本格的な夏がやってくると、やっかいなのが「蚊」だ。涼しい風を入れようと窓を開けていると、いつのまにか体のあちこちが蚊に刺されている。毎年かゆい思いをしている人も多いのでは?
窓を締めきってエアコンをつけるという手もあるのだが、筆者はあまり冷房が得意ではない。そこでお世話になるのが「蚊取り線香」である。蚊を寄せつけない効果もいいのだが、そのなんとも懐かしくなるような香りがたまらないのだ。
そんな蚊取り線香だが、その原料が何かご存知だろうか。今でこそ、化学成分によって作られているが、大昔はなんと「花」から作っていたのだ。
そこで今回は蚊取り線香の原料にまつわる雑学を紹介しよう。
【生活雑学】蚊取り線香はもともと花から作っていた
【雑学解説】もともと蚊取り線香の原料は「除虫菊」という花だった
いまや定番となっている渦巻状の蚊取り線香が作られたのは明治時代のころ。「KINCHO」の商標で蚊取り線香や殺虫剤を作っているメーカー「大日本除虫菊」の創業者によって開発された。
蚊取り線香の原料は社名にもなっている「除虫菊(じょちゅうぎく)」である。この花は正式には「シロバナムシヨケギク」という、白い花びらをもった植物だ。
胚珠(はいしゅ)と呼ばれる箇所に虫に有効な成分がある。そのため、かつては殺虫剤の原料として使われていた。
大日本除虫菊の創業者である上山英一郎さんは除虫菊を普及させるための活動を行っていたそうだ。あるとき、売られている線香を見て、除虫菊を線香に混ぜ込むことをひらめいたらしい。その後開発に取り掛かり、1時間ほど使える棒状の蚊取り線香が発売された。
しかし、棒状の線香では燃焼の途中で折れやすい。研究のすえ、今のような渦巻き型の蚊取り線香にたどりついたといわれている。
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こうした経緯もあって、除虫菊は国内での生産が盛んになった。だが、技術の進歩と共に除虫菊に含まれている有効成分を合成で作ることが可能となったのである。そのため、現在の蚊取り線香に除虫菊は使われていない。
実は筆者の地元である因島市(現:尾道市因島)も除虫菊を市花とするほど、大量生産の拠点だった。しかし、今では観賞用に植えられているだけである。
ただ、除虫菊畑は観光客が足を止めるほど、見ごたえのあるものだ。以下の動画でその景色を確認できる。
筆者はもう見慣れてしまった感もあるのだが、あらためて見るととても美しい景色だ。除虫菊の見頃は毎年5月あたりなので、興味がある人は訪れてみてほしい。
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【追加雑学①】人の血液を吸うのはメスの蚊だけ
さて、蚊取り線香の話題をお届けしたが、根本的な元凶である「蚊」についてのトリビアを紹介しよう。それはなんと、人を刺して血液を吸う蚊は「メス」だけというものだ。
大半の人は蚊に刺された経験から、蚊の主食は動物の血と誤解していることだろう。実は蚊の主食は木や花の汁なのである。しかし、メスの蚊は卵を産むための栄養素として動物の血が必要となるらしい。
つまり、腕や足に蚊がとまっていれば、それは産卵間近のメスというわけである。そう聞くと、思わずバシッと叩いてしまうのはしのびない気もする…。
だが、放置すると不快なかゆみをもたらしてくる…。筆者の血はきっと不味いはずだから、他の動物の血を吸ってくれと願うばかりである。
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【追加雑学②】「蚊」という漢字に「文」が使われているのは「ブーン」という羽音から
蚊についてもう1つトリビアをご紹介。それは「蚊」という漢字に「文」が使われているのは「ブーン」という羽音が由来というものだ。
さすがの筆者もその話を聞いたときはジョークかと思ったが、実は本当らしい。
漢字といえば古代中国から伝わってきたもの。今の中国語では「文」という字を「ブン」「ブーン」などとは発音しないらしいが、古代の中国ではそういった発音をしていた地域があったそうだ。
そのため、「蚊」は「ブーン」という羽音の虫だから「蚊」という漢字が登場したということである。漢字を覚えるための知識としては役立つかもしれない。ぜひ、覚えておこう!
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雑学まとめ
今回は蚊取り線香と蚊にまつわる雑学をお届けした。毎年のように蚊に悩まされている人は虫除けスプレーだけではなく、昔ながらの蚊取り線香に頼ってみてもいいだろう。
また、除虫菊畑の美しい景色に興味がある人は筆者の地元である因島を訪れてみてほしい。除虫菊以外にも瀬戸内海の景色や、しまなみ海道といった観光スポットもある。もしかしたら、筆者とすれ違うことがあるかも…。