私はウナギ屋に恨みがある。近所のウナギ屋のおっちゃんが大きなうちわでバタバタあおぎ、ウナギの香りをふり撒いているからだ。大好きなのに高価で食べられない。こんなに恨みがましいことがあるものか。
そもそも、技術が進歩した現代社会に古典的なうちわが使われる理由はなんだろう? 絶対秘密があるはずだ! ということで、今回の雑学ではウナギを焼くときにうちわであおぐ理由に迫ってみた。
【食べ物雑学】ウナギを焼くときにうちわであおぐ理由とは?
【雑学解説】ウナギを焼くにはうちわの風力が一番!
ウナギの醍醐味は、ほろほろフワッと柔らかい身の部分と、サクッと香ばしい皮の部分を同時に楽しむことができるところ。この「フワッ」と「サクッ」を作り上げるために重要なのが「火の通りを均一にして焼き上げること」なのだ。
しかし、ただ火であぶるだけでは均一に火を通すことはできない。家のコンロでフライパンを温めてみれば分かるが、端っこよりも中心部分のほうが温度が高くなりやすい。これと同じことが、ウナギを焼くときにも起こるのだ。
火の当たり具合がまだらになってしまうと、身の部分がべちゃっとなってしまったり、焼きすぎて焦げてしまったりする。これを防ぐために登場するのが「うちわ」なのだ。
うちわであおぐことで火柱が散り、火の粉が飛ぶ。これを絶え間なく繰り返すことによって、ウナギにまんべんなく火を通していくのだ。
特にうちわが大活躍するのは炭火焼きのとき。炭火の様子を職人の目で捉え、長年の勘と経験を頼りにうちわであおいで調整する。脂の落ち具合や、舞い上がった燻の加減まで考慮するというから驚きである。
この繊細な作業を機械で行おうとしても、完全には再現できないらしい。美味しいウナギを食べるためには、人の手とうちわが必要不可欠なのだ。
…ウナギ屋のおっちゃん、恨んでるとか言って本当にごめんなさい!!
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【追加雑学①】ウナギ焼き職人のうちわ捌き【動画】
美味しいウナギが出来上がるためには欠かせない「うちわであおぐ」という技術。なんと、東京の『鰻 渋谷松川』さんが動画を公開していた!
ウナギ屋ではなかなかお目にかかれない貴重な映像をさっそくご覧いただこう! うちわであおいでいる部分は1分20秒あたりから。
極秘じゃないの!? と焦ってしまうほどの素晴らしい包丁・うちわ捌き。公開してるなんてかなりの太っ腹である。いやむしろ「盗めるものなら盗んでみな!」ということなのかもしれない。
簡単にあおいでいるように見えるが、よく観察すると、横あおぎ・縦あおぎを組み合わせていることがわかる。また、うちわの位置を微妙に移動させながら、全体に熱が行き渡るよう調整しているのだ。相当なテクニックがいることだろう。
『鰻 渋谷松川』は創業60年以上の老舗だ。長年の歴史とウナギへのこだわりを強く感じる。渋谷へ足を運んだ際は、ぜひ立ち寄ってもらいたい。大ファンになること間違いなしである。
【追加雑学②】ウナギを焼くのに最適なうちわがある!
いろいろなウナギ屋の写真を見ていて、あることに気づいた。ズバリ、ウナギを焼く時に使う「うちわの形」である。
私たちが普段使っているうちわは、丸いタイプが多い。夏祭りやイベントで無料配布されているものも、このタイプが多いように思う。それに比べて、ウナギ屋で使用されているうちわは四角いタイプが多いのだ。
ウナギ屋が使う四角いタイプのうちわは「渋うちわ」と呼ばれていて、柿渋を表面に塗った丈夫な造りになっている。使うたび手に馴染み、耐水性にも優れているため、昔から火をおこすときなどに使われたそうだ。
そして「渋うちわ」は面の形が四角いため、端まで均一に風を送ることができる。これにより、ウナギの美味しさを引き出す「火の通りを均一にする」という技術がより効果的になるというわけだ。
「渋うちわ」を取り扱っている『鼠屋ちゅう吉』では、1本あたりの値段は3000円~4000円ほど。伝統工芸品に近い存在になりつつあり、生産者も減っていることから希少価値が上がっているようだ。
おいしいウナギのためにも、これからも生産され続けてほしいものである。
ウナギとうちわの雑学まとめ
ウナギは、うちわであおぎながら細かい温度調節をすることによって、より美味しくなるという雑学を紹介した。ウナギとうちわの関係性は、職人の腕も試されるような奥深いものだったのだ!
なにより、はるか昔から受け継がれてきた伝統の技術が、機械に打ち勝つことを嬉しく思う。
とはいえ、ウナギを焼くときにうちわであおぐと、めちゃくちゃ美味しそうな香りが漂うのも事実。
私がウナギ職人だったならば、この香りを商売に使わない手はない。うちわを使うことによって「美味しいウナギ」と「集客」、一石二鳥を狙ったのだろう! ウナギ屋のうちわのポテンシャルたるや、恐るべし…!
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