おせんべいなどのお菓子において、スタンダードでベーシックな味というイメージのある「サラダ味」。
普段なにげなく食べているけど…あれってどこがどう、サラダなんだ?
サラダといわれて真っ先に思い浮かぶのは、生野菜をふんだんに使ったあのサラダだ。しかしサラダ味から、野菜の味などこれっぽっちもしない。いったいこの「サラダ味」のサラダとは何を指すんだ…?
今回の雑学記事では、サラダせんべいの「サラダ味」の謎について迫ってみたぞ!
【食べ物雑学】サラダせんべいの「サラダ味」の意味とは?
【雑学解説】サラダせんべいのサラダ味は「サラダ油味」!?
お菓子のサラダ味とは、ずばりサラダ油味のことだ。
オリーブ油やごま油など風味豊かな油もたくさんあるが、やっぱり基本の油といえばサラダ油。とりあえずサラダ油で炒めておけば間違いない、定番の食用油である。
しかしそんなどこの家にでもある油のことを、わざわざ「サラダ味!」などと言って売り出しているのはちょっと意味不明だ。というかサラダ油の味というのもいまいちピンとこない…。
現代人の感覚ではわからないのも無理はない。実のところこのネーミングは、サラダ油がその昔、それほど身近な食材ではなかったことも関係しているのだ。
「サラダ味」は当時の高級志向を反映したネーミング
サラダ味が生まれた1960年代のこと、サラダ油は高級品だった。そしてこの頃は食生活の欧米化が進み、せんべいをはじめとした米菓の売り上げは減少傾向にあった。
そんななか、老舗の米菓メーカー亀田製菓が打開策として作ったのが、高級品のサラダ油をからめて塩をふった「サラダホープ」というせんべい。せっかく高級品を使っているのだから、それを前面に押し出すべきということでこの商品名が付けられたわけだ。
このサラダホープが見事ヒット。以降、「サラダ油+塩」という味付けのお菓子は「サラダ味」と名付けられ、おしゃれでハイカラなイメージで定着していった。まさに米菓メーカーの生き残りをかけた大発明だったのだ!
なるほど…その時代の価値観が反映されたネーミングだから、現代人からすれば意味不明なわけである。
現在でも、プリッツ・雪の宿・ソフトサラダなどのお菓子のサラダ味は「サラダ油+塩」。そういわれるとなじみ深いあの味は、たしかにそんな感じの味わいだ。
こちらはサラダホープの紹介動画。現在でも新潟県限定で販売しているぞ!
製造が追いつかなくなるほどの人気だったとは…! 業界の危機を救ったお菓子なだけはある。
ちなみに本当に野菜のほうのサラダを意味するサラダ味も実はあるぞ!
たとえばじゃがりこのサラダ味は「ポテトサラダ」をイメージした味。まあ、これはパッケージデザインでわかるので問題はないだろう。
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サラダ油の名前の由来は?
お菓子のサラダ味の意味はわかったが、そうなると今度はサラダ油自体の名前の由来が気になってくる。サラダ油からも、やっぱり野菜の味などしないぞ?
どうしてかというと、サラダ油は「サラダに生でかけられる」ということからその名前が付いたのだ。
日本には、そもそも揚げ物などの加熱調理に使う食用油しかなかった。そんなご時世において、サラダ油はドレッシングとして生で使うことができるよう開発されたものだったのだ。
なるほど! それなら高級品というのも理解できる。これも1924年のことで、現代の感覚ではその意味を知らないのも仕方がない。それだけ豊かな時代になったということだ。
ちなみに、「サラダ」の語源はラテン語の「塩」。その昔はドレッシングなどではなく、野菜に塩をかけたものをサラダと呼んでいたのだとか。たしかにキュウリとか、塩だけで食べてもおいしいよね!
ということは…サラダ油と同時に塩も使っているサラダ味のせんべいは、そのままの意味でも間違ってはいないということか!
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【追加雑学①】せんべいの歴史!元祖はどこ?
サラダ味に限らず、日本の代表的な米菓として愛され続けるせんべい。
実はこのせんべいの歴史は古く、紀元前の中国にそのルーツがあったといわれている。おめでたい祝日の食事として食べられるものだったというぞ。
その後、飛鳥時代に日本に伝わるが、当時のせんべいは小麦粉を原料としており、現在食べられている米を使ったせんべいとは別物だった。
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米のせんべいの元祖は「草加せんべい」
米を使ったせんべいの起源は、江戸時代に埼玉県で誕生した「草加せんべい」である。
草加市は古くから米どころとして栄え、農家の人々は余った米を保存するため、団子状にして乾燥させたものを作っていた。
江戸時代になると、草加は宿場町として賑わうようになる。その流れで保存食だったせんべいも、茶屋などで菓子として出されるようになったのだ。
当初は塩味だったものが醤油の普及によって醤油味に。時代の変化とともに、現在の味へと落ち着いていったのである。
うーん、この事実を踏まえると、中国から伝来したせんべいと、米のせんべいのルーツを同じとするのはちょっと間違っている気もする。現在、米でできたものをせんべいと呼ぶなら、それは日本の完全オリジナルじゃないか?
以下の動画では、草加せんべい独自の製法が紹介されている。
専用の型で「押し焼き」することで、独特のパリっとした食感に…。さすが元祖というべきか、伝統の技を感じさせる製法である。
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【追加雑学②】銚子電鉄を救った「ぬれ煎餅」!
せんべいが一企業を救ったこんな話もある。
銚子電鉄は千葉県銚子市を走る私鉄だ。鉄道事業のほかに駅や沿線、県内外で「銚電のぬれ煎餅」を販売している。
ぬれ煎餅は、古くから米や醤油の名産地である銚子市発祥の米菓。焼いた直後に醤油漬けにした、しっとりとして濃厚な味のせんべいだ。
そんな銚子電鉄とぬれ煎餅には切っても切れない縁がある。
1995年、銚子電鉄は経営難に苦しんでいた。そんな銚子電鉄に手を差し伸べたのが、地元のせんべい屋「イシガミ」だった。イシガミは銚子電鉄の慢性的な経営難から抜け出す増収案として、ぬれ煎餅を作る技術を無償で提供したのである。
このアドバイスを受け、銚子電鉄が発電所の跡地に工場を作り、ぬれ煎餅の販売を始めたところ、これが見事にヒット。鉄道事業の年商を超える額を稼ぎ出し、なんとか廃線の危機を乗り越えたのである。
まさかせんべいが鉄道会社の救世主になるなんて…どこからそんな発想が出てくるんだ…。
しかも、ぬれ煎餅が銚子電鉄を救ったのはこの1度ではない。
2006年、再び資金不足に陥った銚子電鉄は「ぬれ煎餅買ってください。電車修理代を稼がなくちゃ、いけないんです」という文章を公式ホームページに掲載した。
この文言がインターネットでたちまち拡散され、注文が殺到。電車は無事に修理され、またもやぬれ煎餅でピンチを乗り越えたのである。
銚子電鉄の駅では「ぬれ煎餅体験」ができる場所も!
銚子電鉄の駅には、ぬれ煎餅の直売所を兼ねた「ぬれ煎餅駅」もある。
以下は、銚子犬吠駅で行われているぬれ煎餅体験の様子を映した動画。
ぬれ煎餅駅でももちろん、同じ形で手焼き体験ができるぞ!
https://youtu.be/06fnA2ZH9qo
もう鉄道会社なのかせんべい屋なのか、どっちかわからなくなってきた…。
しかし「銚電のぬれ煎餅」は押しも押されもせぬ銚子電鉄の、そして銚子市の名物であることは間違いない。
雑学まとめ
今回はサラダせんべいのサラダ味の謎をはじめ、せんべいについての雑学をいくつか紹介した。
サラダの味がしないサラダ味をずっと疑問に思っていたが、サラダ油のことだったとは。同時に今では当たり前になっているサラダ油が高級品だったという、当時の時代背景も垣間見えた。
というか、それならサラダ味ではなく、「サラダ油味」が正解ではないのか…。まあ細かいことは気にしないでおこう。美味しければなんでもいいのだ!
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