日本の歴史をひも解くとき、「卑弥呼」「邪馬台国」という言葉が思い浮かぶ人もいるのではないだろうか? とくに邪馬台国の女王「卑弥呼」については、研究者のあいだでもいまだに謎が多く、さまざまな論争が行われている。
神様のように崇められた話や、地域を発展させた話が残っているため、並々ならぬ人物であったことは間違いなさそうだ。
ここでは、「卑弥呼」という漢字に秘められた意味に注目して、女王・卑弥呼と名付けられた歴史と、当時の日本についての雑学を読み解いていこう!
【歴史雑学】卑弥呼に「卑」の漢字が使われている理由
【雑学解説】卑弥呼の「卑」の漢字が持つ意味
「卑・弥・呼」
今回、漢字三文字のなかで一番に気にしたいのが「卑」という漢字である。広辞苑第七版(岩波書店出版)によるとこうある。
- 身分・地位が低い。
- いやしい。下品。
- へりくだる。
- 自分をへりくだっていう語。
- 土地がひくい。
どの意味をとっても、明らかに一国の女王の呼び名にはふさわしくない漢字だ。なぜ、このような意味をもつ漢字が彼女に使われているのか? それは、卑弥呼の記録が中国の書物にある、ということがヒントだ。その書物の名は「魏志倭人伝」という。
卑弥呼を歴史に残した「魏志倭人伝」とはなにか
「魏志倭人伝」とはなにか?
それは中国の魏(ぎ)の時代の歴史書である。魏は西暦220~260年頃に存在した国で、当時の歴史をまとめた公的な書物「三国志 魏志」がある。諸葛孔明や曹操などの物語「三国志演技」で有名なあの時代だ。
その書物のなかに、日本について記された世界でもっとも古い史料「魏志倭人伝」がある。「魏志倭人伝」のなかで、当時の中国人が「卑弥呼」と書いたのだ。
どうして卑弥呼に「卑」?
当時の中国は、周辺国よりも非常に高い文明を誇っていた。そのため中国人は、日本も含め他国は自分たちより劣っている、という考え方を持っていた。
卑弥呼という漢字は、当時の日本人の発する「ひみこ」という音に中国人が漢字を当てはめたといわれている。
つまり、当時の中国人が「ひみこ」という音に、どの漢字を当てはめるか考えた結果、「自分たちより文明の低い国の女王」という意味を含めて「卑」という一文字を選んだのだ。ちなみに「弥呼」については、単純な当て字の可能性があるようだ。
あくまでの数ある学説の一つであるが、東アジア諸国の時代背景を考慮するとその可能性は否定できない。
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【追加雑学】「魏志倭人伝」が語る卑弥呼
「魏志倭人伝」の始まりはこうである。
『倭人在帶方東南大海之中 依山㠀為國邑 舊百餘國 漢時有朝見者 今使譯所通三十國 從郡至倭 循海岸水行 歴韓国 乍南乍東 到其北岸狗邪韓國 七千餘里』
中国から東南へ約七千里、韓国のその先、海の向こうに倭(日本)がある。
と記されている。そしてこうある。
『其國本亦以男子為王 住七八十年 倭國亂相攻伐歴年 乃共立一女子為王 名日卑弥呼 事鬼道能惑衆 年已長大 無夫婿 有男弟 佐治國』
男性が王となっていたが、国の中で戦が長い間つづき、国の中が乱れたので、女王となったのが卑弥呼であった。卑弥呼は占い・呪術で人を治め、高齢で夫はおらず弟があり国を治めた。
と、ある。
女王となった卑弥呼は、魏の王に使者と貢物と送ったことで、魏王から倭国の王として認められた。その際に、宝物と金印(王としてのしるしである黄金の印鑑)が送られたのだった。
当時、大国である中国に認められることには、一国の王として重要な意味があった。それは、王としての資質を広く証明することと、自分のバックに大国である中国がいることを主張することで、ライバル国をけん制できたのだ。
あなどるなかれ古代日本
さてさて、「魏志倭人伝」を通して日本国内だけではなく、中国との国際状況もみえてきただろう。当時の日本は、たしかに周辺国に比べて発展途上だった。だが、現代の私たちからみても誇れるところもある!
それは、普段から他国と交易をしていたということだ。
日本は当時、頻繁に国際交流を行える開かれた国であったのだ。日本が、すでに外国人と交流するための語学や、海を渡るための高度な航海術と造船技術を備えていたこともわかる。
また当時の日本国内の記述においては、衣服・住居・礼儀作法・身分制度などの日本独自の文化がすでに築かれていたのも感慨深い。
雑学まとめ
卑弥呼と卑弥呼の漢字に関する雑学を紹介させてもらったが、いかがだっただろうか? 卑弥呼の「卑」一文字から始まり、当時の日本を外から内から覗くこととなった。まさか中国と日本の力関係や考え方が、名前の付け方に関係しているとは。
名前からでもこんなに深い物事を知ることができるのは、歴史を学ぶ醍醐味のようにも思う。歴史はすでに過去のことではあるが、自分のルーツを知ることに興味を引かれないだろうか。
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