化学や生物・天文などの分野では、新発見のものが見つかった時、その名称は最初の発見者がつけることができるということを知っている人も多いだろう。
そして、その名前の由来にはユニークなものも多い。日本の山中伸弥教授が発見した「iPS細胞」の名前に小文字の「i」が使われている理由などは、そのいい例だ。
世の中には「これって本当?」と思わず疑ってしまう、不思議な名前の遺伝子が存在するのである。
今回の雑学では小説やゲーム・アニメなど、さまざまなものが名前の由来となっている遺伝子を紹介していきたい。
【人体雑学】小説・ゲーム・アニメが由来!?変わった名前の遺伝子を紹介
【雑学解説】有名作品のタイトルなどが由来の遺伝子たち
遺伝子とは、生物の姿形や特徴・細胞の働きなどの情報を記録しているものであり、世代ごとに受け継がれていくものである。
各遺伝子がどんな情報を記録しているかを解明することで病気の原因解明など、医療の発展に役立てようとその解明が日々進められているのだ。
そして、冒頭でも述べたように、特定の働きをする遺伝子を最初に発見した人物がその遺伝子に名前をつけられるが、そこには発見者の趣味・嗜好が表れやすい。そのせいか、小説やゲームなどに関連する名前がついた遺伝子は意外と多いのだ!
ピカチュウリン
2008年に大阪の研究所が発見した遺伝子は、「ピカチュウリン」と名付けられている。
この遺伝子は、動物の視覚の神経伝達に影響するものであり、電気信号と関係することから、電気を武器にするポケモン「ピカチュウ」にちなんで、この名前がつけられたのだ。
また、ニューヨークの科学者が、ガンを引き起こす遺伝子に「POK Erythroid, Myeloid ONtogenic factor(POK赤血球系・骨髄球性幼若化因子)」の略語として「Pokemon」と名付けたこともある。
しかし、株式会社ポケモンの米国法人である「Pokemon USA」が動いた。この命名に対して「ガンを引き起こす遺伝子に『Pokemon』と名付けるのはイメージが悪い」として、法的措置をとることを表明。その結果、この遺伝子の名前は「Zbtb7」へと変更されたそうだ。
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ソニック・ヘッジホッグ
胚の分裂に関する遺伝子は「ソニック・ヘッジホッグ」という名前である。
この遺伝子がうまく働いていないショウジョウバエは、毛の生え方が普通ではなく、ハリネズミのように体表全体に生えたという。
そのため、ハリネズミのキャラクターが主人公のゲーム「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」から名前がつけられたそうだ。
サウザー
生物の内臓の位置が反転する「内臓逆意」に関係する遺伝子には、「北斗の拳」の登場人物・サウザーの名前がつけられている。
内臓逆位や、サウザー遺伝子についてはコチラで詳しく解説しているので、ぜひご確認いただきたい。
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アルジャーノン
ここまでは遺伝子の名前を紹介してきたが、今回は、「遺伝子に働きかけて影響を与える化合物」の名前を紹介したい。
2017年に京都大学が発見した化合物は、染色体異常で起こるダウン症に対して一定の効果をもつことがわかった。
その化合物をダウン症の子を妊娠したマウスに投与することで、生まれた子の脳機能が改善するというのだ。
京都大学はこの化合物に「アルジャーノン」と名付けたが、これは「altered generation of neuron」の略語であり、小説『アルジャーノンに花束を』が由来ではないと否定している。
『アルジャーノンに花束を』は、知的障害のある主人公が脳手術を受けて天才的な知能を得たものの、時間経過とともに脳の機能が落ちていき、最終的には手術前より知能が低下してしまう…という結末である。
脳機能を改善する化合物であることから、同作にちなんで「アルジャーノン」と名付けたが、ストーリーの結末を知っていると効果に疑問がもたれてしまう…。
そんな背景から、京都大学側は『アルジャーノンに花束を』との関連を否定したのではないだろうか?
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【追加雑学①】ちょっと変わった名前の由来をもつ遺伝子たち
アニメや小説などとは関係ないものの、ちょっと変わった由来の名前をもつ遺伝子がいくつかある。ここでは、そんな遺伝子をご紹介する。
武蔵
ショウジョウバエの触覚の形成に関する遺伝子は「Musashi」という名前である。
この遺伝子がうまく機能しないと触覚が枝分かれすることから、二刀流で有名な剣豪・宮本武蔵を由来として名付けられた。
腹切り
細胞の自殺と呼ばれる「アポトーシス」という現象に関する遺伝子には、「Harakiri」と命名されている。
この名前はもちろん、日本の武士が自害する「切腹」が由来である。
出雲
精子と卵子を結びつける機能をもつ遺伝子には「Izumo」という名前がつけられている。
これは出雲大社が縁結びの神様なので、それにちなんで名付けられたそうだ。
【追加雑学②】全然悟っていなかった!「Satori」遺伝子の本当の機能とは?
東北大において、ある遺伝子が正常に機能していないオスのショウジョウバエは、メスに対して求愛行動も交尾もしないということを発見した。
この様子がまるで「悟りを開いている」ようだったため、「サトリ」という名前をつけたそうだ。
しかし、このショウジョウバエを観察したところ、オスに対して求愛行動などをすることを発見したのだ! つまり、求愛の対象がメスではなくてオスだった…というオチ。
「サトリ」という名前とのギャップに、思わず笑ってしまうしかない。
雑学まとめ
今回の雑学はいかがだっただろうか。遺伝子と聞くと小難しい印象があると思うが、今回のようにくだらない(失礼!)名前の由来を知ると、とても身近に感じられるのではないだろうか?
これからは、遺伝子をはじめとする科学分野を毛嫌いせず、研究者たちの成果にも興味をもっていただきたい。
そして、もしアナタが好きな作品があるなら、理系科目を頑張って科学者になってみよう。そして、新たな発見ができれば、後世までその名前を残せるかもしれない!?
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