日本のお家芸と呼ばれることもある体操競技。走って跳んで回転して…。「人間の体ってこんなことできるの!?」と、見るたびに驚かされる。テレビ観戦中、選手が技を披露しているときは、息を止めて見入ってしまうものだ。
筆者も大好きな体操競技だが、「オリンピックの体操競技をイメージしてください」といわれて皆さんがイメージするのは、どんな風景だろうか。
おそらく、体育館(室内)に様々な器具が用意されていて、一人ずつ順番に演技していく…といったものだと思う。
しかし、実はオリンピックの体操競技は、数十年前まで屋外で行われていたのだ。足の裏痛くなりそうなんだけど…! いや、さすがに靴は履くか。
今回の雑学では、なぜ体操競技が屋内で行われるようになったのかご説明しよう。
【オリンピック雑学】五輪第17回大会まで、体操競技は屋外で行われていた
【雑学解説】体操はもともと屋外で行われていたが、第18回大会から屋内開催が定着した。
体操競技は、1896年の近代オリンピック第1回大会から現在までオリンピック種目として行われている歴史ある競技。
第1回のアテネ大会のときは、メイン会場であるパナシナイコスタジアムのフィールドで行われた。
それから第17回大会のローマオリンピックまで、青空の下で行われるのが通常だったのだ。屋内での体操競技しか見たことがない私にとっては、なんだか新鮮で一度見てみたい気がする…。
なぜオリンピックの体操競技が屋外で行われていたのか?
「体操」を英語でいうと「gymnastics」。この語源はギリシャ語の「gymnastike(ギュムナスティケ)」で、意味は「裸で体を鍛える」。
ただ体を鍛えるのではなく、「裸で」体を鍛える。つまり全裸。
体操は歴史ある競技と先ほど述べたが、本当に長い歴史をもつ競技で、紀元前の古代オリンピックから行われていたそうだ。
当時は、走る・跳ぶ・投げるの陸上競技的な要素と、レスリング・ボクシングのような格闘技的な要素を合わせたものを「体操」と呼んでいた。古代ギリシャの体操は、男たちが青空の下全裸で動き回ることを指していたのである。
これを聞いて私は、「太陽に照らされながら、思い思いにボディビルのポージングをするムキムキマッチョの集団」を思い浮かべてしまったのだが…。まぁそんなことはしないとしても、実際はどのように行っていたのだろうか。
というか、全裸でレスリングやボクシングって…大丈夫だろうか。主に下半身。悶絶してる人が多そうな気がする。
ということで、もともと「体操といえば屋外」だったわけだ。
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陸上競技も格闘技も今の体操競技には含まれていないのはなぜ?
現在の体操競技といえば、ゆかの他につり輪やあん馬、平均台など器具を使って行うのが普通だ。器械体操とも呼ばれる。そして、陸上競技や格闘技は行われていない。
この近代の体操競技は、19世紀にドイツの体育教師「フリードリヒ・ルートヴィヒ・ヤーン」が考案したもの。
ナポレオン戦争に負けて意気消沈している青少年たちを励まし、遊び感覚で体を鍛えるために、公園に野外体操場を作り、鉄棒や木馬などの器械を置いたのだそうだ。
この器械を使った体操は、心身を鍛えるのにもってこいだということで瞬く間にヨーロッパ中に広まり、1896年の近代オリンピック第1回大会の種目として選ばれるに至った。
こうして、体操は「屋外で器械を使って行うもの」になったのである。
なんで今は体操競技を屋内でやってるの?
屋内で体操競技を行うのが定着したのは、1964年の第18回大会東京オリンピックから。しかし、オリンピック第1回大会から第17回大会までの間にも屋内で行われたことがある。
1952年の第15回大会では、雨のため1日延期になったのちに屋内で行われることになった。そしてその次の第16回大会では屋内で開催、第17回ローマ大会では、雨が降っても大丈夫なように屋外(カラカラ浴場遺跡)にテントを張って行われた。
やはり、天気は人間の力ではどうすることもできない。屋内で行われるようになったのは雨対策のためもあったのだろう。
体操は一歩間違えれば命の危険がある競技。雨で鉄棒などが滑りやすくなっていたら危険極まりない。
また、近代オリンピックが始まった頃は総合競技として体操が行われていて、陸上競技やロープクライミングも行われていたそうだ。
しかし、1930年代には体操の種目が減り必ずしも屋外でやらなくてもよくなったというのも、室内競技になった理由だろう。
【追加雑学①】体操ニッポンの偉業と昔のオリンピックの様子
1960年ローマオリンピックから1976年モントリオールオリンピックまで、団体総合で金メダルを獲得し続けた日本。5連覇は前人未到の快挙だ!
こちらの動画はそのダイジェストを紹介したもの。第17回ローマ大会のときの体操会場の様子が一瞬映るぞ!
45秒頃からちらっと映されるが、テント内のように見える…かな? 白黒なのでわかりづらい。
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【追加雑学②】オリンピック体操競技で行う種目が現在の内容になったのはいつ?
体操競技はもともと屋外に置いた器具を使って行われていて、先に述べたように近代オリンピック初期の頃の種目の中には陸上競技やロープクライミングなども含まれていた。
そして、オリンピックごとに行われる種目が異なっていたようだ。第2回大会では個人総合の1種目のみだったのに、第3回大会では100ヤード走・幅跳び・砲丸も体操競技として行われていた。しかしその次の第4回大会では団体総合と個人総合の2種目。
そんな男子体操競技の種目が現在のゆか・あん馬・つり輪・跳馬・平行棒・鉄棒の6種になったのは、1936年の第11回大会ベルリンオリンピックからである。
また、女子体操競技がオリンピック種目になったのは1928年のアムステルダムオリンピックからで、ゆか・段違い平行棒・跳馬・平均台の4種目が現在も行われている。
男子と女子で体操種目が違う理由
男子は平行棒なのに、女子は段違い平行棒。これは、鉄棒や平行棒は腕力がかなり必要で女子にはちょっとキツイから。
段違い平行棒は、女子でも無理なく美しく、それでいて男子の鉄棒のようなダイナミックな演技ができるように開発されたもののようだ。
そして、男子の種目にはない平均台。平均台は、細い台の上でジャンプしたりバック転したりするもの。もし台の上でミスして、平均台の硬い角に股間をぶつけてしまったら…。
なぜ男子の種目に平均台がないのかわかるね。
【追加雑学③】あん馬・跳馬にはなぜ「馬」の字が付いている?
取っ手がついた器具の上で、腕の力だけで旋回や振動を行うあん馬。走って勢いをつけ、ジャンプしながら器具に手をつき、様々な回転技を行う跳馬。
どちらも台を使った種目だが、なぜか「馬」という字が付いている。
実はこの2つの種目は、もともと馬術の訓練のために行われていたもの。
あん馬は、馬に飛び乗るとき・飛び降りる時の足さばきや体を支えるための腕の使い方を訓練するためのもので、跳馬は馬の乗り降りの練習をするためのものだったそうだ。
初めは使う器具にも馬の頭やしっぽを模したものが付いていたが、乗り降りの訓練ではなく足さばきの美しさや回転を競う競技になっていったため、頭もしっぽもない台に変わっていったのだ。
雑学まとめ
今回の雑学では、昔のオリンピックの体操競技が屋外で行われていた理由、室内競技になった経緯をご紹介したぞ。体操とはもともと、体育の授業のようにいろいろな種目を行い、体を鍛えるためのものだったということがわかった。
また、器械体操は公園の遊具が発展したもの。今は遊具が置かれている公園が少なくなっているようだが、子どもたちにはぜひ公園で遊んでほしいものである。もしかしたら、体操含めいろいろなスポーツの才能が開花するかも!
そして、2020年の東京オリンピックでは体操選手たちの華麗な演技にぜひ注目したい! 生で観戦したいなぁ…。
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