ものを束ねる際に便利な「輪ゴム」。普段、あまり目立つことはないが、とっさのときにないと困る日用品だ。
ところで今や身近になったこのアイテムが、どのようにして誕生したのか、いつの時代から使われていたのか、気にならないだろうか…。なんでも国産輪ゴムの第一号は、なんと自転車のチューブで作られていたというのだ!
今回はそんな国産輪ゴムに関するトリビアをお届けしよう。
【生活雑学】明治時代の国産輪ゴムは自転車用チューブで出来ていた
【雑学解説】1917年に国産輪ゴムの第1号が初めて開発された
輪ゴムが国内で生産されるようになったのは、20世紀に入ってからである。国内で初めて開発したのは、大阪西成区に本社を置く「共和」。現在も輪ゴムの国内シェアNo.1を誇っている。
ご家庭にある輪ゴムを一度確認していただきたい。きっと「オーバンド」という商品名の輪ゴムをお持ちの方が多いだろう。その商品こそ、共和の看板商品である。
以下の動画は、同社の工場の内部を映したものだ。「ああ、あの商品ね!」と思い出す方もいるはずだ。
日本で初めて輪ゴムを開発した共和。1917年、創業者の西島廣蔵(ひろぞう)氏が、自転車用のチューブを薄く切って国産第1号の輪ゴムを開発した。
それをもとに1923年、製造されたのが、現在国内シェアNO.1を占める「オーバンド」だった。この輪ゴムは、日本銀行内で紙幣を束ねる目的で開発されたというが、詳しいことは明らかになっていない。
ちなみにパッケージデザインは今竹七郎という人物が担当したもので、他社の商品のデザインにも強い影響を与え、広く模倣されたといわれる。それだけオーバンドの登場は印象に残るものだったのだ。
1日1億本使われるという国産の輪ゴムには、自転車のチューブから生まれたという意外な歴史が隠されていたのである。
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【追加雑学】ヨーロッパ人として初めてゴム用品を見たのはコロンブス?
さて、ここでゴムの歴史に分け入ってみよう。なんと、ヨーロッパ人として初めてゴム用品を目にしたのは、あのコロンブスだといわれているのだ。
人類が最初にゴムを使用した歴史は、3000年前の中南米一帯で栄えた「メソアメリカ文明」とされている。
メソアメリカ文明とは、この地域一帯に住んでいた、アステカ、オルメク、マヤ族が築いた文明の総称だ。とりわけ、アメリカ大陸で最古の文明である「オルメカ」の遺跡からは、天然ゴムを原料とするボールが発見されている。
そのボールは少なくとも、紀元前1000~1600年以前のものと考えられており、この地域では、ゴム製のボールを使った球技が盛んに行われたことがわかっているのだ。
15世紀末、この南アメリカ大陸にヨーロッパ人が侵略してくる。そう、スペイン人のコロンブスが、軍を率いてアメリカ大陸へ上陸したのだ。
そして彼らはこの地域にあった品物を強奪していくなかで、ゴムボールを発見したといわれる。以後、ゴムボールはヨーロッパへ持ち帰られ、上流階級の間で珍品として重宝されるようになったという。
このことから、ヨーロッパ人で初めてゴム製の物を目にしたのは、コロンブスだったといわれているのだ。ちなみに文明の名前になっていたオルメカは、現地の言葉で「ゴムの国の人々」を意味する。
雑学まとめ
あの控えめな輪ゴムは、意外にも自転車用のチューブから開発されたものだった。西島氏のその発想にまず驚かされる。
またゴムの歴史をひも解くと、はるか紀元前までさかのぼるというのも興味深い。太古の人々がゴムボールを使って遊んでいたとは…。あの小さな日用品には、人類とゴムの果てしない歴史がつまっているのである。