魚は水の中で生活するもの。水の中で卵を産み、卵から孵化した瞬間からずっと水の中で暮らす生き物だと私は認識している。しかし、卵を産むためにわざわざ陸に上がってくる魚がいるというのだ。
その魚の名前は、「グルニオン」。
アメリカ西海岸に生息しており、産卵のときにはいっせいに陸に上がって、砂浜に卵を産みつけていくという不思議な魚だ。
今回の雑学記事では、砂浜を走り回る魚「グルニオン」を紹介するぞ!
【動物雑学】陸に上がって産卵する魚がいる
【雑学解説】「グルニオン」は、満潮時の波に乗って陸へ上がり産卵する
「グルニオン」は、アメリカ西海岸に生息している、体長は20cmほどのイワシの仲間である。グルニオンが産卵するのは水の中ではなく、なんと砂浜! つまり陸に上がって卵を産むのだ。
グルニオンが陸に上がってくるのは、「満月」か「新月」のころ。
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満月・新月のときの海は大潮となり、潮位が高い状態になる。グルニオンはこの大潮のときを選んで陸に上がるのだ。大潮の波にのれば、砂浜の高いところまでたどりつくことができるからだといわれている。
大潮を感じたグルニオンの群れは、いっせいに産卵の準備へ!
数匹のオスをひきつれ、大潮の波にのって砂浜にたどりついたメスは、ピチピチと体をうねらせて下半身で10cmほどの穴を掘る。その穴に体を半分埋めたような状態で卵を産むのだ。
そのあと、そのまわりを数匹のオスが囲んで精子をかけるのだが、これが陸の上でおこなわれるのだからビックリ…。そして、産卵が終わった群れは、また大潮にのって海へかえっていくのである。
なにより、大潮という自然の力を感じとり、その波を利用するところに生き物の神秘を感じる。
大潮にのって砂浜に上がってくるグルニオンの群れをとらえた動画だ。砂浜をピチピチと動き回る様子と、砂の中に体半分を埋めて産卵する様子を見ることができる。
グルニオンが陸に上がって産卵する理由とは?
海に住む魚であるグルニオンが、なぜわざわざ陸に上がって産卵するのだろうか。これはやはり、より多くの子孫を残すためである。
海の中で産卵すれば、外敵に食べられたり流されたりと、孵化まで残る卵はおそらく少ないのだろう。そこでグルニオンは大潮を利用して砂浜の高い位置へ。そして、その砂の中に産卵することで、卵を外敵から守っているのだ。
しかし、ここでふと疑問…。大潮じゃないときに卵からかえった稚魚は、どうやって海までたどりつくのだろう…。同じように砂浜で産卵するウミガメは、赤ちゃんが自分の手と足で海まで歩いていくのだが、魚であるグルニオンはそうはいかない。
興味をそそられ調べてみたら、実はグルニオンの卵には不思議な仕掛けがあるようなのだ。次の追加雑学で説明しよう。
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【追加雑学】グルニオンの不思議な卵
卵からかえる日数は魚の種類によっても違うが、グルニオンの卵は不思議なことに、大潮のタイミングで孵化するという。
産卵から約2週間後、次の大潮がくる。グルニオンの卵は、この時期には孵化する準備ができているそうだ。そして大潮がきて、卵が埋まっているところに波がやってくると、その海水の刺激がゴーサインとなり孵化するのだ。
たしかに、魚であるグルニオンは、大潮がくる前に孵化しても、海までたどりつくことができない。大潮の波がきたタイミングで孵化しなければ、砂浜で死んでしまうだけだ…。生まれる時期をコントロールできるのはすごい!
さらに驚くことに、同じ日に産まれた卵がすべて孵化するわけではない。その大潮で孵化しなかった卵は、孵化する準備ができているにもかかわらず、次の大潮がくる2週間後まで孵化せずに待っているのだという…。
卵から孵化した稚魚をねらう外敵も多い。一度に全部孵化して全滅する可能性もある。卵が時間差で孵化するのは、グルニオンがより多くの子孫を残すためなのだろう。
雑学まとめ
今回の雑学では、陸に上がって産卵する不思議な魚「グルニオン」について紹介した。
いっせいに陸に上がって、魚が砂浜を走る光景など想像もつかないが、ロサンゼルスのビーチには、その珍しい光景を見ようとたくさんの観光客が訪れるという。
どんな卵も時期がくれば孵化するものだと思っていた。しかし、この魚は海水にのって海へ出るために、大潮がくるまで孵化を待つ。グルニオンは地球のメカニズムに身を任せて生き残ってきた、なんとも不思議な魚だ。
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