寒い冬を越すために、暖かい場所を求めて世界中を飛び回る渡り鳥。皆さんも渡り鳥が飛んでいる姿を一度は目にしたことがあるだろう。ここで渡り鳥の群れが飛んでいる風景をイメージして欲しい。V字に飛んではいないだろうか?
そう、渡り鳥の群れはV字編隊を組んで飛ぶのだ。V字飛行する鳥の群れは、約1.2mの間隔を均一に保ち、後続の鳥は、前を飛ぶ鳥から45度ずつ遅れて飛行しているという。
なぜだろうか? 今回の雑学では渡り鳥の群れがV字飛行になる、その秘密に迫るぞ!
【動物雑学】渡り鳥の群れがV字飛行で飛ぶ理由
【雑学解説】人間も見習いたい、渡り鳥の省エネV字飛行
ロンドン大学の調査チームは、鳥の体に装置をつけ、飛行中の位置と羽ばたきによる上下の動きパターンを分析した。
鳥や飛行機など、空を飛ぶものは共通して、気流を生み出して飛んでいる。鳥は羽ばたくことで、飛行機はエンジンで気流を生み出し、その気流を捕らえて安定した飛行を実現しているのだが、この鳥の気流の生み出し方にV字飛行の秘密が隠されていたのだ。
鳥が羽ばたくとき、空気を翼で下に押すため、翼の下には降下気流が生まれ、反対に翼の外側には上昇気流が生まれる。そのため、先頭を飛ぶ鳥の真後ろには強い下降気流が流れることになる。
これをかわして、なおかつ先頭の鳥の生む上昇気流を捕らえるためには、先頭の鳥の斜め後ろに位置するのが最も効率が良いと、鳥は進化の中で学習したのだ。
以下の動画は、前述したロンドン大学の調査チームが渡り鳥と並列飛行して撮影した映像である。
先頭の鳥の上昇気流を捕らえて飛ぶことで得られる効果は絶大で、25匹の鳥がV字編隊を組んで飛んだ場合、単独で飛行するのに比べて、同じ運動量で約1.7倍も飛行距離を延長できるらしい。9匹でも1.5倍と、少数でもその効果は抜群だ。
しかもこのV字飛行…。正確には「雁行飛行(がんこうひこう)」というらしいが、これには効率だけではなく、鳥たちの高度なチームワークも組み込まれているのだ。
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【追加雑学①】雁行飛行の高度なチームワーク
一部の研究によると、若い鳥の3分の1以上は、初めての渡り飛行中に極度の疲労から死んでしまうという。雁行飛行で効率よく飛べるとはいえ、長距離を飛行する渡り飛行は非常に過酷なのだ。
そんな中、お察しの方もいるかもしれないが、この雁行飛行、実は先頭を飛ぶ鳥には何の恩恵もない。ただただ疲れるだけである。
しかし、渡り鳥たちは雁行飛行を習得する進化の中で、思いやりにあふれた非常に高度なチームワークも習得していた。
イギリスのオックスフォード大学の国際研究チームが、オーストラリアからイタリアまでを移動するホオアカドリ14羽全てに、データ記録機器を取りつけ、追跡調査を行ったところ、編隊を組む鳥全てが、先頭を入れ替わりながら飛行していることがわかった。
よく、働きアリの2割は働かなくなるといわれているが、渡り鳥は編隊を組む全員が一丸となって飛ぶことで、大陸間をも超える超長距離移動を可能にしているのだ。
【追加雑学②】人間も省エネしたい。スリップストリームとは
高度なチームワークから飛行効率を高めた雁行飛行だが、人間の世界にも同じような原理は存在している。それが「スリップストリーム」である。
スリップストリームとは自転車競技などでよく用いられ、前の車両の真後ろを走ることで空気抵抗を減らし、体力を温存する戦法だ。
ロードレースなどでは、エース格の選手の体力を温存するために、チームの仲間が先頭を走るという隊形をとるなど、れっきとした戦法として使われている。
また、オリンピック種目にもなった競輪では、空気抵抗のため先頭を走る選手がどうしても不利になることから、残り1周半程度になるまでは、競走に参加しない「先頭誘導員」と呼ばれる車両が先頭を走る。
その他でも、マラソン・スピードスケート・モータースポーツなど多くの競走競技において重要な戦法として取り入れられているのだ。人間もラクしたいよね。
雑学まとめ
もっとも長い距離を飛ぶ品種では、32,000kmも移動するといわれる渡り鳥だが、超長距離移動の陰には、人間も見習うべき渡り鳥の効率的飛行形態と高度なチームワークがあった。
32,000kmと聞いてもピンと来ない方のために、地球一周が赤道の長さで40,077kmであることを付け加えてこの雑学を終わりにしたいと思う。
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