食べ物の由来

味ではなく香り!桜味の正体は"クマリン"という芳香成分

雑学カンパニー編集部

雑学カンパニーは「日常に楽しみを」をテーマに、様々なジャンルの雑学情報を発信しています。

「桜味」の正体は、味ではなく香りだったという雑学

筆者は桜味のスイーツに目がない。それは、昔の恋人との幸せな時間を思い出すからだ。

春になり桜味を味わうたびに、当時の恋人とちょっとしたケンカをしたあとにシェアして食べた、すこし古びたケーキショップの桜のロールケーキを思い出す。

あのころは、何だかんだいって満ち足りていたなぁ…いや、満ち足りすぎていたんだ…。あれ…甘いもん食ってるはずなのに、やたらとしょっぱいぞ…? 桜の塩漬けのせいか…?

ところで、桜味の正体は「味」ではないということをご存知であろうか? われわれは桜の「香り」を味として認識しているのだ!

今回はそんな「桜味」についての雑学に迫る!

【食べ物雑学】「桜味」の正体は、味ではなく香りだった

ぷよぷよくん
桜のスイーツって独特の味がして美味しいねぇ。
ガリガリさん
桜味は『味』じゃないんだぜ。芳香成分『クマリン』が桜味の正体なんだ。

【雑学解説】桜味の正体は芳香成分「クマリン」

桜味の正体は芳香成分「クマリン」についてのトリビア

 

「桜味」を一言でいうと、桜の塩漬けの味である。そして、正確にいうとこれは「味覚」ではない

桜の塩漬けの中に含まれている「クマリン」という芳香成分を、われわれは「味」と呼んでいるのだ。なお、生の葉っぱはこの香りがしない

実際、昔筆者は桜の葉っぱをもぎ取り食べてみたことがあるが、あのかぐわしい香りは一切せず、普通の葉っぱの味しかしなかった。

ぷよぷよくん
確かに葉っぱが生い茂っている桜の木の下を通っても、桜のスイーツみたいな香りはしないもんねぇ。

実は、このクマリンを生み出すには「塩漬け」という作業が必要なのである。

桜の葉っぱの細胞内にある液胞(えきほう)と呼ばれる水分量を調節する部分には、「クマリン酸配糖体(はいとうたい)」という、糖と結合した物質が含まれている。この結合した状態では、葉っぱから良い香りはしない。

しかし、葉っぱを塩漬けにすることによって、塩分に反応した糖が分離しクマリンが作られる。これによって、香りは発散されるのだ。

ガリガリさん
この塩漬けに使う桜の葉、どんな種類でも良いってワケじゃないんだぜ。

おすすめ記事

桜餅は関東と関西でかなり違うという雑学
桜餅でも関東vs関西!比べてみたら全然違う…【長命寺餅vs道明寺餅】

続きを見る

桜の葉っぱの塩漬けには「オオシマザクラ」が使用されている

さて、桜といえば、多くの人がソメイヨシノを思い浮かべることであろう。実際、日本国内に存在する桜の8割ほどが、ソメイヨシノだといわれている。

しかし、桜の葉っぱの塩漬けにはこのソメイヨシノではなく、オオシマザクラという別の種類の桜が使われる。オオシマザクラは日本の固有種であり、ソメイヨシノの交配親でもある。

ぷよぷよくん
オオシマザクラがなかったら、ソメイヨシノも生まれなかったんだね。

おすすめ記事

ソメイヨシノは、なぜ花が先で葉っぱがあと?に関する雑学
ソメイヨシノが"花が先で葉っぱがあと"なのはなぜ?

続きを見る

オオシマザクラの葉っぱは大きく、また毛も少なくて柔らかいので、食用として向いている。ソメイヨシノの葉っぱでも塩漬けは作れるが、葉が固くて食感が良くないらしい。

ちなみに筆者は道端の桜らしき植物の葉っぱで塩漬けを作ったことがあるが、食感はザラザラするし、ほのかに香る程度でかぐわしい桜の塩漬けにはならなかった。…いや、そもそもアレ、桜だったのか?

ガリガリさん
むやみに知らない植物を口にするもんじゃないぜ。中には毒をもっているものだってあるからな。

スポンサーリンク

【追加雑学】クマリンの過剰摂取には注意

クマリンの過剰摂取には注意というトリビア

クマリンはポリフェノールの一種で、抗酸化作用・血流改善・抗菌効果がある。そしてなにより、この香りにはリラックス効果がある。

しかし実は、クマリンは過剰摂取に注意してほしい成分でもあるのだ。

ぷよぷよくん
えぇ、ポリフェノールってことは体に良いことづくめなんじゃないの?

クマリンは桜のみに含まれている成分ではない。実は、シナモンにも含まれている。そして、このシナモンの中に含まれるクマリンについて、平成19年度に東京都健康安全研究センターは調査を行っている。

その内容はクマリンを過剰摂取した時に起こりうる健康被害と、シナモンに含まれているクマリン濃度についてだ。

報告によると、クマリンは肝障害を引き起こしてしまう可能性がある。成分に敏感な人の場合、たとえ少量の摂取でも、肝臓に軽度の障害を負ってしまうことがあるのだという。

また、日本に流通しているシナモンは2種類あり、それぞれクマリン濃度が異なるのだという。

スリランカ・インドなどで生産されているセイロンシナモンのクマリン濃度は13.7ppm。中国・ベトナムなどで生産されているチャイニーズシナモン(カシア)のクマリン濃度は3257.5ppmなのだそうだ。(1ppmは、食品1kgあたり1mgのクマリンが検出されたことを表す。)

ガリガリさん
もう別ものレベルの濃度差だな…

肝臓が弱い人は、シナモンを購入するときには産地をチェックしておいた方がいいかもしれない…。

クマリンの一日の摂取許容範囲は?

クマリンの一日の摂取許容範囲についてのトリビア

ヨーロッパでもクマリンの過剰摂取は不安視されており、ドイツ連邦リスクアセスメント研究所は、クマリンの一日当たりの摂取許容範囲を以下のように設定している。

この発表によると「0.1mg/kg/day」…つまり、体重が60kgの人ならば一日6.0mgまでクマリンの摂取がOKということのようだ。

やはり、桜スイーツ好きの身としては、桜の葉に含まれているクマリンの量が気になるところである。桜の塩漬けの葉っぱに含まれているクマリンは一枚あたり0.03~0.1mgなんだそうだ。あれだけ強く香るのに、芳香成分の含有量はけっこう少ないようである。

ぷよぷよくん
思ったよりクマリンの量は少ないけど、桜のスイーツ食べ放題は自粛しようっと…
ガリガリさん
お前、食う量ハンパないもんな。

いくら桜スイーツが好きでもオールシーズン頻繁に食べるわけではないし、そこまで心配する必要はなさそうだ。…とはいえ、食べすぎには気をつけ、たしなむ程度に抑えておきたい。

雑学まとめ

桜味についての雑学、いかがだっただろうか。桜味の正体は「クマリン」という芳香成分で、これは桜を塩漬けすることによって生成されるものである。また、クマリンはシナモンにも含まれている。

このクマリンには健康効果がある反面、過剰に摂取すると肝臓に障害を及ぼしてしまう可能性があるので、摂り過ぎには注意していただきたい。

冒頭に紹介した筆者の昔の恋人…破局理由は「相手の過剰な愛情が負担になってしまった」であった。クマリンも恋愛も、過ぎたることは及ばざるがごとしである。

ぷよぷよくん
愛情も過剰になるとダメなの?
ガリガリさん
お前には分からないことだろうな…
日本の桜の80%がクローン桜という雑学
ソメイヨシノは完全なクローン桜!その理由とは?【動画】

続きを見る

いま読まれている記事

  • この記事を書いた人

雑学カンパニー編集部

雑学カンパニーは「日常に楽しみを」をテーマに、様々なジャンルの雑学情報を発信しています。