童謡の「赤とんぼ」は日本で最も有名な歌の1つといえる。赤とんぼという言葉を聞くと、なんとなく頭にイメージが浮かぶ人は多いだろう。
しかし、赤とんぼが具体的にどんなとんぼなのか、はっきり意識している人は少ないと思う。中には、赤とんぼという名前のとんぼがいると思っている人もいるかもしれない。
実は赤とんぼというのは、曖昧な概念なのである。今回は、「赤とんぼ」というとんぼはいないという雑学についてご紹介しよう。
【動物雑学】「赤とんぼ」というとんぼはいない
【雑学解説】赤とんぼとは体の赤いとんぼのことで、特定の種類ではない
赤とんぼと聞けば、童謡「赤とんぼ」のメロディーが浮かんでくる人は多いだろう。「赤とんぼ」は「あなたが選ぶ日本のうた・ふるさとのうた」のアンケートで1位を獲得している。
「日本童謡の会」のアンケートでも、好きな童謡の1位に「赤とんぼ」は選ばれている。「赤とんぼ」は童謡作家の三木露風の作詞による作品だ。日本人の心に深く根ざしている「赤とんぼ」だが、歌詞に登場する赤とんぼの具体的な種類ははっきりしていない。
体が赤いとんぼとして、非常にメジャーな種類にアキアカネがいる。
アキアカネを含むアカネ属をアカトンボ属と呼ぶこともあるため、アカネ属のとんぼ全てを赤とんぼと呼ぶ場合もある。
ただし、アカネ属でも体が赤くなければこれに含めない場合もあり、かなり曖昧になっている。そもそも、専門的な知識がなければ、とんぼの見分けはとても難しいのだ。
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【追加雑学①】赤とんぼにメスはいない?
メスの赤とんぼは存在しないという考えもある。最も一般的に赤とんぼと見なされているアキアカネのオスは、成長すると体が赤く変化する。アキアカネは、元々は黄色に近い色のとんぼだが、オスだけに強い赤い色が現れるのだ。
これはアキアカネだけでなく、ナツアカネなど、アカネ属のとんぼのオスの多くが赤い体に変化するのだ。この変化は縄張り争いや、メスにアピールするためといわれている。
メスの体が赤く変化することはないので、赤とんぼにはメスがいないと考える人がいるわけだ。しかし、赤とんぼと呼ばれる種類の多くは元々体に赤い部分がある。
これはメスも同じで、体色が変化しなくても体が赤いメスのとんぼも存在する。ごくまれに、体が赤く変化するメスのとんぼもいるので、メスの赤とんぼが存在しないわけではない。
【追加雑学②】童謡「赤とんぼ」の赤とんぼの正体とは?
童謡「赤とんぼ」は、作詞者の三木露風が子供の頃に見た光景を思い出して作られた曲だという。三木露風がとんぼに関してどの程度知識があったのかはわからないが、曲中の赤とんぼは、単に漠然とした赤い色のとんぼのイメージなのかもしれない。
とはいえ、三木露風がイメージした赤とんぼが実在のとんぼであることは間違いない。そのため、童謡に登場する赤とんぼがどの種類なのかという議論が長年にわたって続いている。
赤とんぼにはアキアカネがふさわしいという意見は多いが、アキアカネは夕方にはあまり飛ばないとんぼなのだ。これは「夕焼け小焼けの赤とんぼ」という歌詞と完全に矛盾している。
東北では日が沈むのが早いため、夕日の中を飛ぶアキアカネはよく見られる光景だという意見もある。しかし、三木露風は兵庫県出身なのだ。東北のことを持ち出して、アキアカネが赤とんぼだというのは無理があるだろう。そのため、夕方飛ぶことが多いギンヤンマが、夕日の影響で赤とんぼに見えたという意見も存在するのだ。
さらに兵庫県では、群れをなして空を飛ぶことが多いウスバキトンボが赤とんぼなのではないかという意見も根強い。下の動画はウスバキトンボを撮影したものだ。
ただし、ウスバキトンボは植物に垂れ下がるように止まることが多いとんぼなので、「止まっているよさおの先」の歌詞とは合わないと指摘されている。
なかなか「赤とんぼ」の歌詞にぴったりのとんぼは見つからないのである。そもそも、思い出の中から作られた曲なのだから、仕方ないのかもしれいない。
実際に見た複数の種類のとんぼのイメージが重なって、「赤とんぼ」の曲が生まれたともいわれている。今後も、赤とんぼの正体についての論争は続いていきそうだ。
雑学まとめ
赤とんぼというとんぼはいないという雑学をご紹介した。日本で一番ポピュラーな赤いとんぼであるアキアカネと、赤とんぼを同一視する人も多い。
言葉の意味を考えると一概に間違っているとはいえないが、童謡に登場する赤とんぼはアキアカネでない可能性が高いという。童謡の中の赤とんぼを特定したい人も多いが、空想の中にしか存在しないというのもロマンチックかもしれない。