スポーツマンには元気で明るいイメージがある。プレー中の真剣な表情もいいが、点が入ったときや良いプレーがとびだしたときの、爽やかな笑顔もまた、人を惹き付けてやまない。
どの競技でもそんな場面はみられるが、他競技よりもやたらと笑顔にあふれ、喜びを表す競技がある…バレーボールだ。
点を取っても取られてもハイタッチ! どんなに点数を離されていても、一点入ると逆転したかのようなテンションでガッツポーズ! 特に他競技を経験した人から見ると「なぜあんなに大げさに喜んでいるのだろう?」という違和感すら感じるようだ。
実は…このバレーボール特有の大げさな喜び方は、戦略のうちだった! 今回はそんなバレーボール選手たちの感情表現の雑学を紹介しよう。この事実を知っていれば、バレーボールを観戦するとき、また新しい視点でみることができるだろう。
【スポーツ雑学】バレーボールチームが大げさに喜ぶのは戦略
【雑学解説】バレーボールの試合で大げさに喜ぶことの心理的効果とは?
まずは2019年5月に行われたネーションズリーグ女子・日本代表とオランダの試合のハイライト動画を紹介しておこう。
この試合においても、どんな場面でも同様に、大きく万歳して喜んでいる選手たちが確認できる。
実は、バレーボールの選手たちは、理由もなく大げさに喜んでいるわけではない。試合に勝つための戦略として、オーバーアクションで喜んでいるのだ。これはある意味心理的戦略といっていい。
チーム全員で笑顔を交わし大きな声を出すことで、たとえ負けていても「気持ちを切り替える」作用や「テンションを上げる」効果が期待できる。つまり大げさに喜ぶことにより、チーム一丸となって逆境を跳ね返す狙いがあるのだ。
笑う門には福来るではないが、多少強引にでも、前向きになることが大事なのである。
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大げさに喜ぶことで相手の気持ちをかき乱す!
笑顔や大きな掛け声がもたらすポジティブな効果は、なんとなく想像がつく。しかしこの戦略は自チームへの効果ばかりではない。
大げさに喜ぶことで、相手を混乱させたりイライラさせたりする狙いもあるのだ! 負けているにもかかわらずニコニコしていると、優位なはずの相手は脅威に感じるものだという。
野球でもPL学園時代の桑田投手は、相手の取手二高が1点を入れるたび、まるで勝ったかのようなお祭り騒ぎで喜んでいるのをマウンドからみて戸惑い、甲子園で唯一の負けを喫したという話がある。
勝っている試合であれば尚更、大きな声や明るい雰囲気で相手を圧倒して、戦意喪失させることができるだろう。
そして、なぜバレボールでそのような戦略をとるのかというと、試合の流れが勝敗に大きく影響する競技だからに他ならない。
もちろん、他の競技にも試合の流れはある。しかしバレーボールやテニス、卓球のような競技は点数が入る間隔が短く、流れが変わると驚くほどあっという間に形勢が動くものだ。
バレーボールは心理戦を駆使して流れをつかむことが、非常に重要な競技なのである。
【追加雑学①】バレーボールの選手は喜び方も特訓する
バレーボールの選手たちは皆、ポジティブ思考を心がけて、戦略として大げさに喜ぶことはわかった。
しかし、はじめはこれがどうしても上手にできない選手もなかにはいる。どの選手も最初からあんなに、はじける笑顔で明るい声を出せるというわけではないのだ。
なんと、バレーボールの選手は「喜び方」の特訓もしているという。声やガッツポーズが小さいと監督から怒鳴られるのだ。「もっと喜べ!」…と。もともと声が低かったり小さい声の選手には、なかなかハードルのたかい特訓ではないだろうか…。
案の定、この「喜び方の特訓」に違和感を感じてやめてしまう選手も、残念ながらいるようだ。負け試合の理由を「声が小さいからだ!」といわれるなどすれば、根拠のない根性論をつきつけられているような気持ちになることもあるだろう。
しかし、チームを牽引するような喜び方とは、特訓で身につけなければいけないほど高度なものなのだ。気持ちは充分ポジティブであっても、それを表現し、周囲に影響を与えることができなければ戦略としては成り立たない。
良い効果を生み出す喜び方ができるのは、単なる根性論ではなく、立派な技術だということだ。
大げさに喜ぶのは疲れるからやめてみた結果…
実は日本代表のオリンピック選手たちでも、大げさに喜ぶことは正直疲れるらしい。プロともなればプレー自体が過酷なのに、さらに喜ぶことにも体力をつかえば、疲れるのも当然である。
元日本代表選手の大林素子さんは現役時代、喜ぶのが疲れるので、一度試しにチーム全体でやめてみたそうだ。点が入っても素晴らしいレシーブができても、喜ばずにクールに試合をしたという。それもそれで想像するとおもしろいが…。
その結果、チームが盛り上がらず、やはり良い試合ができなかったという。バレーボールの試合において、得点するたびに笑顔で駆け寄り、輪になって喜ぶことは、体力を消耗するだけの価値があるのだ。だからこそ、伝統的につづいているともいえる。
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【追加雑学②】バレーボールと他の競技との比較
「バレーボールチームはなぜあんなに大げさに喜ぶのか」という疑問は、やはり他競技との比較からくるものだろう。いくつか代表的なスポーツを例に考えてみよう。
サッカーや野球では、点が入るとバレーボールと同様に喜んでいる。サッカーなんて派手なパフォーマンスをするぐらいだ。それなのに大げさだと思われないのは、限られた時間やアウト数の中でもぎとる1点の重みが、歓喜にふさわしいと感じるからだろう。
それでは比較的早いペースで点が入るバスケットボールはどうだろう? バスケットボールの試合では、1点入るごとに抱き合って喜んでいたら、ボールを奪われてあっという間にゴール下に運ばれてしまう。
単純にその都度喜ぶひまがない。だからバスケ選手はクールにみえるともいえる。
バレーボールは25点を先にとったほうが勝ちだ。時間ではなく点数で決着がつくという性質からも、1点を取るごとに自分を鼓舞したり、そのたび相手にプレッシャーを与えることは重要だろう。
これはテニスや卓球にも同じことがいえ、最近は派手なガッツポーズをする選手が増えてきた。
ガッツポーズは失礼?バレーボールではこれも戦略のうち
バレーボールの真逆で、喜びの表現を禁じている競技もある。実は、剣道でガッツポーズをすると即失格となる。武道の世界は礼儀を重んじるもの。ガッツポーズは「相手に対して礼を失する」とみなされるのだ。
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この「ガッツポーズは相手を不快にさせる」という解釈からも、バレーボールにおいては心理的優位に立てる戦略として役立つことがわかる。他競技からすれば「いちいち大げさに喜ばなくても」と思われがちだが、それぐらいで丁度良いのである。
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雑学まとめ
バレーボールについての雑学をご紹介してきた。バレーボールの試合で、選手たちが大げさに喜ぶ様子を、違和感をもってみる人も中にはいる。しかしあの特殊な喜び方が、バレーボールでは重要な、試合の流れをつかむためだといわれれば、納得がいく。
また、大差で負けていても、1点入るごとにビックスマイルで喜ぶ様子は「諦めない気持ち」を感じさせる。これはバレーボールの醍醐味といえるだろう。
オリンピックなどで観戦する機会があれば、是非選手たちの喜び方にも注目していただきたい。笑顔や声掛けひとつで流れを引き寄せる瞬間を、きっと感じられるだろう。これであなたもバレーボール通だ!
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