町や公園を散策すると、季節ごとに色とりどりの花が咲いているのを見かけることは多い。お馴染みのチューリップやバラはともかく、中にはキレイに咲いていても、その花の名前を実は知らないってこともあるだろう。
こうした名も知らない花もふくめて、それぞれの花には花言葉があり、その言葉の由来と意味も様々だ。
ところで、花の中には勿忘草(ワスレナグサ)という名前の花もあるのだが、実はこの植物の花言葉が作られた背景には、とても悲しい物語が隠されていた。
勿忘草に秘められた、切ない雑学ストーリーを紹介しよう!
【自然雑学】勿忘草の花言葉が切なすぎる
【雑学解説】花言葉に秘められた、悲しい伝説
勿忘草の花言葉「私を忘れないで」と「真実の愛」は、まだ花に名が無い頃、ある伝説が元となり、「忘れな草」という名とともに生まれたという話がある。
その由来には中世ヨーロッパ時代、ドイツに住んでいた若き騎士ルドルフとその恋人ベルタの二人の物語が関わっていた。ある日のこと、二人は一緒にドナウ川のほとりを仲良く散歩していると、川岸に咲く美しい花を見つけた。
ルドルフ「ああ、あれを見てごらんベルタ、キレイな花だね」
ベルタ「まあ本当ね! とっても可愛らしいお花…」
ルドルフ「…よし、待っておいで、僕があの花を取ってくるよ!」
ルドルフは、恋人のためにその花を摘もうと川岸に降りた。しかし、花を摘んだ矢先、彼は川に落ちてしまう。川の流れに飲まれながらも、ルドルフは力を振りしぼり、花を恋人のところへ投げ、こう言った。
「ベルタ!僕を忘れないでくれ!さようならベルタ!」
「そんな…!ルドルフーーー!!」
ベルタの叫びも虚しく、騎士ルドルフはそのままドナウの冷たい川に流され、短い生涯を終えた。ベルタはルドルフのことを忘れないよう、彼が最後に放ったその花を生涯身に着けたのだという。
いつしかその花は「忘れな草」と呼ばれ、同時に花言葉「私を忘れないで」の由来となった。そして、もう1つの花言葉「真実の愛」もこの物語が元で生まれた。
こうした悲しいバックストーリーが、勿忘草の花言葉には隠されていたのだ。
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【追加雑学①】「勿忘草」という名前は日本の学者が命名
勿忘草というのはあくまで和名だが、この名前は明治38年、日本の植物学者・川上滝弥という人物によって名付けられた。
なおこの勿忘草、ドイツ語では「Vergissmeinnicht(フェアギスマインニヒト)」。英訳では「Forget me not」。
英訳は単語の順番として少し不自然に感じるかもしれないが、これは中世の英語が由来になっているためだ。
いずれもそれぞれ和訳すると「私を忘れないで」という意味になり、まさしく騎士ルドルフと恋人ベルタのストーリーそのものである。
【追加雑学②】ちなみにどんな花?
勿忘草はムラサキ科・ワスレナグサ属の総称で、花の外見が青・ピンク・白・黄・紫など実に多様な色の種類をもつ、多年草の小さく可愛らしい花だ。
元産はヨーロッパ地方で、日本に入ってきたのは明治時代のこと。「ノハラワスレナグサ」という名で輸入され、その後、全国に広まったとされる。
しかしこの勿忘草は、夏の暑さや過湿にすこぶる弱く、枯れてしまうことが多いため、さすがに一年中咲くことは出来ない。だが、北国や長野などの冷涼地では長く咲くこともあるため、日本では一年草の扱いになっている。
主な開花時期は3月下旬~6月くらいで、日本全国で見られる花でもあるため、勿忘草とはわからなくても見たことだけはあるという人は多いかもしれない。
園芸・観賞用として育てられることも多く、ホームセンターに種や苗が売っていることもある。咲かせることはそれほど難しくないので、興味がある人は育ててみてはいかがだろうか?
育てた勿忘草を見ながら、騎士ルドルフと恋人ベルタの悲恋の物語に思いを馳せてみるのも、植物鑑賞の楽しみ方としては悪くないと筆者は思う。
薬として利用されることも
意外な利用法だが、勿忘草の原産であるヨーロッパでは、呼吸器・肺疾患の薬として用いられることがあるそうだ。主に民間療法として、シロップ薬や鎮咳・去痰薬に使われるという。
薬として利用される植物は多いが、この勿忘草も例外ではなかったということだ。
雑学まとめ
花の名前や花言葉には、様々な意味合いが隠されている。ましてこの勿忘草、花言葉が「私を忘れないで」だ。花言葉だけでもちょっとしたストーリー性を感じてしまう。
そして、花言葉の由来を調べるにあたり、他にも日本にはいつ頃入ってきたのか、観賞用だけではなく、薬としても使われるという側面など、知らなかった雑学がたくさんあったわけだ。
なにより言葉の由来にもなった、悲しいストーリーが印象深かったため、筆者はこの勿忘草のことを文字通り、きっと「忘れない」だろう。
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