トーストしてバターを塗ったり、野菜や卵を挟んでサンドイッチにしたり、好みに合わせていろんな食べ方を楽しめる食パン。時間のない朝や小腹がすいたときなど手軽に食べられるので、ストックしている人も多いだろう。
ところでこの「食パン」というネーミング、よく考えると意味不明じゃないか? あんこが入っていれば「あんぱん」、クリームなら「クリームパン」、ジャムなら「ジャムパン」。
じゃあ食パンは「食べるパン」だから食パン? いやいや、パンの時点で食べ物なんですけど…。謎すぎる!
というわけで疑問を解決するべく、食パンという名前についての雑学をご紹介しよう!
【食べ物雑学】「食パン」という名前の由来は?
【雑学解説】食パンの名前の由来は1つではなかった!
一般的にパンというのは、中に入っている具や形、見た目によってその名前が付いていることが多い。買う側としても覚えやすい名前のほうがわかりやすい。
しかし食パンは、何か具が入っているわけでもなく、また形に特徴があるわけでもない。ほかのパンと同じ基準で名前を付けようとしたら、たしかになんと呼ぼうか迷ってしまいそうだ。
そんな食パンの「食」は一体どこから来ているのか。
調べてみると、食パンの名前の由来には5つほどの説がある。
食パンの由来
- 「主食」になるパンだから「食パン」説
- 「西洋料理のもとになる食べ物」とする説
- 酵母の働き説
- 「消しパン」とは違うぞ説
- 「食べられるパン」説
ただ、関東大震災や空襲などによって資料が焼けてしまったので、どれが本当の説かははっきりしていないのだ。
以下より5つの説を見てみよう。
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説1.「主食」になるパンだから「食パン」説
日本でパンの製造が一般的になったのは江戸時代末期の話。
当時は今のようにイースト菌があるわけもなく、それぞれの店が独自の手法で作った酵母や麹菌を使ってパンを作っていたという。これらの酵母や麹菌を使ったパンはあまり膨らまず、おもに菓子パンとして食されていた。
その後、明治時代になると「横浜ベーカリー宇千喜商店」がビールに使われるホップ種でパンを作った。これが日本の食パンの起源だといわれている。米文化が根強い日本に、麦を発酵させたイースト菌がやってきたわけだ!
イースト菌を使ったパンは大きく膨らんで腹持ちがいい。こうしてパンを主食として食べられるようになったことから、「主食になるパン」という意味で食パンと名付けられたというのだ。
この名前の由来は横浜ベーカリー宇千喜商店の後身、「ウチキパン」の現工場長に伝わっている説である。元祖のお店が受け継いできたという意味では信憑性が高い。
また、日本でパンがまだ一般的でなかった頃、「海外ではパンが主食」という話が伝わって「主食用のパン」→「食パン」と呼ばれるようになった説もある。
当時の人たちからすれば「へ~…あんなお菓子みたいなもんが主食になるんけ!」という感じで、インパクトがあったのかもしれない。
説2.「西洋料理のもとになる食べ物」とする説
戦前のパン職人たちは、食パンのことを「本食」と呼んでいたという。どういうことかというと、「西洋料理のもとになる食べ物」という意味でそう呼んでいたのだ。
パンが日本で流通し始めたのは西洋文化が広まったのと同時期だし、たしかに日本における西洋料理の始まりといっても過言ではない。この本食という通称が徐々に形を変え、食パンと呼ばれるようになっていったというのだ。
うーむ…これも説得力があるかも。
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説3.酵母の働き説
酵母を使って焼き上げたパンの中身は、いくつもの小さな穴が開いたような状態になっている。この穴を見た当時の人が「酵母に食べられた」→「食べられた」→「食パン」とした説もあるぞ。
たしかに食パンは切り分けて食べるので、中身の小さな穴も一目瞭然である。
こんなこと言ったら怒られるかもしれないが…この説が由来だとしたら「食べかけのパン」みたいでちょっと嫌だ…。
説4.「消しパン」とは違うぞ説
消しパンとは、美術のデッサン画を描く際に、消しゴムのように使うパンのこと。
パンには食べる以外の用途もあったのか! 柔らかいため紙を傷付けず、また油染みもしにくいので今でも使われる方法だ。
この消しパンと区別するために「食パン」という名前が付いたともいわれている。消しパン用のパンには主に、作ってから時間が経っていておいしくないものが用いられていたのだ。
しかし当時は食パンも同列で店頭に並んでいたため、間違えて消しパンを食べてしまう人が多かったのだとか。なるほど、「食べられるのはこっちですよ!」という意味の食パンということか。
たしかに間違って消しパンを食べているのに、「あそこのパンはまずいぞ」なんて噂されたらたまったもんじゃない。
以下の動画では消しパンの手法を実践している。消しゴムのようにしっかり消すわけではなく、ぼかす感じで使うのか…。
説5.「食べられるパン」説
消しパンとの区別と少し被るが、単に「食べられるパンだから」という説もある。
そう、"パン"という言葉には「鍋」という意味もあるのだ。今では意識することは少ないが、フライパンはそもそも「揚げ物用の鍋」という意味だ。
つまり「パンはパンでも、鍋じゃないよ! 食べられるほうのパンね!」ということである。うーん…そもそもフライパン以外の鍋をパンと呼ぶ日本人などいるのか…?
いろんな説があってどれも捨てがたいが…やっぱり説1.の「主食になるパン」というのが一番それらしいんじゃないだろうか。食パンの元祖を受け継いだウチキパンの人が言ってるんだし。
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【追加雑学①】食パンの元祖は横浜のパン屋さん
日本の食パンは、1862年(文久2年)に、イギリス人のロバートクラークという人が横浜で「ヨコハマベーカリー」を創業したことから始まった。江戸時代の鎖国が終わり、欧米文化が浸透しはじめた証といえる。
このヨコハマベーカリーで約10年修行をした打木彦太郎氏がこれを継承し、「横浜ベーカリー宇千喜商店」を創設。ここから食パンが全国に広まったのだ。
ちなみに打木氏が10年かけて習った技術は、やはり付け焼刃で真似できるものではなく、当時は食パンの出来損ないも多く出回っていたという。
これらは酸っぱくてマズイことから「スパン」と呼ばれていた。「スパンは好かん!」ってダジャレ言った人、絶対いるよね? で、みんなに失笑されてたよね。
現在、多くの食パンに使われているイースト菌は、打木氏が受け継いだビールのホップ種を用いた酵母とはまた別モノ。しかし後身のウチキパンでは、今でも伝統手法で作った食パンが売られているぞ!
その名も「イングランド」。なるほど、イギリス人に習ったからイングランドってか!
https://twitter.com/417tantan_arp/status/1214515337875480576
つまりウチキパンでは、本当の意味で元祖の食パンが食べられるということだ。イングランド目当てのお客さんもやはり多い。甘みが少なく、小麦を感じる素朴な味わいが魅力なのだとか…。
せっかくなので、ウチキパンを紹介している動画も紹介しておこう。
閉店時間でほとんどパンが残っていない! やっぱり人気のパン屋さんなのだな~。食パンを見たいところではあったが、さすがに買い食いには向かないか。
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ウチキパンへのアクセスは「みなとみらい線元町・中華街駅」から徒歩1分。横浜へ行ったらぜひ立ち寄りたい!
【追加雑学②】山型食パンはなぜ「イギリスパン」なのか?
食パンには「角型食パン」と「山型食パン」の2つの形がある。うん、スーパーでも四角いのと山なりになったもの、2種類見かけるな。このうち山型の食パンは「イギリスパン」と呼ばれている。
たしかに日本に食パンを伝えたロバートクラークさんはイギリス人だし、つまり「山型食パンが元祖」ということか…と思っていたら、これも食パンの名前の由来と同じで諸説ある。
もうひとつの説は、山型の食パンが「山高帽を被った英国紳士に見える」というものだ。へ~…なんかオシャレ!
ちなみにこのイギリスパンの起源は、コロンブスがアメリカ大陸を発見して開拓していった頃だとされている。開拓にはたくさんの労働力が必要だったため、みんなに分配しやすい形ということで山型に作られたというぞ。
なんとなく山型のほうが高級感があると思っていたが、その形には意外と泥臭い理由があったのだ。ちなみにコロンブスはイタリア人なので、イギリスパンのネーミングには関係なさそうである。
雑学まとめ
今回は食パンの名前の由来に始まり、それにまつわる雑学をいくつか紹介した。
なるほどね! と思うものから、ツッコミどころしかないような説まであったが、人の発想なんてどう転ぶかわからないものだ。案外「え…まじで…」という説が合っているのかもしれない。
ともあれ、食パンが日本にやってきたおかげで我々は主食を選べるようになったわけだ。その先駆者たちに感謝しながら、今日もパンを楽しもうではないか。
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