国ごとの味覚の違いを考えると、お菓子を世界的にヒットさせることがいかに難しいかがわかる。たとえばアメリカのお菓子を口にしたときに、日本人には少し甘すぎる印象をもつ人は多いだろう。
しかし「M&M’S」といわれればどうだろう。アメリカのお菓子に変わりはないが、日本人の口にもバッチリ合うはずだ。日本だけではない。M&M’Sは、ヨーロッパはもちろん、中国やマレーシアなどのアジア圏でも、広く愛される世界的ヒット商品だ。
今回はそんなM&M’Sの誕生に関する雑学をお届けしよう。そのエピソードから「甘いお菓子でホッと一息…そんなひと時を楽しんでもらいたい」という、開発者の想いが垣間見えるはずだ。
【世界雑学】アメリカのチョコM&M’Sは陸軍の要求によって生まれた
【雑学解説】M&M’Sの着想は「熱帯の気候でも手をベトベトにせずチョコレートが食べたい!」という要望から
1940年前後のこと、アメリカは南太平洋に陸軍部隊を展開していた。当然ここには本土から補給物資が送られるのだが、その中に入っているチョコレートは、兵士たちの楽しみの一つだった。
戦争のための基地なのだから、常時張り詰めた空気が流れていたはずだ。その状況下において、甘いお菓子がどれほど彼らを癒したことだろう。
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しかし一つ問題があった。南太平洋の基地は赤道以南に位置する熱帯の地域だ。チョコレートはベトベトに溶けてしまい、せっかく楽しみにしていたのに手は汚れる。
そんなちょっと残念な気持ちで食べなければいけない…。
そういうこともあり、兵士が現地に訪れた監察官に「手の上で溶けないチョコレートを作ってくれ」と不平をもらしたのだ。ここからM&M’Sの開発者であるフォレスト・マースが、商品の着想を練っていくことになる。
スペイン内戦で食べられていたチョコをヒントに開発…補給物資として現在も活躍!
マースが核心的なアイディアを得たのは、スペイン内戦の際に現地を訪れた時だった。現地では、兵士たちが砂糖でコーティングされたチョコレートを食べていたのだ。
そこから商品の開発を進め、1941年からは友人のブルース・ムリーと共同で工場を立ち上げ、製造を開始する。
ブルースはチョコレートメーカー・Hershey’sの社長の息子だったため、原料には事欠かない。マースとしても、それを見越しての共同経営だったのだろう。
こうして誕生したM&M’Sは、同時期に勃発した太平洋戦争においても補給物資として活躍。現在もアメリカ軍の補給物資の一つとして、欠かせない存在となっているのだ。
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【追加雑学①】M&M’Sのキャラクターには色ごとに性格がある
M&M’Sといえば、チョコレートに手足が生えたキャラクターも印象的だ。お菓子に伴ってキャラクターが作られるのは、日本でいえば明治製菓のカールのキャラ「カールおじさん」などだろう。M&M’Sのキャラクター設定はそれらと比べてまた一風変わっている。
実はM&M’Sのキャラクターには、色によってそれぞれ性格が決められているのだ。
- レッドは皮肉っぽい
- イエローは間抜け
- ブルーは冷静
- グリーンは魅惑的
- オレンジはノイローゼ気味
通常、イメージキャラクターはポジティブなイメージのものが多いが、M&M’Sのキャラクターは必ずしもそうではないところがユニークだ。
動画は2013年のM&M'SのCMだ。南国のビーチというシチュエーションで、溶けにくい利点が上手くアピールされている!
【追加雑学②】M&M’Sを世界的に普及させたフォレスト・マースの経営手法
M&M’Sが世界的ヒット商品へと成長を遂げたのは、お菓子自体の魅力はもちろん、開発者であるフォレスト・マースの経営手腕によるところも大きいだろう。
彼の経営は一言でいえば、「働かざる者食うべからず」だ。売り上げ目標が達成できないと、部長は即座にでも解雇される。またちょっとしたことでもミスが発覚すれば、深夜にも関わらず電話で説教をした。
鬼のように思えるが、働き者はしっかりと評価し、無遅刻・無欠勤の者は給料が上乗せになる…といった具合だ。惰性で働く者を許さず、社員全員が積極的に仕事に取り組む仕組みが、出来上がっていたといえる。
彼が掲げるマース社の理念に、「トップが責任を取るのではなく、社員全員に責任がある」という旨を記したものがある。M&M’Sが世界へと展開していったのも、そうして社員全員が責任をもって仕事をした結果なのだろう。
雑学まとめ
今回は、M&M’Sについての雑学をご紹介した。M&M’Sが開発されのは、熱帯でもチョコレートが手に溶けないように…。つまり「兵士たちが楽しみにしているチョコレートを、より楽しめるように」という想いからだ。そこからこの商品は、世界各地へと広がっていくことになった。
M&M’Sがヒットしたことは、「誰かを幸せにしたいという気持ちが繁栄を呼ぶ」ということを、我々に教えてくれる例である。