古来より、日本人にとって非常になじみ深い存在である妖怪。近年でも『妖怪ウォッチ』『ゲゲゲの鬼太郎』など、彼らを題材にした作品は根強い人気を誇っている。
そんな妖怪のなかでも、国民的知名度を誇っているヤツらといえば、やっぱり鬼・天狗・河童だ。彼らを日本三大妖怪と呼ぶ。
しかし彼らは単に有名というだけで、いわば妖怪界のマスコット的存在だ。恐ろしさの度合いではまだまだ序の口である。せっかく妖怪と呼ぶのだから、もっと凶悪なヤツらの話を聞きたくはないだろうか。
妖怪のなかには「日本三大悪妖怪」と呼ばれる、とっても恐ろしいヤツらがいる。今回はそんな3つの妖怪たちの雑学を紹介しよう。
【サブカル雑学】日本三大悪妖怪とは?伝承をご紹介!
【雑学解説】日本三大悪妖怪を紹介。そんなに凶悪?
現在、日本三大悪妖怪の俗称で呼ばれているのは以下の3体だ。
- 酒呑童子(しゅてんどうじ)
- 玉藻前(たまものまえ)
- 崇徳天皇(すとくてんのう)
しかし…日本三大悪妖怪と呼ばれるようになった経緯は不明である。2005年以降、いつの間にか世間に浸透していた説のため、実は信憑性が薄いともいわれているのだ。
とはいえ、まったく根拠がないというわけではなく、酒呑童子・玉藻前に関しては、1992年発刊の『日本妖怪異聞録』のなかで、文化人類学者・民俗学者の小松和彦氏が「日本三大妖怪」として定義したものだ。
小松氏が彼らを三大妖怪に選んだのは「古典文学の記述などから見て、中世の都人にもっとも恐ろしい妖怪を尋ねたら、上記の者が挙げられるだろう」という推測からである。ちなみに小松氏の説で、もう一体の三大妖怪は、鬼神の「大嶽丸(おおたけまる)」が選ばれていた。
おそらく噂が広がっていく過程で、「当時の人たちからしたら、崇徳天皇のほうが脅威だったんじゃないか?」というように推測する人が多かったため、三大妖怪の座が入れ替わってしまったのではないかと思われる。
しかし、俗説でも彼らが凶悪性を理由にピックアップされていることに違いはない。以下よりそれぞれどんな妖怪だったかを紹介していこう。
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日本三大悪妖怪①酒呑童子(しゅてんどうじ)
酒呑童子はその名前からもわかるように、お酒が大好きな鬼の頭領で、京都の大江山に住んでいた。酒好きの鬼…? あれ? さっそくあんまり怖くなさそうなんですけど…。
コイツは京の都を荒らしまわったり、姫や若者をさらったりと悪行を繰り返したため、源頼光(みなもとのよりみつ)らにより退治されてしまう。なんでも酒呑童子の大好物であるお酒に毒を混入して振る舞い、寝込みを襲って首をはねたのだとか。
倒し方がヒーローっぽくないとかいろいろ意見はありそうだが、筆者的にはこのくだりは「人間が真正面から挑んでも勝ち目がない」という演出になっていて好きだ。あんまり怖くなさそうに見えて、やっぱり普通に強いのである。
酒呑童子のすごいところはここからで、なんと首を斬られて生首になっても頼光の兜に噛みついてきたというのだ。これに対して頼光は兜を重ねて被っており、難を逃れたのだとか。…鬼もすごいけど想定済みな頼光もすげえ!
その後頼光ら一行に討ち取られた酒呑童子の首は京に持ち帰られ、宇治の平等院の宝蔵に納められたという。
…うーん、首だけになっても生きていたというのはさすがだけど、正直これだけだと、「ほかにもっと怖い妖怪いるんじゃないの?」という印象をもってしまう。
都での悪事がかなり残酷だったとか? それとも鬼の頭領ということで、鬼をたくさん従えているという点で、恐れられていたのかもしれない。
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日本三大悪妖怪②玉藻前(たまものまえ)
玉藻前は、鳥羽上皇が寵愛した女官であり、絶世の美女だ。しかしその正体は九尾の狐。NARUTOなどでもおなじみで人気のある妖怪だが、筆者は正直、三大悪妖怪ではコイツが一番ヤバイと思っている。
玉藻前は女官として鳥羽上皇に仕えるようになると、その美貌と博識さで一番のお気に入りとなった。しかし彼女と過ごすようになってから、上皇は医師にも解明できない病に伏すようになってしまうのだ。
原因をいち早く察知したのは、陰陽師・安倍泰成(あべのやすなり)である。上皇の病気が玉藻前の仕業だと気づいた泰成は真言を唱え、彼女の本性を暴いてみせた。上皇の具合が悪かったのは、玉藻前の呪いだったのだ。
正体を見抜かれた玉藻前は宮中から逃亡。しかしその後も人さらいなどをしていることが宮中に伝わり、最期は安倍泰成率いる九尾討伐隊によって退治される。
この退治も一度は失敗するなど、相当に苦戦を強いられた。しかし玉藻前の恐ろしいところは退治されたそのあとだ。彼女は追い詰められると石に姿を変え、動くことこそなくなったが、近付く人間や動物の命を奪い続けたという。
鳥羽上皇が病に侵されていたのと同じように、彼女は石になっても近付く者を呪い殺すことができたわけだ。
この石は殺生石(せっしょうせき)と名付けられ、その後、源翁心昭(げんのうしんしょう)という南北朝時代の僧が破壊した伝説が残っている。
鳥羽上皇の時代から考えると、200年以上も石の状態で生き物を殺し続けていたことになるぞ…。
ちなみに殺生石は今でも栃木県那須町で見ることができる。以下の動画で紹介されているが、源翁心昭さんのおかげなのか、普通にのどかでいい雰囲気だ。
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玉藻前の本当の怖さ
近付く者を呪い殺せるという時点で十分に脅威だが、玉藻前の本当の怖さは、その時代の権力者にことごとく取り入っていることである。実は彼女の伝説は鳥羽上皇が最初ではない。
古くは紀元前、中国殷王朝の時代に、当時の国王・紂王(ちゅうおう)の后・妲己(だっき)として。
その後はインドの王子様や中国周王朝の王などをだまくらかし、何千人という人の首をはねるなど、暴虐の限りを尽くしてきた妖怪なのである。
日本に到着する前にもさまざまな国を渡り歩き、国家を危機に陥れてきたわけだ…。というか時代もまたぎすぎだし、ほかの妖怪とは規模が違う。明らかに危険度ナンバー1である。安倍さんよく退治できたな…。
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日本三大悪妖怪③崇徳天皇(すとくてんのう)
崇徳天皇は日本の第75代天皇だ。その天皇がなぜ妖怪扱いを受けているかというと、彼が死後、京都最恐の怨霊とまで呼ばれるようになったからである。
崇徳天皇が亡くなったのは1164年のこと。彼は後継者争いに敗れた結果自害しており、その後、対立していた後白河天皇の周辺人物が相次いで亡くなったことから、その呪いは始まった。
彼の怨霊は1868年に明治天皇が即位する際、供養のために白峯神宮が建設されるまで、なんと約700年にも渡って恐れられ続けてきたのだ。…物凄い執念である。
どうしてそこまで呪いが強かったのかは、生前の崇徳天皇の扱いを見てみると納得がいく。彼は歴代天皇のなかでも、めちゃくちゃ除け者扱いを受けた可哀想な人物なのだ。
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崇徳天皇の不遇な生涯
まず天皇といっても、彼が即位したのは3歳そこそこという物心つく前の話。そして20歳を過ぎたころには早くも皇位を譲らされることに…。その後も政治的な実権をもたない、典型的な名ばかりの上皇という立場だった。
そこまでで済んでいればよかったのだが…1156年、後白河天皇が即位した翌年に、父の鳥羽法皇が亡くなると事態はさらに穏やかではなくなっていく。
なんと本人にそのつもりはないのに「後白河天皇の皇位を奪おうと、反逆の企みをしている」という噂を立てられてしまうのだ。実権こそないものの、エラい立場の崇徳上皇を邪魔だと思う人が朝廷には多かったのである。
これによって後白河天皇と崇徳上皇の争いは保元の乱へと発展し、崇徳上皇が敗北。彼は戦犯としての罪を問われ、流刑になってしまったのだ。流刑後は戦死者の供養の証として、自らが書いた写経を朝廷に差し出したりもしたが、これも送り返されてしまう。
そう、悪くないうえ、犠牲者を出してしまった反省もしている。だけど誰も認めてくれない。こうして激怒した崇徳天皇は、自分で舌を噛んで死んでしまうのだ。
ここから彼の呪いが始まるわけだが、一説には舌を噛み切っても死ねず、夜叉になっただの天狗になっただのといわれる。なるほど…これなら立派な妖怪だ。
また朝廷に送った写経は崇徳天皇の血で書かれていたという話もある。まさか死ぬ前から呪う気満々だったのか…?
なるほど、中世の都人が恐れた存在…といわれればたしかに、鬼神の大嶽丸に取って代わってもおかしくない。
以下は崇徳天皇が祀られている白峯神社の紹介動画だ。現在はスポーツや学業の神様として、多くの人に親しまれている。
生前阻害され続けた崇徳天皇も、人の集まる神社に祀られてようやく報われたのではないだろうか…。
【追加雑学】普通の「日本三大妖怪」はどういう基準?
日本三大悪妖怪は「中世の都人がもっとも恐れたであろう3体」だということは前述した。詳細に触れることで、その恐ろしさもきっと伝わったことだろう。
そうすると次に気になってくるのは、「鬼・河童・天狗のほうの日本三大妖怪はどんな基準で決まったの?」ということだ。
これは妖怪研究家・作家の多田克己氏が1990年発刊の『幻想世界の住人たち 4 日本編』のなかで定義したものである。その基準は「妖怪のなかでも特に広域に伝承が残っている種族」だ。
つまり、三大悪妖怪は「どれだけ恐ろしいか」が基準で、三大妖怪は「どれだけポピュラーであるか」が基準である。そして三大妖怪のほうは、なにか特定の妖怪を表しているのではなく、あくまで種族が対象になっている。
こう考えてみると、このふたつは似ているようで全然違う定義なんだな…と気づかされる。たとえば種族的に鬼である酒呑童子は、三大悪妖怪と三大妖怪のどちらにも当てはまっているわけだ。
待てよ…? じゃあ、冒頭で「三大妖怪は怖さ的にまだまだ序の口!」なんて言ったのはそもそも的外れじゃないか! 妖怪って難しい…。
日本三大悪妖怪の雑学まとめ
今回は日本最大悪妖怪の雑学を紹介した。
酒呑童子のように下手すれば飲み仲間になれそうな妖怪もいれば、玉藻前のように有無を言わさない凶悪さをもっている妖怪もいる。かと思えば崇徳天皇のように、悲しい運命を背負った怨霊も…。
それぞれに興味深いエピソードがあることに、日本の伝承の奥深さを感じさせられた。単に怖いだけじゃない。だからこそ妖怪は、現代でも愛され続けているのだろう。
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