学校や会社、また病院・スーパー・映画館など、とにかく人が集まる建物では、必ず目にする非常口のマーク。扉の外へ走って出て行く「人」が描かれているだけなのだが、誰が見てもその場所が「出口」、すなわち「非常口」だと分かるだろう。
この非常口のマーク、実は一般の人にデザインを募集する、公募で選ばれたものらしい。しかも、世界が認めたマークだという。
今回は、非常口のマークにまつわる雑学を紹介するぞ!
【生活雑学】非常口のマークは公募で決まった
【雑学解説】非常口のマークは、公募作品をデザイナーが改良して完成した
昔の非常口のマークは、「非常口」と漢字で書かれたものだった。しかしこの文字が、薄くかかった煙の中で、見えなくなるという問題が発覚したのだ。
その問題とは、大阪と熊本のデパートでおきた火災事故。合計で200名以上も亡くなるという大惨事になった原因の一つが「出口の場所が分からなかった」ことだったという…。これでは、「非常口」を指すマークとして、まったく役割を果たしていない。
それだけでなく、ほかにも改善したい部分がいくつかあった。
- 漢字が読めない人には理解できない(子供や外国人)
- 平常時に「非常口」とデカデカ書いてあるのが目障り
- 字体が感じわるい
どうやら、漢字で書かれた非常口のマークは不評だったようだ。
そこで、もっと単純な表示にすべきだと判断した消防庁は、新しい非常口のマークとして、「ピクトグラム(絵文字)」のアイデアを、一般に募集したのである。応募数は3,337点あり、5種類のテストを行い選別することにしたのだ。
公募で集まった非常口のマークは、どのように選別されたのか?
- まず図形の粗さで選別
- デザインに対する評価
- 一般の人の好み
- 通常の照明でどのように見えるか
- 煙の中でも分かりやすいか
このようなテストを突破し、最高点を獲得した非常口のマークを入選作品とした。そして、この作品にデザイナーが手直しをしたものが、消防庁に採用されたのだ。
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【追加雑学①】非常口のマークは、実は国際基準のピクトグラムなのだ!
一般公募から始まり、そして完成した非常口を示すピクトグラム。この自信作を、世界でも使ってもらいたいということで、ISO(国際標準化機構)に提案することになったのだが…。
すでにISOで検討されていた原案があったため、日本案とISO原案(当時のソ連が作成したらしい)で、見え方の比較テストをした。その結果日本案の方が、通常の照明では20%、煙の中では10%も良く見えたのだという。
この結果とあわせて、日本でこのピクトグラムを採用する際に行った、5種類のテストデータも提出され、これがISOで認められ国際基準になったのである。
一般公募で集まったデザインに、いくつもの科学的テストを重ね、そして生まれたピクトグラムの誕生にISOの議長は大絶賛したそうだ。
【追加雑学②】非常口のマークに描かれている「人」には愛称がある
非常口のマークで、外に向かって走る「人」は、いろいろな場所で使われている。たとえば、車椅子マークや、トイレのマークに描かれている「人」も、同じピクトグラムだ。
工事現場や、道路・駅などでも、実際に人が転んだり頭を打つなどの様子を、この「人」で表現することで、より分かりやすくしている。
彼(彼女?)の名前は、「ピクトさん」。
作家の内海氏が名付け親で、親しみを込めて呼ばれている愛称なのだ。このように愛称を知ると、ただの絵文字ではなく親近感がわいてくる。
ピクトさんは、自分の体の動きで注意・警告し、ときには走って誘導したりと、町中で日々私たちにメッセージを送ってくれているのだ。
雑学まとめ
今回は、非常口のマークにまつわる雑学を紹介した。いつも見慣れたマークが、国際基準だったとは…。日本人としては誇らしいことである。
しかし、世界中のすべての国が、この国際基準のピクトグラムを使っているわけではないのだ。アメリカでは「EXIT」と書かれた看板を使っているし、違うピクトグラムを使っている国もある。海外に行ったときには、意識して見てみるとおもしろいかもしれない。
まずは、ピクトさんが体を張って知らせてくれている非常口のマークを、これからは町中で探してしまいそうだ。