黒と白のコントラストで、凛とした立ち姿の「コウテイペンギン」。別名「エンペラーペンギン」とも呼ばれており、ペンギンの中で最も大きく、まさに「皇帝」にふさわしい堂々とした風格をしている。
一方、大きな体を左右にゆらしてヨチヨチ歩く姿のこっけいさや、ふわふわの毛をしたヒナのかわいらしさも、コウテイペンギンの魅力である。
このコウテイペンギン、じつは、世界一過酷な子育てをする鳥といわれているのをご存知だろうか。ブリザードが吹き荒れる極寒の南極で、ひたすら卵をあたため続けるオス…。
え!? オス? と、まずそこに衝撃をうけた方も多いだろう。実はコウテイペンギンが卵からヒナにかえるまで、まさに身をけずって子育てするのはオスなのだ。
というわけで今回の雑学では、コウテイペンギンの過酷すぎる子育てにせまってみよう。
【動物雑学】コウテイペンギンの過酷な子育てとは?
【雑学解説】コウテイペンギンは、オスのほうが2ヶ月間絶食して卵をあたため続ける
コウテイペンギンが暮らしているのは、地球の最南端・南極。海の近くに群れをつくって暮らしている。しかし、そこはエサになる魚も多いがアザラシやシャチなどの天敵も多いため、小さなヒナを育てるには危険すぎる。
そこで、4月頃(南極では秋)になると、子育てをする場所をさがして、海をはなれ内陸へと向かって大移動する。時には100kmもの道のりを歩いて移動するという。
よちよちと100km歩くことがすでに過酷である。コウテイペンギンの歩くスピードは時速0.5kmだといわれているから、100km歩くには200時間…。まったく休まず歩いても8日以上かかる計算になる。
おそらく、1か月ほどかけて歩くのだろう。しかもどんどん海からはなれていくため、エサはない…。なにも食べずに歩き続けるのだ。
安全な場所にたどりつくと求愛行動をしてカップルが成立し、5月頃にメスは卵を1個産む。このころ南極は、もう冬に入っている。
産まれた卵は寒い空気に長くふれないように、すぐにオスに渡されるという。そしてオスは卵を足の上に乗せ、おなかの羽毛で卵を抱くのだ。
卵からヒナがかえるまで、60日間。オスは2ヶ月間絶食して卵をあたため続ける。吹き荒れるブリザードの中、立ったまま。オス同士身を寄せあって…。
もう…ここまで過酷な子育て、なんとかならないの? と泣けてくるが、こうしてコウテイペンギンは子孫を残してきたのだ。
コウテイペンギンは、なぜオスが卵をあたためるのか
そもそもなぜオスだけが卵をあたため続けるのだろう。メスはなにしてるの?
メスは卵をオスにたくし、エサを求めて海へと戻るのだ。海からの大移動と産卵で体力を失っているため、まずは体力を戻す必要がある。そして卵からかえるヒナのために栄養をつけ、胃の中にエサをため込まなくてはならないのだ。
オスのコウテイペンギンがヒナに「ミルク」を与える
ようやくヒナが卵からかえるころには、オスの胃の中はからっぽ。体重は40%以上も減っているという。
たっぷり胃にエサをため込んだメスが帰ってくるまでは、おなかをすかせたヒナを守らないと…。そこでオスがヒナに与えるのは、なんとミルク! これは胃や食道の粘膜がはがれたもので、このペンギンミルクをヒナに与えて、メスの帰りを待つのだそうだ。
身をけずって…とは、まさにこのことだ。
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オスのイクメンぶりが泣ける…
子育てをしているオスをとらえた映像だ!
イクメンパパとはこのこと? いや…過酷すぎて泣ける…。
メスが戻ってきたら、ようやくオスは育児をバトンタッチして、エサを求めて海へ向かう。
最初の大移動も含めれば、もうすでに4ヶ月は絶食していることになるが、さらにここからまた海へと100km…。無事たどりつけないオスもいるのでは? と思うと、コウテイペンギンの子育ては、過酷を通りこして命がけである。
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【追加雑学】ヒナばかり集まるペンギンの「クレイシ」とは?
夫婦で子育ての役割を交代しながら、じわじわと群れは海のほうへと移動していく。
海岸へつくころ、南極は夏になり、ヒナも成長して食べ盛りに。交代で運ぶエサでは追いつかず、夫婦で海へ出るようになるのだが、まだまだ幼いヒナを一人にしておくわけにはいかず、ヒナばかりを集めた集団を作るという。
これが「クレイシ」と呼ばれるもので、子供ができなかった大人が面倒を見ているのだそうだ。いわば、ペンギン保育園である。
その様子をとらえた映像がこれだ!
かわいすぎていつまでも見ていたくなる映像だ。まさしくペンギン保育園!
雑学まとめ
今回の雑学では、コウテイペンギンの過酷すぎて泣けてくる子育てを紹介した。あまりの過酷さに、言葉を失ってしまった…。
また、「クレイシ」にはおどろいた。テレビで、ヒナがたくさん集まっている光景を見たことがあるが、保育園のような意味があったとは…。ヒナが一人前になるまで、群れ全体で子育てをするわけだ。
ペンギンファンの私は、このコウテイペンギンがより大好きになった。また子供を育てる同じ親としてリスペクトする。
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