2019年、政府は新紙幣の肖像に3人の人物を採用することを発表した。1万円札の肖像に選ばれた渋沢栄一。5000円札の肖像に選ばれた津田梅子。1000円札の肖像に選ばれた北里柴三郎の3人である。
ところで、この紙幣の肖像を採用される際には、どのような基準があるのだろうか。一説には、「彫りの深さ」に関係があるとの噂があるが、はたして本当なのだろうか。
この記事では、その選定理由の真相について迫っていく。
【生活雑学】お札(紙幣)の人物の選定理由は「彫りの深さ」ってホント?
【雑学解説】お札の肖像の選定理由が「彫りの深さ」というのはウソ
20年を目安に生まれ変わる「お札」。近年においても1000円札が夏目漱石から野口英世へ、5000円札が新渡戸稲造から樋口一葉へと変わってきた。ところで、お札の肖像はどのように決定されるのだろうか。
一説には、お札の肖像は彫りの深さに関係があると噂されているが、これは間違いである。国立印刷局によると、お札の肖像は、財務省・日本銀行・国立印刷局が協議した後、最終的な判断は財務大臣が下すことになっている。その際に考慮される条件は、
- 世界に誇れる人物で、一般によく知られている
- 人物像の写真や絵画を入手できる人物である
この2つがある。とくに2つ目の条件には、人物の表情のわずかな違いにも気づけるという偽造防止の観点からも重要になるという。
また、お札のモデルに選ばれる人物は、明治以降に活躍した文化人の中から選ばれることが通例とされている。
つまり、お札のモデルとなる人物を決定するのは、「彫りの深さ」にあるというより、人物の精巧な写真や絵画が残っていることが条件になるのだ。
「彫りの深さ」に関係しているとの噂は、おそらく肖像のモデルとなる人物の写真や絵画が残っていることの条件を取り違えたものではないだろうか。皆さんも、ご注意いただきたい。
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【追加雑学】お札に印刷された「記番号」の色には、さまざまな種類がある
お札にはそれぞれアルファベットと番号を組み合わせた「記番号」が記載されている。その記番号は一般的に黒色で印刷されているものが多い。
だが、同じお札のなかにも、色の異なる記番号が記載されていることをご存知だろうか。つまり、同じお札でも、黒以外の色が使われている場合があるのだ。その理由はおもに2つある。
- 記番号の組み合わせをすべて使い切ったため
- 改刷による仕様変更のため
上の理由から説明しよう。膨大な紙幣が出回っているお札は、ひとつひとつに記番号を記載しなければならないが、すべての番号を使い切ってしまった場合、記番号の色を変更することで対処しているという。
下の動画は、2011年の記番号の変更を報道するニュースである。記番号の色が異なる色で印刷されていることが分かっていただけるだろう。
また過去の例では、D千円券(夏目漱石)などでも実施されている。たとえば、1984年11月1日発行の1000円札では、記番号は黒で印刷されているが、1990年の11月1日発行の紙幣では青色。1993年の12月1日発行の同紙幣では褐色、2000年4月3日の同紙幣では、暗緑色を用いて印刷されている。
またこの他にも、文字・インキ・ホログラムなどの紙幣の技術改良をした際にも、記番号の色が変更されるケースがあるという。あなたがもっている紙幣のなかにも、もしかしたら記番号の色が異なる紙幣が紛れ込んでいるかもしれない。要チェックだ!
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雑学まとめ
以上、お札の肖像の選定理由とお札にまつわる2つのトリビアをご紹介してきた。電子マネーや電子コインなど、貨幣の進化がめざましい現代。
じつは国が発行する紙幣でも、犯罪防止の観点からさまざまな対応がとられて、進化を遂げていることが分かった。
筆者もこの記事を書きながら、自分の財布に入れたお札をまじまじと眺めてしまった。あなたの財布のなかにも色の異なるお札は入っているだろうか。ぜひ、確認してほしい。