排泄よりも大切なのは挨拶。
冒頭からなにやら失敬ではあるが、挨拶はどこにいても忘れてはならない大切なものである。そのなかで、日本人の代表的な挨拶は「お辞儀」で、海外制作の映画の中での日本人はこれでもかというくらいにお辞儀をしていることが多い。
日本人の挨拶の象徴でもあるお辞儀。そもそもどこからやってきたのか。そして、ひとくちにお辞儀といってもいろいろな種類や作法がある。今回は襟を正して、お辞儀についての雑学をご紹介しよう。一同、礼!
【生活雑学】お辞儀の起源と種類
【雑学解説】お辞儀はいつから始まった?種類は?
お辞儀は、飛鳥時代から奈良時代に中国の礼法を取り入れ、身分に応じたお辞儀の形が制定されたのが起源だとされていて、自分の急所である首を差し出し、相手に対して敵意がないことを示す表現が由来している。
現代のお辞儀は武家仕込み?
平安時代ごろに、古来の先例に基づき、朝廷や公家、武家の行事や儀式を研究する学問「有職故実(ゆうそくこじつ)」なるものが重んじられ、そこで礼儀作法の流儀の家柄がいくつか生じた。起源である中国の礼法のお辞儀もしっかり取り入れられたはずである。
もともと庶民には浸透していなかった礼儀作法であるが、江戸時代ごろには庶民も武家の作法を嗜むようになり、裕福な家庭では娘を武家に行儀見習いに出す習慣もできた。礼儀作法が庶民も学べるようになったのである。
かつてはさまざまな流派があったが、後継者がいなくなり、なくなった礼法もあったりと紆余曲折ありながら、礼儀作法の流派として有名であった小笠原流の「小笠原礼法」が、有職家の水島卜也(みずしまぼくや)によって民間にさらに広められた。
その武家の礼法に基づいたお辞儀が、時を経て時代の流れとともにマイナーチェンジを繰り返しながら、今の形になったのである。お辞儀の形をはじめ、現代の礼儀作法やマナーは主に小笠原流が元となっている。
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お辞儀の種類はいくつある?
それではそのお辞儀の種類についてだが、大きく分けて2種類で、座った姿勢で行う「座礼」と、立ったまま行う「立礼」がある。それぞれ詳しくご紹介していこう。
角度が重要!立礼
立礼は3種類。シチュエーションごとに使い分けよう。
- 会釈(角度15°):通路などで人とすれ違うときなどに使う軽いお辞儀。相手の胸元から腰に視線を置き、背筋を伸ばした状態で上体を傾ける。視線は1.5メートルほど先に置くと自然。
- 敬礼(角度30°):目上の人に対してや普段頻繁に使うお辞儀。背筋を伸ばして腰から上体を傾ける。目線は足下から2メートルほど先に置くのが自然。会釈よりもゆっくりと動作を行うとより丁寧さが伝わる。
- 最敬礼(角度45°):もっとも丁寧なお辞儀で、重役に対してや感謝・謝罪を行うときに使うお辞儀。背筋を伸ばして腰から上体を深く折り曲げ、目線は足下から1メートルほど先に置くのが自然。神前での儀式や高貴な方に対する礼に用いることもあり、普段あまり使わない人も覚えておこう。
ちなみに、日本のお辞儀の形は、体の前で手は重ねず、肘も張らないスタイルで、手をアピールすることはない。お腹が痛くてトイレに行きたいのかな? と思われてしまうので気をつけよう。
実はこんなに種類が?座礼
座礼はなんと9種類! 小笠原流では「九品礼(くほんれい)」といって座礼を9種類に分けている。
座礼の基本は屈体で、正座の姿勢から背すじをまっすぐに伸ばし、上体を前傾させてゆく形。その屈体の浅い順から並べていくぞ。
1.目礼(もくれい)2.首礼(しゅれい)3.指建礼(しけんれい)4.爪甲礼(そこうれい)5.折手礼(せっしゅれい)6.拓手礼(たくしゅれい)7.双手礼(そうしゅれい)8.合手礼(ごうしゅれい)9.合掌礼(がっしょうれい)
1と2の目礼と首礼は、高貴な人々への答礼などに使うもので、一般の人が使うことはほとんどなく、そのほかの7種類が屈体に伴う手の位置の変化から生まれる形としている。
しかし日常的にはこちらもあまり使われず、立礼と同じく「浅礼」・「普通礼」・「最敬礼」の3種類を使い分け、最敬礼の場合は顔を床から5センチまで下げる。
それぞれの形の説明は割愛するが、九品礼という座礼が存在するということは知っておきたい。
動画で基本を知っておこう!
角度といわれても、果たしてどのくらい曲げればいいのか? お辞儀の基本的な形の動画でクールジャパンをきめこもうではないか。
【追加雑学】お辞儀の語源
さまざまなお辞儀の形を知ったところで「お辞儀」の語源はなんだろうかと、気になっているオジギストもいるかも知れない。
お辞儀の「お」は美化語で、お金・お魚などと同様である。では「辞儀」とはなにか? もともとは「時宜(じぎ)」で、今風にいい換えると、タイミングという意味である。ちょうどいい状況・事態という意味であった。
しかし鎌倉・室町時代と移り変わるにつれ、時間的な意味合いがなくなって「状況に対する気持ち」になり「状況に対処すること」を経てさらに変化していき、現在の「頭を下げて挨拶する」という意味になったのである。
将来には「両手を上にあげながら歌い踊ること」になっているかも知れない。
雑学まとめ
かなりかしこまった今回の雑学。
お辞儀の起源はなかなか奥が深そうで、礼儀作法にも流儀・流派があり、プロフェッショナルもびっくりである。乱用すると価値が下がってしまうが、きちんとした礼儀作法を身につけて、しかるべきタイミングで使いたい。
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