漫画を無料公開していた。
当時、アマチュア漫画家のあいだでこういったサイトが流行っており、パソコンを持っていなかったONEも、ケータイで自分の描いた原稿を撮影して、モバイルサイトにアップしていたのだとか。
今では考えられないほどアナログな手法…なんとしてでも作品を他人に読んでもらいたいという根性を感じる…。このときに公開されていた作品こそが太陽マンなのだ。
モバイルサイトの閉鎖と共に終結した太陽マン
その後、モバイルサイトでの漫画掲載に限界を感じていたONEは、PCサイトにて漫画の連載を始める。
このタイミングでモバイルサイトが閉鎖され、PCサイトの連載第一号としてワンパンマンが掲載された。こうして太陽マンは未完のまま、その先を描かれることがなくなってしまったのだ。
そして太陽マンにボロスが登場した際、あまりにも強くなりすぎて倒すことができなかったとONEは語っている。
10代の頃、コピー用紙に描いて小さなHPで公開してたマンガ『太陽マン』、ラスボスを強くし過ぎて倒せないままHPを畳んだ。
— ONE (@ONE_rakugaki) September 18, 2012
そう、ONEはこのとき、ボロスを倒すことができなかったのが心残りで、ワンパンマンにボロスを登場させることにしたようなのだ。たしかに…サイタマならどんな敵が来ても倒せる!
駆け出しの時代に登場して、うまく活躍させられなかった最強キャラを、人気が出てから再登場させる。そしたら作中屈指の人気キャラになった…。それってめっちゃドラマチックじゃないか?
人気漫画家の舞台裏は壮絶!
ワンパンマンを連載するようになってからのONEのいきさつにも、けっこうなドラマがある。なんでも彼は一度は就職したものの、漫画家の夢を諦めきれない日々を送っていたのだそう。
そこから「1年間働かず、漫画漬けの日々を送ってみてダメならきっぱり諦めよう」という想いで仕事を辞め、連載に挑んだという。
ちなみに漫画家自身が敵キャラの倒し方がわからなくなってしまうのは、けっこうなあるあるだ。有名な話だと、『ジョジョの奇妙な冒険』第4部のボス・吉良吉影を倒す方法に作者(荒木飛呂彦)が相当悩んでいたという。
読者「吉良吉影強すぎてどうやって倒すのか分からん」
編集「吉良吉影強すぎてどうやって倒すのか分からん」
荒木飛呂彦「吉良吉影強すぎてどうやって倒すのか分からん」
— まゆち(限界) (@melty_myc) January 27, 2017
敵が強すぎるぐらいじゃないとおもしろくないし、でも強くしすぎちゃうと倒せないし…。ある種漫画家の腕の見せ所なのかもしれない。
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【追加雑学②】強すぎる敵を倒すために誕生したヒーローがいる
強すぎる敵キャラに悩むのが漫画家の宿命なら、その宿命を打ち破るキャラも生まれる。実は世界最古のスーパーヒーローがそんな役目を担ったキャラクターだったりもする。1930年に日本の紙芝居で誕生した『黄金バット』だ。
黄金バットは、スーパーマンなどのアメコミヒーローよりも古い。事実、日本が世界で一番最初にスーパーヒーローを生み出しているのだ!
ただ…見た目は完全にガイコツだし、登場シーンでは不気味な高笑いが響くなど、一見するとまったくもってヒーローには思えない感じなのだが…。
小説 黄金バット
アニメの黄金バットが好きだったので色々探してたら小説版を発見❗
しかし本の内容は昭和初期の紙芝居業界の話だった😵
が、面白い‼️😁
日雇いの人たちが問屋で駄菓子を仕入れて紙芝居をやってたらしい。
今の時代も黄金バットを必要としてるのか⁉️ pic.twitter.com/Kihsf3FQVF
— syhqq233 (@syhqq233) May 7, 2020
…それはいいとして、黄金バットにはワンパンマンのサイタマとの共通点がひとつある。理不尽すぎる強さだ。
黄金バットは強すぎる主人公を倒すために現れた
実は黄金バットが登場する以前、『黒バット』という怪盗を主人公にした紙芝居が大人気だった。
主人公の黒バットは、最終回で倒される予定だったが、あまりにも強すぎて倒す方法が分からなくなってしまったのだという。まあ主人公だしなあ…。
そのため、黒バットより強い正義のヒーローを登場させて倒すことにしたのだ。その役目を担ったのが黄金バットである。
黒バットの色と衣装を変えただけの彼は、物語の主人公を倒してしまったことで子供たちの心を一気に掴んだのだ!
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ワンパンマンと黄金バットの共通点
強すぎるキャラを倒すために、それより強いヒーローと戦わせる。
この点でワンパンマンと黄金バットは非常に似ている。そう思って見てみると、ハゲ頭のサイタマと黄金バットの後ろ姿は…似ているような気もしなくはない?
ワンパンマンでは、サイタマ以外のヒーローを多数登場させ、登場する怪人に他のヒーローでは歯が立たない様子が演出される。ヒーロー達の奮闘する姿を描くことでドラマが成立し、強敵を一撃で倒すサイタマの強さが際立つのである。
黄金バットでは、敵組織があっさり世界征服できそうなほど強く描かれているが、黄金バットはいとも簡単に倒してしまう。
ワンパンマンが連載開始したのは2011年であり、黄金バットとは80年以上も年代が離れている。しかし私として、この2作品には不思議な縁を感じずにいられないのだ。
雑学まとめ
今回は、ワンパンマンに登場した強敵ボロスの雑学を紹介した。
ボロスは太陽マンのラスボスとして登場し、強すぎて倒すことができなかったキャラクターである。しかしワンパンマンが人気になったことで、サイタマの強さをより際立たせるための敵として、役目を全うすることができた。
結局、ボロスはサイタマの足元にも及ばないことが分かっている。それでも他の怪人とは一線を画した強さを見せ、最後まで堂々とした態度を貫いたことも人気の一因である。
強すぎて倒せないというボロスの過去を知ると、ワンパンマンでの登場シーンもより味わい深いものになるのではないか。