ハサミでガラスが切れると言ったら、どのくらいの人が信用してくれるだろうか。窓やコップなどに使われる板ガラスは、本当にハサミで切ることができる。
しかし、これは一定の条件の下でのことであり、空気中でガラスを切ろうとすれば、それはそれは凄惨なことになるので、早まらずにこの記事を読んでいただきたい。
その条件とは「水の中で切る」ことである。これだけ守っていただければ、誰でも安全にハサミでガラスを切ることができるのだ。
これはケモメカニカル効果という働きによって可能となる。今回の雑学ではケモメカニカル効果について学んでいこう。
【生活雑学】板ガラスは水中ならハサミで切れる
【雑学解説】ケモメカニカル効果とは
そもそも、ガラスは固体だろうか、液体だろうか。そりゃ固体だろ! と思われた方も、ちょっと待って欲しい。実はガラスは現在の科学では固体とも液体とも定義づけられていない。
空気中では硬く、強い衝撃を加えると割れるガラス。誰もが固体だと思うだろう。しかし、そのガラス内では分子が不規則に働き、微妙に動いているというのだ。
この動きは肉眼ではもちろん、短期間の観測で確認できるレベルではなく、何億年という歳月をかけて観測すれば、動いているかもしれないレベル。ガラスにはたしかに液体の領域が存在し、固体とも液体ともいえない物質になっているという。
いってみれば、ものすごーく粘度の高い液体のようなものだ。そんなガラスは酵素とシリコンの分子が結びつくことにより構成されているのだが、水が入ることによって、その分子の結びつきが断たれ、ハサミで切れるようになるという。
この分子の結びを分断する働きが「ケモメカニカル効果」という。
映像では素手でやっているが、実際にご家庭で試すときは厚手のゴム手袋をお忘れなく。実際には切れるというより、細かく割れるイメージだ。
しかし、水中でガラスが切れたとして、使い道はあるのか。日常でガラスを加工する機会なんてほとんどないのが実情である。ガラスを加工するといえば…ステンドグラスしかあるまい。
スポンサーリンク
【追加雑学】家庭でできるステンドグラスの作り方
というわけで、ステンドグラスの作り方をご紹介していこう。
最近では趣味として制作する人も多いステンドグラス、意外と家庭でも作れてしまうものらしい。ガラスの加工もケモメカニカル効果でバッチリなはず。
1.デザインを考える
まずはデザイン画を描くところから始めよう。デザインを決めたら、パーツごとに番号をふり、どこにどのパーツが来るかわかるようにしておく。
2.ガラスを切る
デザインが決まったら、それぞれのパーツを切っていく。ここで登場するのは、水とハサミ…ではなく、オイルカッターとペンチだ。
オイルカッターは円状の刃にオイルを垂らしながら切っていく、ガラス専用のカッターである。どうやらケモメカニカル効果の出番はないらしい。
ガラスはパーツごとの型を描き、一辺ずつオイルカッターで切り目をつけ、ペンチで丁寧に割っていく。
切った断面は鋭利なので、気を付けよう。砥石をかけると組み合わせの工程がスムーズなので、手間はかかるが、砥石で滑らかにしておこう。
3.切ったパーツを整える
パーツを切り分けたら、組み合わせる前にそれぞれのパーツの接合面にコパーテープを貼っていく。コパーテープとは、銅でできたテープのことで、これを巻き付けることでハンダ線の仕上がりがきれいになるのだ。
コッパーテープの幅はガラスの厚さ+1.5mm~2.0mmのものを選び、ガラスの縁に対してコの字に巻き付けていく。
4.ハンダ付け
いよいよハンダ付けだ。ハンダは飛び散ることがあるので、メガネなどで目を守ることをおすすめする。
まずは、すべてのパーツをデザイン通りに並べたら、角が集まる部分にハンダをつけ、仮止めをしていく。これを「点止め」という。
点止めができたら、フラックスという松脂などからできた薬品をコパーテープに沿って塗っていく。フラッグスはハンダの腐食を抑え、塗りやすくしてくれるのだ。
フラックスも塗り終えたら、周囲を除き、すべてにハンダ付けしていく。表面が終わったら裏面も同様にフラックス~ハンダ付けをするのだが、裏面をやるときはハンダゴテを長く当て過ぎると表面のハンダが溶け出してしまうので、注意とスピードが重要だ。
5.レッドケイムで外周を巻く
さて、ここまでくれば完成は目の前だ。レッドケイムと呼ばれる鉛線で外周を巻き、固定していく。
最後にレッドケイムをハンダで固定すれば完成。
さすがに用意する道具は多めだが、道具さえ揃えてしまえば、案外誰にでも作れそうだ。
雑学まとめ
ガラスは水中だとハサミで切れるという驚きの雑学をご紹介してきた。ガラスは、ものすごーく粘度の高い液体。この事実だけで今までの常識を覆された気分だが、現在の科学をもってしてもガラスの正体が明確にできないということも、改めて科学の深さを思い知らされた。
家庭でもステンドグラスを作れるのはびっくりだ。せっかくの水中カットを使う場面はどうやらないようだが、安全に気をつけ、ガラスを切り貼りして楽しんでいただきたい。