クリスマスにサンタがやってくるというのは、世界に幅広く広がる文化だが、ドイツのクリスマスはちょっと面白い。
なんでも、サンタのほかに怖いサンタがやってくるというのだ。怖いサンタとは、一体何をするサンタなのか…何か危害を加えてくるのだろうか? そんな物騒なヤツならとてもサンタとは呼べない!
今回はこの怖いサンタクロースについて、詳しく調べてみた。そこには、子供のことを思いやるがゆえの深~い成り立ちがあったので雑学としてご紹介したい!
【世界雑学】ドイツでは普通のサンタのほかに怖いサンタ「クネヒトループレヒト」がいる
【雑学解説】悪い子をお仕置きするために同行するサンタの従者「クネヒトループレヒト」!
ドイツでクリスマスにやって来る、怖いサンタクロースの名前は「クネヒトループレヒト」(以下クネヒトと呼ぶ)という。
名字にも名前にも「ヒト」が最後に付いているのが、いかにもドイツっぽい。日本でいうところの山田太郎みたいな感じだろうか。
サンタがお馴染みの赤い衣装でやってくるのに対して、クネヒトは茶色のローブ姿。サンタと同じように立派なヒゲは生やしているようだが、明らかに陰鬱とした雰囲気だ。クリスマスに来られて決して嬉しい相手ではない。
彼は一人でやってくるわけではなく、なんとサンタと二人でやってくる。「え? サンタと仲良しなの?」と問いたくなるが、残念ながら仲が良いから一緒にいるわけではない。
クネヒトはサンタの従者なのだ。良い子にはサンタがプレゼントをあげるが、悪い子にはサンタはプレゼントをあげない。代わりに従者のクネヒトがお仕置きをするために、サンタに同行しているのだ。
クネヒトループレヒトが嬉しくないプレゼントでお仕置き
お仕置きとは具体的にどんなことをするのか。これについては諸説あるが、親がその子供を叩くためのムチや石炭の塊など、全然嬉しくないプレゼントをくれたり、もっと恐ろしい話だと袋に入れて連れ去られるなんてものもある。
ムチは百歩譲ってありだとしても、石炭なんてプレゼントされたら処分に困るのは親ではないか。ましてや袋に入れて連れ去るなんて普通に誘拐だ。
…ツッコミだすとキリがないが、そもそもしつけのために考えられた言い伝えである。子供がそれで嫌がるならなんでもよかったのだろう。
また、元はもっと宗教的な意味合いが強い言い伝えだったとのこと。クネヒトがお祈りをできるかどうかを子供にたずね、「できる」と答えればご褒美を、「できない」と答えれば灰の入った袋で叩かれるという話がある。
その状況で「できない」と答える子供は、ある意味勇敢だと思うのだが…。
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【追加雑学①】オーストリアやハンガリーでは妖怪のようなサンタも
同じヨーロッパでも、オーストリアやハンガリーに行けば、クネヒトとはまた別の怖いサンタクロースがいる。その名も「クランプス」。ドイツ内でも地域によってはクランプスが現れるという。
クランプスはクネヒトと違って、そもそも人間の見た目をしていない。見たまんま妖怪なのだ。悪い子に対してムチを打ち鳴らしながら「ちゃんと勉強するんだぞ! 親のいうことを聞けよ!」とさとすという。
日本のなまはげに近いイメージだろう。ちょっと親近感を覚える。
クランプスの方が見た目は怖いが、嫌がらせ度合いはクネヒトの方が強い。恐怖でしつけるか、嫌がらせでしつけるかといったところだ。
動画ではドイツのミュンヘンのクリスマスの模様がとらえられている。
先頭を歩く、黄金の衣装を身にまとったおじいさんがサンタクロース。サンタはみんな赤い服を着ているわけではないのだ…!
そして背後からゾロゾロとついてくる、角を生やした化け物がクランプス。身の毛もよだつような外見をしているが、お菓子をくれたり、記念撮影に応じたり…意外と気さくなヤツなのだろうか。
【追加雑学②】ドイツでは1年に2回もクリスマスプレゼントがもらえる!
実はドイツでサンタがやってくるのは、12月24日ではない。聖ニコラウスの日と呼ばれる12月6日なのだ。
聖ニコラウスはサンタのモデルになった人物。貧しさゆえに、3人の娘を売らなくてはいけなくなってしまった家族の家に、聖職者であったニコラウスが、窓から金貨を投げ入れたのが始まりだとされている。
その金貨が、暖炉の前に吊るされた靴下に入ったことから、靴下にプレゼントを入れる文化もできたとか。プロ野球選手並みの投球コントロールである。
12月24日はイエスキリストの生誕を祝う日だ。それとサンタの日はまた別になっているのである。
もちろん12月24日にもプレゼントがもらえる。サンタとはまた違った、天使のような姿をしたクリストキントや、場所によってサンタの別名である、ヴァイナハツマンというのがやってくるという。
12月6日はお菓子などの軽いプレゼント。24日は、手紙などで欲しいとお願いしたものがもらえるといった感じだ。
ちなみにドイツでは子供だけでなく、家族同士でプレゼントしあうという文化もある。なんとも暖かい気持ちにさせられる文化だ。
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【追加雑学③】日本の漫画にクネヒトループレヒトを題材にしたものがある
週刊「ヤングジャンプ」にて連載中の中村光氏による「ブラックナイトパレード」は、なんとクネヒトを題材にした漫画である。漫画の題材として、ドイツのクリスマス文化に目を付けるとは、非常に興味深い観点を持った作者だ。
物語の主人公は、大学受験にも就活にも失敗。おまけにバイト先のコンビニでも、要領の良いサボり魔の代わりに、自分ばかりがとばっちりを受けているという男だ。
彼がクネヒトにスカウトされ、悪い子に嬉しくないプレゼントを渡す手伝いをすることになる。上手くいかないことだらけの主人公は、人が何をしたら嫌な気分になるのかも熟知しているのだ。その素質を買われたのである。
これは物語のほんのさわりに過ぎない。読み進めていくと、人間の心理に触れる深い内容が展開されているぞ!
動画はブラックナイトパレードの公式PV。サンタクロースを題材にした物語で、「昇給あり」「正社員」のような言葉が強調されているのがなんともシュールだ。
雑学まとめ
クネヒトループレヒトについての雑学、いかがだっただろうか。クネヒトループレヒトは、子供のしつけのために考えられた言い伝えだが、そこにはクリスマスをただプレゼントをもらえる日で終わらせず、子供にとって意義深い日にしようという想いが込められている。
優しくするだけが愛情ではなく、たとえ怖い見た目をしていても、それも子供に対する思いやりの表れなのだ。
ただ、間違っても恋人に石炭はプレゼントしないように!
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