いまや日本には80以上の動物園があり、絵本や図鑑でしか見たことのない動物たちを間近で見られるため、動物園は子供たちにとって夢のような場所だ。休日には家族連れやカップルで賑わい、大人になっても楽しめる場所である。
が! しかし! 動物園が作られたのには、私たちのイメージとはかけ離れたちょっと切ない事情があった。動物園はもともと、日本が海外と肩を並べた立場をアピールするために作られたというのだ。
いったいどういうことなのか。動物園ができた理由とは!? 今回は動物園についての雑学に迫る!
【動物雑学】動物園ができた理由は国力を見せるため
【雑学解説】飼育する動物の種類で国力を競った
動物園は、19世紀頃のヨーロッパで誕生したといわれている。このころのヨーロッパ諸国は植民地争奪戦が活発で、こぞって海外へ進出していた。日本に黒船がやってきたのも、この時代だ。
当時のヨーロッパ諸国では、植民地を獲得することに大きなメリットがあるとされていた。
- 領土の拡大
- 自国にない資源を得られる
- 働かずして植民地の作物が収穫できる
- 力の誇示
などなど、海外に進出して植民地を持つことが自国にとってプラスになると思われていたようだ。そして、植民地獲得に成功し支配すると、戦利品として植民地の特産物や地下資源を自国に持ち帰った。
植民地にしか生息していない動物を持ち帰り展示することは、支配の証明となった。
植民地が増えるたびに動物の種類と数が増え、まるでコレクションのように集まった動物を公開したのが、動物園の始まりだと言われている。飼育している動物の種類が多ければ、それだけ植民地を多く持つ証になり、動物園は国力を見せつけるのに役立ったというわけだ。
そのために生息していた国を離れ、自然環境も違う国へ連れてこられ、見世物にされていたのかと思うと、なんだかやりきれない気持ちになる。
【追加雑学①】日本に動物園を紹介したのは福沢諭吉
日本の動物園の始まりはどうだっただろう。
明治維新の前後、欧米の制度や文化を吸収するために使節団が派遣されていた。1862年に日本からヨーロッパに渡った使節団は、世界最大級の規模を誇るベルリン動物園を訪れたのだが、その中に1万円札の顔であるあの福沢諭吉がいたのだ。
福沢諭吉は、国力の象徴とも言える動物園をとてもうらやましがったという。
我が日本国でも実行したい!
その思いから、帰国後に書いた「西洋事情」という著書の中で、動物園を紹介したのだ。
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【追加雑学②】日本初の動物園、当初上野動物園にいた動物は?
日本初の動物園である上野動物園は、明治15年に誕生した。当初飼育されていたのは、イヌ・ネコ・ウサギ・シカ・キツネ・タヌキ…。どれも日本に生息している動物で、特別珍しいわけでもなく、北海道からヒグマを連れてきたが、これもインパクトに欠け来園者は少なかったという。
これではいかん! と思っていたころ、神田に来ていたサーカス団にトラの赤ちゃんが産まれたとの情報が!
なんと、北海道から連れてきたヒグマとトラの赤ちゃんを交換してもらい、上野動物園に外国の動物として初めてトラが仲間入り! このトラは人気を集め、来園者も増えたのだった。
【追加雑学③】どうしても欲しかったキリン
日本が国力をつけていき日清・日露戦争に勝ったころから、強い日本にふさわしい動物園にしたい! と欲が出てくる…。世界各国から動物が集められ、今ではおなじみのライオン・ゾウなどが上野動物園に仲間入りしたのだ。
そんな中、ドイツから「キリンを買わないか?」と持ちかけられたのだが、その金額は今で換算すると1億5000万ほど。それを、つがいで買わないか? という話だ。
ずいぶんとふっかけられた金額らしいが、園長はキリンが欲しくてたまらなかったようで…
英名は「ジラフ」と呼ばれていた動物。なんとなく中国の伝説の生き物「麒麟」と体の模様が似ていたらしく、こんな作戦に出た!
中国の伝説の生き物が手に入る! キリンだ!
と、ウソをついたのだ…。そして、強引に国の予算承認をとりつけ、見事キリンを購入することになったのだ。
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首が長すぎて…
キリンを迎え入れるのはとんでもなく大変だった。
・汽車で運べない
横浜港に到着したキリン。汽車で東京まで運ぶ予定が、首が長すぎてトンネルにぶつかり運べない。結局、大八車(当時の人力荷車)に乗せて人が押して運んだ。
・キリンの小屋はどうする?
ラクダの小屋を改造。屋根を取り長い柱を継ぎ足して高さを出し、むしろをかぶせて作った。
こうして日本にやってきたキリン見たさに人々が押しかけ、上野動物園は大繁盛! あっと言う間に黒字になったという。結果、園長の作戦は大成功となったのだ。
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そして、その後も世界各国の動物たちが上野動物園にやってきた。今や日本の各地に動物園があり、たくさんの種類の動物を見ることが出来る。
【追加雑学④】日本で初めて生まれたパンダの動画を発見!
今では上野動物園の顔となったパンダ。日本で初めて生まれたパンダの様子を報道したニュースだ。
繁殖が難しいパンダの赤ちゃんが誕生したことで、日本中が歓喜に包まれた。
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雑学まとめ
今回は、動物園についての雑学を紹介した。動物園を作った理由はなんだか切ないものがある。しかし、今は世界各地の動物を飼育して、観察・生体の研究・教育のため、一般に公開する施設だとされている。
我が家の動物好きの子供たちも、何度見に行ってもゾウの大きさに驚き、ライオンの前では毎回一緒に写真を撮り、カバの名前まで覚えてしまうほどの動物園ファンだ。
子供たちが大好きな動物園。動物園が作られた由来は、大人になるまで内緒にしておこう。