マラソンの王者、アベベ・ビキラ。1960年、第17回ローマオリンピックのマラソン競技で、無名選手ながら金メダルをとっただけでなく、裸足で走ったことで「裸足のアベベ」と呼ばれ、世界を驚かせたエチオピアの選手だ。
しかし…実はアベベは、最初から裸足だったわけではなかったということをご存知だろうか。
わたしはてっきり、スタートのときからシューズをはいていなかったのだと思い込んでいたのだが、そうではなかったようだ。途中でシューズを脱いだということか?
というわけで今回の雑学では、「実は最初はシューズをはいていた裸足のアベベ」について紹介しよう。
【オリンピック雑学】「裸足のアベベ」は最初から裸足ではなかった
【雑学解説】アベベは途中でシューズを脱いで裸足で走った
ローマオリンピック、マラソン競技。スタートに立ったアベベは、無名選手であり、ほかのランナーたちにとって、特別気にかける相手でもなかっただろう。
スタートして競技場を出るときにはシューズをはいて、最後方で走っていたというアベベ。しかし、15キロ地点をすぎたころには先頭集団に入っていたのだ。しかも裸足で…。そして30キロ地点でトップに出たアベベは、そのまま優勝したのである。
ノーマークだった選手がいきなり優勝したことももちろんだが、裸足で走っていたことに当時の人々はおどろきと同時に興味津々だったであろう。
なぜ裸足なのか? と聞かれて、アベベはこう答えたそうだ。
「裸足のほうが走りやすそうだと思ったから」
このとき、アベベは足が痛んでペースが落ちたそうで、オンニ・ニスカネンコーチと相談した結果、シューズを脱ぎ、裸足でローマの石畳の上を走ったのである。
これが、「裸足のアベベ」が誕生した理由だったのか…。おどろきの事実だった。もともと裸足で参加したのだと思っていたが、途中でシューズを脱ぎ捨てた結果だったのである。
アベベ選手はもう一人いた
このローマオリンピックには、もう一人「アベベ選手」がいた。それは、金メダリスト、アベベ・ビキラのお兄さん、ワミ・アベベ選手である。
ワミは、7位でゴール。兄弟2人ともオリンピックで入賞したのだ! といいたいところだが、当時は6位までが入賞だったそう。
8位までが入賞となる現在なら、ワミも入賞になっていたのだが…。残念。
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【追加雑学①】金メダリストとなったアベベに贈られた「オニツカタイガー」
裸足でローマオリンピックの金メダリストとなったアベベは、世界から注目される選手になった。マラソンレースの招待状が届き、スポーツメーカーからはシューズを提案された。スポーツメーカーにすれば、世界から注目される選手が製品を使えば、大きな宣伝になるものだ。
日本からも「毎日マラソン」に招待しており、1964年に開催予定の東京オリンピックの下見もかねて、1964年に来日している。
その際には、当時マラソンシューズの開発をしていた日本のスポーツメーカー「オニツカ(のちのアシックス)」の創業者である鬼塚喜八郎が、アベベの宿泊先へ訪れて、シューズを提案したそうだ。
最初アベベは、「シューズは必要ない」と断っていたそうだが、日本の道路事情があまり整備されていないことや、オンニ・ニスカネンコーチのすすめもあり、鬼塚が提供した「オニツカタイガー」を履いて、毎日マラソンに参加した。
オニツカタイガーを履いて走ったアベベは、2位に10分以上の大差をつけて優勝。アベベは、シューズのおかげだと、感謝したそうだ。
「アベベをサポートしたい。ぜひこれを履いて優勝して欲しい」
そんな思いでシューズを提供した鬼塚にとって、次の東京オリンピックでも、ぜひ「オニツカタイガー」を履いて金メダルをとって欲しいと思っただろう。
しかし、アベベが東京オリンピックで履いた靴は、オニツカタイガーではなかった…。えーっ!? なにがあったのだろう…。
【追加雑学②】東京オリンピックでアベベが履いたシューズは?
1964年、第18回東京オリンピックに、アベベはオリンピック二連覇をかけて出場した。
このときアベベは、マラソン種目で世界初の二連覇を世界新記録で達成。4年前のローマオリンピックで、裸足で走ったアベベは、今大会ではしっかりとしたシューズを履いていたのだ。
そのメーカーは、「プーマ」。
毎日マラソンでシューズを提供した鬼塚は、毎日マラソン後もアベベにシューズを贈り続けていたのだが…。プーマはアベベに高額な金額を提示して、東京マラソンでプーマのシューズを履いて走る契約をしていたようなのだ。
まだかけだしの日本のメーカーと、すでに大企業だったプーマ。オニツカは、企業力で勝ち目がなかったということか…。鬼塚もこれには苦笑いするしかなかったそうだ。
たしかに、大企業のプーマの支援があったのでは、日本の一企業に勝ち目はないかもしれないが…。ちょっと切ない話である。
雑学まとめ
今回は、裸足のアベベが実は最初は靴をはいていたという雑学を紹介した。
「裸足のアベベ」と呼ばれているから、てっきり最初から裸足で参加したのだと思っていた。足が痛んだから靴を脱いで裸足になったというが…裸足のほうが痛くないか? と思ってしまうのがふつうだろう。
アベベは生まれ育ったエチオピアで、彼は裸足でかけまわっていたという。じかに大地を感じ地面を蹴って進むほうが、アベベにとっては自然な形だったのかもしれない。
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