テレビやネット、家電製品売り場でよく見かける「高解像度○万画素!」のキャッチコピー。数値が高ければ高いほど、キレイで良い商品だということは理解できる。
でも…それってどんな?
たとえば人間が実際に見ている景色の画素数がわかれば、どのぐらい実際の映像に近いか比べたりできるんだけど。
じゃあ、比べてみようよ! 人間の目がどれぐらいすごいのか、調べてみようよ! …ということで、今回は人間の目の画素数に関する雑学をお届けする。
【人体雑学】人間の目って何万画素?
【雑学解説】人間の目に見えている画素数は5億7600万画素
人間の目は、ずばり約5億7600万画素! …これは事実だが、いきなりそんなこと言われても、あまりピンと来ない。「まず画素ってなんなんだよ」って人もいるんじゃないか。
ということで、画素の定義から説明しよう。
画素というのは画像を構成する点の数のこと。これはファミコンなんかを思い浮かべるとわかりやすい。昔のゲームは画素数も少ないため、画面上の映像が粗い点の集合体であることが一目瞭然だ。
【懐かしの名作ファミコンソフト・レトロゲーム】
ドンキーコング 1983年
アーケードゲームで大ヒットして、ファミコンソフトの第一弾としてファミコンと共に発売されました。主人公のマリオがドンキーコングにさらわれたお姫様を助けに行くゲーム。 pic.twitter.com/52mTrmHNW6
— ファミコンのバルーンファイトとアイスクライマーをこよなく愛する昭和人 (@humorbusiness) June 19, 2020
画素数は、この点の数が画面のなかにいくつあるかという話なのだ。ということは、人間の目に見える景色は、5億7600万個もの点で構成されていることになる。そりゃあ滑らかなはずだ!
根拠となる説を唱えているのは、アメリカで活動している写真家・研究者のロジャー・N・クラークさんで、彼によると人が認識できる最小の画素の幅は0.59分だという。これは分度器の1度の1/100ぐらいの幅である。
人間のすべての視野角をこの点で埋め尽くすと、約5億7600万画素になるのだ。
…うーん、途方もなさ過ぎて想像もできないので、とりあえず最新の家電と比較してみよう!
- iPhone11のカメラ…1200万画素
- 最新の8Kテレビ…3300万画素
- デジタル一眼レフ…2000~6000万画素
一番少ないのはやはりスマホの画素数だが、それにしても画面上では、テレビに負けないぐらい滑らかに映っている気もする。
これは画素数が少なくても、そのぶん画面が小さいため、面積当たりの密度が高くなっているからだ。よくいう"解像度高い"という言葉は、この面積当たりの画素数の多さを表すものである。
それにしても、どれも人間の目の足元にも及んでいない。やっぱ5億って相当なんだな…。
といっても…ここでひとつ、気に留めておきたいことがある。この5億7600万画素という数字は、脳の働きによって"結果として認識できている視野の話"だということだ。
物理的な人間の視野は中心の2度
物理的な意味で人間に見えている視野は、実は視野の中心2度程度の範囲である。これは50cm先で1.7cmぐらいの幅。この幅を0.59分の画素で埋めると600~800万画素になる。iPhone6のカメラぐらいのスペックである。
…いや、それはいいとして、視野角狭すぎじゃね? さすがにもっと広い範囲見えてるよ!?
と、思うところだ。この実際の視野を超える広い範囲が見えていることに、脳の働きが関係している。
人が一度に捉えられる視野角は2度程度だが、眼球は常に小刻みに動いていて、いろんな角度から景色を捉えている。脳が一瞬のうちにこれをうまいこと処理して、視界が綺麗に見えるように合成しているのだ。
つまり人間の物理的な視界ではなく、脳が処理したあとの映像が約5億7600万画素ということである。要するに目というより、脳がすげえのだ!
人間の見ている景色は脳の作り出したイメージ
人間の見ている景色が脳のイメージで作られていることを知ると、カメラとの物の見え方の違いにも合点がいくようになる。
たとえばカメラで撮影したときに、光が当たって色味が変わってしまうシチュエーションでも、人間の目にはちゃんと正確な色が把握できている。これは脳がイメージした色が映し出されているからだ。
もちろん目の構造とカメラのレンズの違いもあるだろうが、写真との見え方の差は、大きくは脳のイメージによるものである。
よく使われる錯視のトリックも、人に見える景色が脳のイメージで作りだされているからこそ、起こりえるものだ。
以下の画像内にある円は、ほんとは両方同じ緑色だが、重なるラインが青いか赤いかで全然違う色に見える。うん…どうがんばっても脳は同じ色だと認識してくれない…。
https://twitter.com/kaz296/status/1271790742499766272
【追加雑学①】億越えの画素数を誇るカメラも出てきている
ここまでの話を踏まえると、それが脳のイメージしたものだとしても、結果的に人間には5億7600万画素の景色が見えているわけで、それに適う家電などまだまだ登場しないという印象を受ける。
そりゃあ、人間の目と同じ画素数なんて実現できたら、実物がそこにあるぐらいに見えるってことだもんね。最新の家電たちでも、さすがに億の土俵には上がれない。
…なんてことも、実はないのだ。
ここまで紹介してきた例は、あくまで一般的な家電だけだった。実はものによって、億の画素数を誇るカメラは普通に出回っているのだ。
2019年6月に富士フィルムから発売された「GFX100」というカメラがその代表格で、画素数はなんと1億200万。これは業務用カメラを除いては世界最高峰の画素数ともいわれている。え…普通に手に入るヤツなの…!?
以下の動画はGFX100で撮影されたドバイの夜景。美しい…。
また、NASA(アメリカ航空宇宙局)の技術を使えば530億画素の画像なんてのも作れちゃう。いやいや…NASA引っ張り出して来られたら、さすがに生身の人間じゃ太刀打ちできませんわ!
以下はイギリスのスポーツカーメーカー「BENTLEY」が公開した530億画素のプロモーション画像。ズームしていくと、走る車のシートのロゴマークが刺しゅうの糸1本1本まではっきりわかる。
ちなみにホタテの目はNASAの高性能望遠鏡と同じ性能をもっているなんて話もあるので、彼らの目ならあるいは…。あ、でも色は判別できないんだっけ。
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【追加雑学②】画素数が多い=高画質ではない?
意外なことに、デジタルカメラは画素数が増えれば増えるほど、逆に画質が下がるという話がある。それぐらい知っているというあなたは、けっこうなカメラ好きかも。
単純に画素数だけで考えると、多いほうが詳細に描写できるように感じる。
しかし画素数を増やすということは、デジカメに内蔵されている受光パネルの数を増やすということだ。並べられたパネル同士のあいだには当然、"区切り"の部分が存在していて、その部分は受光パネルとして機能しない。
しかも受光パネルには1枚ずつ、信号を伝達するための装置が内臓されている部分があるので、そもそもパネル全体を受光面積に充てることはできないのだ。画素数を増やせば、同時にこの信号伝達の装置が増えるぶんも受光面積が減ってしまうことになる。
つまり画素数の多いカメラは…
- 受光パネルのあいだの区切りの部分が増える
- 信号伝達の装置の数が増える
というふたつの理由から、受光面積が減って、逆に画質が落ちてしまうのだ。
実際に、プロのカメラマンが使っているカメラの画素数は、アマチュア向けの上位機種の半分程度というのだから驚きだ。
雑学まとめ
今回は人間の目の画素数に関する雑学をお届けした。
人間の目はそのままだと600~800万画素で、視野角自体もとっても狭い。しかし脳がうまいこと処理してくれているおかげで、約5億7600万もの画素数を誇る景色を、我々は目にしているわけだ!
一方、カメラは人間の目のようにはいかず、単純に画素数が多ければいいというわけではないという。脳のイメージで見えている人間と、実際に機械を組み立てるのとでは、そりゃあまた話が違うよね。