フランスの首都・パリに建つエッフェル塔。印象的なフォルムで、パリを象徴する建造物の一つだ。
今でこそパリ市民はもちろん、旅行客にも愛されるこの塔だが、建築当初は一部の人々に嫌われていたこともあった。その中でも『女の一生』などの作品で知られるギ・ド・モーパッサンは特にエッフェル塔を嫌っていたとのこと。
あまりにも嫌いすぎて、彼は毎日エッフェル塔に通っていたのだという! …意味がわからない? 筆者も同意見だ…。
今回はモーパッサンのエッフェル塔嫌いと、それに関する建築当初のエッフェル塔事情について解説していこう。
【歴史雑学】モーパッサンはエッフェル塔嫌いだったが、エッフェル塔の食堂で食事をするのが大好きだった。
【雑学解説】エッフェル塔の建設に反対した人物は意外に多い。
一体モーパッサンのエッフェル塔嫌いはどのようなものだったのかというと、塔の建設が行われようとしていた頃の話をする必要がある。
エッフェル塔は、1889年に行われたパリ万博の目玉建造物として、建築家のギュスターヴ・エッフェルによって建てられた高さ300mの鉄の塔だ。
当時は産業革命の後、あらゆる国が技術を駆使して高層の塔や建築物を建てたが、それらでも高くて150m程度だった。つまり、エッフェル塔は前代未聞の高さだったわけだ。
建設に着工した年が1887年。現代のような重機などがなかった時代に、たったの2年で300mの塔を建てたというのは驚異的なスピードである。
しかしエッフェル塔は歓迎される声が多い中、建築に反対する人物たちも存在し、賛否両論であった。主に当時パリで活躍していた芸術家や作家たちが「パリの景観を壊す」という理由で猛反対し、署名活動などの抗議を行い、エッフェルと対立した。
ことわざにもなったモーパッサンのエッフェル塔嫌い
反対運動のメンバーの中には、かのモーパッサンももちろん含まれている。誰よりもエッフェル塔を憎み、毛嫌いしていたことで有名だ。
どれくらい憎んでいたかというと、「忌々しいエッフェル塔がない景色を見れるから」という理由で、エッフェル塔の1階にあるレストランへ行き、食事をするくらいである。
もはや好きなのか嫌いなのか、謎の行動である…塔への入場料もしばらくは、契約上エッフェルの収益となっていたのに…。
そのモーパッサンの様子から、さらには「エッフェル塔が嫌いな奴は、エッフェル塔に行け」ということわざまで誕生したという。彼の執念は相当なものだったのだろう。
反対運動はあっさりとエッフェルたちに覆され、解散したようだが、それでもモーパッサンだけはひとりでずっと反対をし続けていたようだ。
しかし、パリ万博から3年後の1893年に、モーパッサンは若い頃から患っていた梅毒が原因で、43歳の若さでこの世を去ってしまった。きっと亡くなるまでずっとエッフェル塔を毛嫌いし続けていたのではないだろうか。
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【追加雑学】エッフェル塔を嫌う人がいれば、エッフェル塔と結婚をした人もいる。
さて、執念深くエッフェル塔を憎んだモーパッサンがいれば、逆にエッフェル塔のことを愛する人ももちろんいる。なんでも、好きすぎて結婚してしまったぐらいだ!
塔と結婚なんてできるの? …と、思う方もいるだろうが、形式上は結婚が可能なのだそう。
エッフェル塔と結婚したのは、アメリカ人のエリカさんという女性だ。彼女は「対物性愛」という“モノ”に対して恋愛感情を抱く価値観をもっている。彼女は2004年にエッフェル塔を初めて訪れた際に、塔に強い恋愛感情を抱いた。
それから3年という交際期間を経て正式な手続きのもと、2007年にエッフェル塔の妻となり、名前も「エリカ・ラ・トゥール・エッフェル」に改名したのである。以下の動画に登場する女性が、エリカさんご本人だ。
英語なので何を喋っているかは聞き取れないが、エッフェル塔にキスをしたり、抱きしめる姿から、どれだけエッフェル塔を愛しているかがわかる。
コートの襟にはエッフェル塔のブローチ、首にはエッフェル塔のネックレス、胸元にはおそらくエッフェル塔のタトゥーを入れているエリカさん。彼女はこの塔にすべてを捧げた女性なのだ。
かつては嫌われたエッフェル塔も、このように愛してくれる人がいるというのは、きっと幸せなことだろう。
雑学まとめ
モーパッサンはエッフェル塔を見たくないがために、エッフェル塔のレストランで食事をしていたというトリビアを紹介した。毒をもって毒を制すというのは、こういうことを言うのだろうか…?
エッフェル塔は本来、パリ万博の終了後には解体される予定だったが、その塔の高さを利用して、軍隊が電波塔として再利用する案が浮上し、解体の危機を免れた。以降、パリの象徴として、現在も電波塔の役割を果たしながら堂々と建っている。
この様子をモーパッサンは一体どのように感じているのだろう? まだ憎んでいるのか、はたまたパリに馴染んだエッフェル塔を歓迎しているのだろうか?