海外旅行先として日本人からは特に人気の台湾。距離も近くて気軽に行けるし、文化も似ていて、ご飯も美味い! そりゃあ人気も出るわけだ。
そして、台湾のなかでも台北市(たいほくし)は中心都市で、台湾観光ならここを訪れれば、まずハズレはない。
さすが台湾の首都! …と、思いきや、実は「台北市は台湾の首都ではない」という話があるというぞ? なんでも、台湾の本当の首都は、中国大陸にある南京市だというのだ。
は…? 中国大陸にあるって…それ台湾じゃないだろ…と思わされるところだが、この事実には台湾と中国の歴史が複雑に絡み合ってくる。今回はそんななんとも興味深い、台湾の首都の雑学に迫ってみよう!
【世界雑学】台湾の首都は台北市ではなかった?
【雑学解説】台湾の首都は南京市?中国大陸の都市なのになぜ?
首都の定義は一般的に、国家の最高指導者の拠点となる中央政府がある都市のことだ。要するに首都は国の政治の中心。首都を中心にして国が動いていくことになる。
この定義からいえば、台湾の首都は間違いなく台北市である。地図で見るとこの辺。
台北市には中央政府にあたる「総統府」が置かれているし、大使館はないものの、それに相当する「交流協会」もある。紛れもなく台北市を中心として、台湾は動いているのだ。
ではなぜ、「台湾の首都は南京市だ」などという話が出てくるんだ?
地図を見てみればわかるように、南京市は中国大陸にあって、首都どころか台湾のなかにすらないじゃないか。
この「台湾の首都は南京市」といわれている理由を知るためには、少し歴史をさかのぼって、現在の台湾の成り立ちを知る必要がある。
「中華民国」と「中華人民共和国」に分かれた中国
今ではすっかり台湾の名で親しまれているが、台湾には「中華民国」という正式名称がある。
ん…? 中国の正式名称は「中華人民共和国」だよね? なんかややこしくない? と思わされる。まったくそのとおりで、台湾と中国のあいだにはとってもややこしい歴史があるのだ。
中華民国は中国大陸において、1912年の「辛亥(しんがい)革命」によって成立した国家で、その政権は革命家・孫文が創設した「中国国民党(国民党)」が握っていた。そしてこの中華民国の首都は1931年以来、南京市と定められている。
しかし国内にはもうひとつの大きな政党「中国共産党(共産党)」が存在し、ふたつの政党は兼ねてから対立を繰り返してきた。
この争いの内容がまたややこしいのだが、かいつまんでいうと「ソ連や東ヨーロッパを味方に付けるか、アメリカや西ヨーロッパを味方に付けるか」で意見が割れていた感じだ。
こういった経緯から第二次世界大戦後に両党の内戦が起こり、1949年にこの争いに敗れた国民党は、大陸から追い出されることに。そして支配権を台湾島とその周辺に限定されてしまったために、臨時首都として台北市を機能させることにしたのだ。
一方、中国大陸では共産党による「中華人民共和国」が成立。こうして同じ中国なのに国家がふたつあるような奇妙な状態になってしまったのである。
よくニュースなどに出てくる「2つの中国」問題とは、上記の国民党(中華民国)と共産党(中華人民共和国)の対立で生まれたものだ。
そう、もうお気付きのように、台北市はあくまで臨時で首都になったわけで、憲法で正式に首都に制定されたわけではない。そのまま定義がうやむやな状態で、70年ほどの年月が過ぎているわけだ。
台湾の首都はやっぱり台北市!
…で、憲法で定められていないなら、台北市は今でも臨時首都なのか? といわれると、それもやっぱり違う。
当時は国民党も「いずれは大陸に戻るぞ」と思って、台北市をあくまで臨時首都としたのかもしれないが、今となっては、もはや台湾の人たちもほとんど「本当の首都は南京市」なんて思っていない。
また2013年12月には台湾の立法院内政委員会にて、内務大臣の李鴻源(リーホンユァン)氏が「中華民国の首都はどこか」と質問され、台北市だと返答している。理由は「憲法上で制定されていなくても、結局は中央政府の所在地が首都だから」だとか。
要するにやっぱり現在の台湾の首都は台北市で、「憲法で制定されていないからまだ南京市のままだ」というのは屁理屈のようなものである。
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【追加雑学①】台湾の首都・台北市はどんな街?
さて、台湾の首都が台北市だとはっきりしたところで、いったいどんな街なのか、観光地を中心にその発展度合いもチェックしておこう。首都が移されてからわずかなあいだに、独自の都市が築かれていることがわかるぞ!
士林夜市(シーリンイエシー)
台湾では夜になると、日本の縁日のように出店が立ち並ぶ「夜市」が行われる。そのなかでも最大規模にあたるのが、台北市の士林夜市である。
出店が出ているのは夕方~深夜1時ごろまで。この時間帯の士林夜市は絶好の食べ歩きスポットになる! 旅行といえばグルメ。グルメといえば旅行。台湾に行くなら絶対に訪れたい場所ではないか。
ただし人がめちゃくちゃ多いので、財布などの管理には気をつけて。特に治安が悪いってこともないんだけどね。
以下の動画でも紹介されているように、1,000円あれば十分に食べ歩きを堪能できる!
士林夜市は地下鉄「劍潭(けんたん)駅」で下車、北へ徒歩すぐのところにある。台湾に行ったらぜひ行きたい!
国立故宮博物院(グオリーグーゴンボーウーユエン)
国立故宮博物院は中国の歴代王朝の皇帝たちが集めたという、国宝のコレクションが展示されている博物館で、かなりの歴史的価値を誇る。
収蔵されている宝物は約65万点。展示されているものはその一部に限るが、それでも1日ではとても回り切れない量の展示物が並んでいる。
美術品、工芸品に興味のある人はもちろんだが、興味のない人でもここに展示された品々を見れば、歴史の重さに圧倒されるはずだ!
以下に国立故宮博物院の一部を映した動画を紹介しておこう。なかでも有名な「翠玉白菜」は、一説に第11代清朝皇帝・光緒帝の妻・瑾妃(きんひ)が嫁入りする際に持参した宝物だといわれている。
国立故宮博物院は都市部からは少し外れているため、行くなら地下鉄「士林駅」でタクシーを拾って向かうのがおすすめである。
台北101(タイペイイーリンイー)
台北101はその名の通り101階建ての超高層ビルで、その高さは508mにも及ぶ。現在はドバイの「ブルジュ・ハリファ」やスカイツリーなどに抜かれているが、2004~2010年までは世界一高い建物だった!
特筆すべきはそのエレベーターの速度で、1階から89階まで、なんと37秒で到達してしまう。91階の展望台からの景色は絶景。台北市を一望できるという意味では、ここもまた外せない観光スポットである。
以下の動画のように大晦日にはカウントダウンと花火の催しがある。これは想像を絶する迫力だ!
地下鉄「台北101世貿駅」で下車すれば地下の入り口にも通じているので、アクセスもバッチリだ!
龍山寺(ロンシャンスー)
龍山寺は300年以上の歴史をもつ、台湾最古の寺院。ご本尊は観世音菩薩で、第二次世界大戦時の空爆で本殿が焼失した際もこの像だけは無傷だったため、土地を守ってくれる仏様として台湾の人たちに親しまれている。
そのほかにも商売・恋愛・学業・健康など、さまざまな神様が祀られているため、目的を選ばず参拝できる、ある意味便利なパワースポットである。
また龍山寺付近は下町風情あふれる町並みになっており、参拝ついでにそのローカル感に浸るのもおすすめだ。
以下の動画では龍山寺での参拝の仕方が紹介されている。最初に売店で買った長~い線香に火を点けて、最後まで持ったまま参拝するのが独特でおもしろい。
アクセスも地下鉄「龍山寺駅」があるので、わかりやすいし行きやすい! なんし日本人としてはこういう仏教の施設はありがたく感じるもので…台湾に行くならぜひ訪れてみたい場所である。
【追加雑学②】南アフリカには首都が3つもある!?
2010年にサッカーのワールドカップが開催され、日本でも名前を知られるようになった南アフリカ共和国。南アフリカで有名な都市といえばヨハネスブルグであり、もちろん首都もヨハネスブルグ…
…ではない。
この国の首都の形態はかなり特殊で、首都と呼ばれる都市がなんと3つもあるのだ! なぜそんなヘンテコな事態になっているかというと、いわゆる三権分立の行政府・立法府・司法府のそれぞれについて首都があるからである。
それぞれ…
- 行政府の首都…プレトリア
- 立法府の首都…ケープタウン
- 司法府の首都…ブルームフォンテーン
といった感じだ。実にややこしい…。きっと公務員が業務で行政府・立法府・司法府を回るときはかなり面倒くさいだろう…と余計な心配をしてしまうぞ。
ちなみに、日本を始めとする各国の大使館は行政府の首都・プレトリアに設置されている。
…あれ? ヨハネスブルグどこいったよ!
【追加雑学③】日本にも臨時首都があった!
台北市が台湾の臨時首都であると説明したが、実は近代の日本でも東京ではない都市が臨時首都になったことがある。
なるほど…首都にふさわしい都市といえば、やはり京都だろう…と思いきや、臨時的に首都になったのは広島である。
…なんで広島?
これは、1894年に起きた日清戦争を指揮するために、陸海軍を統率する機関である大本営が広島城内に設置されたのがきっかけである。この時期には明治天皇も大本営に移って日本軍の指揮を執り、国会も広島で開催されていたのだ。
そのため、法律による正式な臨時首都ではないものの、広島が実質的な首都機能を有していたのである。日清戦争後の1896年に大本営が解散されるまでは、天皇も広島で活動していたので、広島城が実質的な皇居だったといえる。
広島の方々は「昔は首都だったんだよ!」とドヤれるぞ!
雑学まとめ
台湾の都市といえば台北市がまっ先に思い浮かぶだけに、今回の雑学に驚いた方も多いのではないだろうか。
しかし台湾の人たちからすれば、首都を移したことにも苦い思い出があるわけだから、あまりおもしろがって現地人に話すのはよくないのかも。
とにかく今回の雑学で台湾の歴史に興味をもっていただき、いわゆる「2つの中国問題」などを勉強するきっかけになれば幸いである。