長い長い地球の歴史のなかで、もう二度と見られない生物がたくさんいる。
生存競争に負けた種、環境の変化についていけなかった種、そこには様々な理由がある。種の存続が生命のひとつの目的であるならば、絶滅は言ってしまえば「敗北」だ。
今回は、そんな生存争いに敗北を喫してしまった動物たちについての雑学をご紹介したい。
【動物雑学】悲しい理由で絶滅した動物たち
【雑学解説】悲しき絶滅動物たちのエピソード
ここでは悲しい末路をたどった動物たちを3種ご紹介する。
優しすぎて絶滅「ステラーカイギュウ」
ステラーカイギュウはかつて北太平洋のベーリング海に生息していた大型の哺乳類だ。ジュゴンの仲間であるが、体長7〜9メートルと、3メートルほどの大きさのジュゴンと比べても相当に大きい体をもっていたようだ。
そう聞くと怖そうだが、とても温厚な動物だったよう。まさに「気は優しく、力持ち」な動物だ。潜水ができないステラーカイギュウは、群れをつくってぷかぷかと海に浮き、昆布を食べながら穏やかに暮らしていた。
そんなある日、ステラーカイギュウが生息していた近くの島に人間たちが漂流してきた。第2次カムチャッカ探検隊である。
遭難した彼らは偶然にもステラーカイギュウを発見し、捕獲した。その肉はとても美味しく保存がきき、厳しい状況に置かれていた彼らにとってはまさに神の思し召しだった。
肉が美味しいだけではない。ステラーカイギュウの脂肪は上質な燃料となり、皮も靴やベルトに、ミルクはバターに加工された。
そしてなにより、ステラーカイギュウは警戒心が薄く、捕獲しやすかったのだ。
人間たちにとっては、まさに金のなる木である。
カムチャッカ探検隊はステラーカイギュウのおかげでなんとか帰還でき、漂流の先に出会ったこの動物たちについて報告をした。そしてその後、ステラーカイギュウの話を聞きつけたハンターたちによる乱獲が始まる。
警戒心をもたず、動きも鈍いステラーカイギュウを捕獲することは、人間たちにとって容易なことだった。抵抗することなく傷つけられたステラーカイギュウは、持ち運ぶのが難しいという理由で海上に放置された。岸に打ち上げられるのを待って捕獲しようという作戦である。
だが、傷つけられた個体すべてが岸に着くわけではなく、5分の4は「ただ殺されただけ」という無残な最期を迎えた。
さらに悲しいことに、ステラーカイギュウには仲間を助けようとするとても優しい習性があったのだ。
人間たちに仲間が傷つけられると、逃げるのではなく助けようと集まってくる。特にメスが手にかけられると何頭ものオスがかばいにきたそうだ。
この優しい習性さえも人間たちにとっては好都合だった。一頭を殺せば自ら次の獲物がやってくる。芋づる式に次から次に乱獲され、みるみる個体数が減っていった。
1768年に島へ訪れた者が残した「まだカイギュウが2.3頭残っていたので、殺した」という記録を最後にステラーカイギュウの姿は地球から消えたとされている。
ステラーカイギュウの発見から、わずか27年後のことであった。
人間に発見されてからわずか30年足らずで絶滅に至ったステラーカイギュウ。仲間をかばう優しい習性ゆえに次々と殺されていった様は悲劇的だ。
人間社会でも「優しさは美徳」とされているが、激しい生存争いが繰り広げられているこの世界には、優しいだけでは生き残れない残酷な面もあるのだ…。
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多すぎて絶滅「リョコウバト」
リョコウバトは北アメリカに生息していた鳩の仲間である。
非常にたくさんの個体数がいたことで知られ、鳥類のなかでは史上最大の個体数だといわれている。その数なんと、50億羽。北アメリカの鳥類のおよそ4分の1を占めていたという。
とても美味しい肉を有していたリョコウバトはアメリカに移住してきた白人ハンターたちの格好の獲物となり、17世紀、乱獲の歴史が始まった。
大量にいた個体はハンター心をくすぐったのか、「ハト撃ち」はいつしかスポーツのような扱いになり、もはや獲ることが目的になっていく。
乱獲に次ぐ乱獲の結果、みるみる数を減らしていったリョコウバト。
数の割に繁殖能力が弱い彼らは、右肩下がりにどんどん減っていった。ようやく保護が試みられても密漁は減ることはなく、1906年にハンターに撃ち落とされた一匹を最後に野生のリョコウバトはとうとう絶滅した。
その後、飼育下で生き残った個体もいたが、1914年に最後のリョコウバト、「マーサ」が老衰で死亡し、完全に姿を消すこととなった。
その死から100年経った現在、現存するDNAを使ったリョコウバトのクローンを作る研究が進められているのだ。
人間の手で奪った命を人間の手で復活させる…技術の発展は喜ばしいことであるが、どういうことだか手放しには喜べない。スポーツ感覚で撃ち落とされていった彼らの命を思うと、人間の身勝手さ・業の深さが身にしみる。
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警戒心が無さすぎて絶滅「オオウミガラス」
ペンギンのようなかわいらしい姿をしたオオウミガラス。
北極圏で群れをつくり生息していたオオウミガラスは、肉や脂肪、羽毛を使用するために8世紀ごろから人間により捕獲されてきた。
彼らは人間に対する警戒心が全くなく、それどころか好奇心が強かったため、自ら人間たちに寄っていった。人間からすればお金が自ら寄ってくるような状況である。
1534年にはフランスの探検家が1日で1000羽もの個体を捕獲するなど乱獲が続けられ、個体は減少の一途を辿っていった。
個体が少なくなると、その市場価値は上がる。次第にオオウミガラスは高値で取引されるようになり、ハンターたちはますます躍起になって捕獲に走るようになる。
そして1844年。生き残った最後のオオウミガラスは卵を温めている最中に人間に襲われる。
オスとメスの夫婦であったが、ハンターは迷うことなくオスを撲殺。その後卵を守ろうとしたメスを絞め殺した。残された卵は割れてしまったという。
これを最後にオオウミガラスは地球上から姿を消してしまった。
なんとも悲しい最期である。好奇心を持ってよちよちと歩いてくる姿はきっとかわいらしいものだっただろう。
余談だが、最後のオオウミガラスを殺したハンターたちは、極悪人としてその名を受け継がれているという。彼らの行いが許されなかったことだけがせめてもの救いである。
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雑学まとめ
今回の雑学記事でご紹介した3種。
どの動物も、「おのれ人間っ…!」と思わずつぶやいてしまうような、とても悲しい種の終わりかたであった。
人間のもつ力は生物の生態系を簡単に壊すことのできる恐ろしいものである。
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