「うらめしや~」と現れる幽霊。「幽霊の衣装といえばどんな物ですか?」と聞かれたら、あなたはどのようなイメージを思い浮かべるだろうか?
多くの人は、幽霊の衣装といえば「真っ白な死装束で、額に三角巾みたいな物を付けている」と答えるかもしれない。だが、どうして額に三角巾を付けているのだろうか? ある種のアクセサリーなのだろうか?
実はあの額の三角巾は、ちゃんと意味があって付けられている。思わず「へぇ~」と言いたくなる雑学を紹介しよう。
【サブカル雑学】幽霊の額の三角巾の意味は?
【雑学解説】天冠は死装束の正装の1つ
「天冠」というのは、文字通り冠のこと。死装束の三角巾だけでなく、お雛様がかぶっている冠も、仏像が付けている冠も「天冠」である。元々は、身分の高い人の冠のことを指していた言葉だ。
仏教では死後の世界に行くと、閻魔大王のところへ向かうことになっている。「閻魔大王に会うときに、失礼のないように」という意味で着るのが死装束だ。つまり、天冠を含めた死装束は、あの世での正装ということになる。
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この他にも、さまざまな説があるので、どんなものがあるのか紹介していこう。
まずは、「天冠」が元々身分の高い人の冠だったことから、「亡くなった人を、高貴な姿で送ってあげたい」という気持ちから天冠を付けるようになったという説。
いわゆる「亡くなった人の晴れ着」という意味合いなのだろう。「晴れ着を着せて、死後の世界に送ろう」という気持ちを感じることができる。
次に、「三途の川で地獄の死者に引きずり込まれないため」という説。これは、天冠が身分の高い人の冠であることから、「亡くなった人を身分の高い人に見せる」というお守り的な意味がある。
最後に、これは私が親族の葬式で葬儀屋の人から聞いたものなのだが、「三途の川を渡るときのチケット」という説もある。
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【追加雑学】死装束には他にどんなものがあるの?
額の三角巾の天冠は死装束の1つだが、他にどんなものがあるか知っているだろうか? ここからは、仏教においての死装束の雑学について解説していこう。
まずは、経帷子(きょうかたびら)。いわゆる白い着物だ。昔は、白い着物にお経の文章が書かれていたこともあり、糸に結び目を付けないなどといった風習があった。
次に、手に付ける手甲(てっこう)と、脚に付ける脚絆(きゃはん)。この2つは旅道具としても使われていたもので、手甲は汗をぬぐう役割が、脚絆は脚を守る役割がある。
なぜこの2つを付けるのかというと、仏教では死後、閻魔大王に会いに旅をすると考えられていることが関係している。現実でも旅道具として使われていた手甲と脚絆が死装束になったのだ。
最後に、頭陀袋(ずだぶくろ)。簡単に言うと「かばん」のことである。頭陀袋に何を入れるのかというと、六文銭(ろくもんせん)というお金を入れるのだ。このお金、何に使うのかというと、三途の川を渡るために使うとされている。
三途の川には奪衣婆(だつえば)という鬼のお婆さんがいて、お金を払わなないと着ている衣服を剥がされてしまうので、そのためにお金を持たせているのだ。
ちなみに、昔は実際に6つの銭を入れていたのだが、現在は「六文銭」と書かれた紙を使うことが多い。
この他にも、杖・数珠・草履・笠があり、こちらは故人に持たせたり着せたりするのではなく、棺に一緒に納める形になっている。
雑学まとめ
幽霊が額に付けている三角巾「天冠」についての雑学をご紹介してきた。あの布には、「閻魔大王に会うときの正装」説をはじめとして、さまざまな説がある。どの説も、亡くなった人を大切にする心が込められているように思える。
天冠以外の死装束も、「あの世の旅路で困らないように」という思いやりから着せられるようになったのだろう。
現在では伝統的な死装束ではなく、故人が好きだった衣服を着せて送る場合もあるが、今も昔も故人を思いやる気持ちは変わらないと私は思う。
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