おいしくて健康的。手軽にパッと食べられるのがうれしい「納豆」。
納豆には一応、賞味期限があるけれど、多少過ぎたって平気のように思える。筆者だけか…? みんな気にせず食べてるよね?
だって、最初っから腐ってるんだし。…腐ってるんじゃなくて発酵? じゃあ、納豆が腐ったらどうなるんだろう。
今回はそんな「納豆が腐ったらどうなるの?」という雑学。この素朴な疑問に迫ってみよう!
【食べ物雑学】納豆が腐るのはどんなとき?
【雑学解説】納豆が腐るのは、納豆菌がほかの菌に負けたとき
納豆を始め、キムチ・味噌・ヨーグルトなどの発酵食品は、いずれも細菌を繁殖させることで作られている。
一方、一般的に食べものが腐っている状態も細菌が繁殖していることを表すが、上記のような発酵食品は決して腐っているわけではない。発酵しているのだ。
発酵と腐敗には以下のような違いがある。
- 発酵…人間に好影響の菌が繁殖して、食べたら体にいい状態
- 腐敗…人間に悪影響の菌が繁殖して、食べたらお腹を壊す状態
要は人に有益な菌が繁殖しているか、有害な菌が繁殖しているかの違いだ。
ちなみに食べものが腐ると酸っぱい味がするのは、細菌が酸を出して外敵から身を守ろうとするからである。納豆の場合はその役割を担うのがあのネバネバ成分なのだ。
つまり納豆のネバネバは納豆菌の繁殖の証。おいしい納豆のなかでは納豆菌が元気に活動して、あのネバネバをせっせと生産しているのだ!
納豆菌は非常に強い菌で、元気な状態だとそんじょそこらの雑菌には負けない。
しかし長期間放置すると納豆菌が弱りだし、ネバネバもなくなってくる。すると生存競争に打ち勝った有害な雑菌が繁殖を始め、腐敗が進行しだすのだ。
納豆が腐ってるかの確認方法
具体的に、腐った納豆は以下のような状態になる。
- ネバネバが無くなり、水っぽくなる
- 表面に明らかなカビが生えている
- 豆が茶色くドロッと溶け、強烈なアンモニア臭がする
納豆菌が弱っている合図として、まずネバネバがなくなる。以降、有害な雑菌の繁殖が進み、カビが生えたり豆が溶けだしたりにいたるといった感じだ。
つまり、ネバネバがなくなった時点でもう赤信号。絶対に食べてはいけない。
とはいえ、納豆菌の生命力は相当なものなので、賞味期限を過ぎてすぐに腐るようなことはない。
常温での賞味期限は数日。10℃以下で保存すれば1週間ほどだが、少し過ぎたぐらいなら健康被害はない。これに関しては、大手納豆ブランド「おかめ納豆」の公式ホームページも同じように説明しているぞ。
ただ賞味期限を過ぎた納豆は、発酵が行き過ぎて風味が悪くなっており、あまりおいしく食べられるものではないので、やっぱり期限内に食べるのがベストである。
発酵が進み過ぎた納豆はアンモニア臭を放つようになるが、なかにはその臭いを好んでわざと放置する猛者もいるとか。いや…腐ってはないんだろうけど、それ、もう腐ってるようなもんだぞ…。
以下の動画で発酵の進み過ぎた納豆がどんな状態になるか紹介されている。やっぱり害はないみたいだけど、臭いはなかなか取れないぐらい強烈なようだ…。
長期間保存したいなら冷凍がおすすめ
納豆を腐らせず長期間ストックしたいなら、冷凍保存がおすすめだ。納豆菌は冷凍しても休眠するだけで、自然解凍すれば再び活動を開始するので、栄養価が損なわれることもない。
ただ電子レンジなどで急に温めたり、常温で解凍したりすると風味が損なわれてしまう。解凍の際も水分が飛ばないように、ラップや密閉容器を利用するのがコツだ。
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【追加雑学①】納豆の状態でわかる!腐ってるかの判断基準
おいしさの秘密が菌の繁殖であるためか、納豆は賞味期限内でも、「これって腐ってるの?」と思ってしまう状態になることがしばしばある。
ここではそんな紛らわしいパターンを紹介しよう。
納豆の表面に白いツブツブがついている
納豆の発酵が進んだり、冷蔵庫のなかで乾燥してきたりすると、表面に白いツブツブが出てきて、食感もザラっとした感じになることがある。
これは納豆菌が大豆のたんぱく質を分解したときにできた「チロシン」というアミノ酸の結晶で、有害なものではない。栄養価も変わらないので、食感が気にならなければ普通に食べられる状態である。
「なんかザラザラしておいしくない…」という場合は、ほかの料理との合わせ技がおすすめだ。
以下にレシピ動画も紹介しておこう。オクラなどと混ぜて食べたり、加熱調理したりすれば、ザラザラした食感も気にならなくなるはず!
納豆の表面に白いモコモコが出ている
納豆はものによって、表面にうっすらと白いモコモコが出ているような状態になっているときがある。なんだか白カビっぽいし、「腐ってるんじゃ?」と思わされるところだが、実はこれは良い納豆の証拠である。
モコモコの正体は納豆の菌層で、それだけ発酵がうまくいっているということだ。特に色の濃い大豆を使っていると菌層は目立つが、何も心配することはない。
一部がピンク色、または黒色になっている部分がある
納豆の一部がピンク色、または黒色になることがあるが、これは大豆の胚芽部分の色が変化したもので、腐っているわけではない。
発芽した大豆を思い浮かべるとわかるように、胚芽部分と丸大豆部分とではもとから色が違う。そのため発酵が進む過程で、胚芽部分だけ違う色に変化することもよくあるのだ。
もちろん栄養価も変わらなければ、食べて害になることもない。
【追加雑学②】納豆を食べないほうがいい人とは?
納豆は当然のごとく健康食品だが、実は食べないほうがいい人もいる。「ワーファリン」という血をサラサラにする薬を飲んでいる人だ。
納豆そのものに血流を悪くする作用があるわけではないが、納豆に含まれるビタミンKは、ワーファリンの効き目を薄めてしまうことがあるというのだ。
よってこの薬を飲んでいる人が納豆を食べたい場合は、お医者さんに十分相談したうえで判断してほしい。
納豆にも血液をサラサラにする効果がある
このようにワーファリンの効果を打ち消してしまうこともある納豆だが、何を隠そう納豆自身にも血液をサラサラにする成分が含まれている。ナットウキナーゼだ。
血栓症などですでに薬を処方されている人は別だが、その前段階の予防として、納豆は十分な効果を発揮する。
ナットウキナーゼは摂取してから10~12時間後にもっとも効果が表れるので、その恩恵を得たい人は夕食に食べるのがおすすめ。血栓は夜、眠り始めて6~8時間のあいだが一番できやすいとされているからだ。
つまりだいたい就寝時間の4時間前に食べるのがいい。夜12時に寝るとすれば、夜8時に食べるのが一番効果的である。
【追加雑学③】納豆菌の強さは抗生物質なみ
前述したように納豆はすぐに腐るような食べものではなく、これは納豆菌の生命力によるところが大きい。
実のところ、納豆菌は地球上の数多い細菌のなかでも、圧倒的に強い菌なのだ。ネット上では「宇宙空間でも生きていける」と噂されるぐらいだぞ!
その実力はいかほどのものか。
日本納豆協同組合連合会によると、納豆菌は腸チフス菌やO-157菌さえ抑制する猛烈な繁殖力をもっている。ジピコリン酸などの抗菌物質を含み、これはすでに「天然の抗生物質なみ」だとか。
納豆食べてりゃ食中毒知らずってか! 半端ねえ…。
以下は「納豆菌VSカビ菌」を実演した動画だ。繁殖力の強いカビも、納豆の前には完全に抑え込まれてしまう…。
納豆菌はあらゆる環境に耐えうる生命力をもっている
まだまだ…納豆菌の強さは、ほかの菌に負けない程度では終わらない。以下のような、まるで地球外生命体かと思わしき生命力をもっているのだ!
- 熱・酸・真空・冷凍に耐えて生き延びる
- なぜか地球のマントル部分(地殻下2,900km)に存在する無機物に耐性がある
…有害な細菌じゃなくてよかった。というかマントル部分にある無機物の耐性なんて、使いどころなくないか。
このように、ほかの細菌には見られない生命力をもっていることから、「納豆菌は隕石落下にくっついて宇宙からやってきた」などという説までささやかれているのである。いつか納豆菌を宇宙に放つ実験とかやってみてほしい…。
【追加雑学④】醸造所に納豆は厳禁?
前述のように納豆菌は異常な繁殖力をもっているため、発酵食品や醸造系の仕事をしている人からは神経質なほど恐れられている。
というのも、発酵食品を作る過程で納豆菌が少しでも入り込むと、そのあまりの繁殖力にほかの細菌が負けてしまい、すべてダメになってしまうからだ。
有名なところではお酒の仕込みで、日本酒の蔵元は納豆厳禁な場所が多い。
昔の納豆は野生の納豆菌を使っていたため特に強烈で、そのような掟が出来たのだという。現代の納豆は衛生管理された環境下の培養菌で繁殖力は以前ほど強くないが、それでも杜氏は仕込み期間中に納豆を食べないことが多い。
ヨーグルトなどの発酵食品業界・醤油や味噌などの醸造所・ワインの醸造所ももちろん納豆厳禁だ。…改めて、納豆は良くも悪くも最強なのだな。
納豆好きがこういった業界に就職すれば、好物をひとつ諦めることになるのか…。
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納豆の雑学まとめ
今回は納豆についての雑学を紹介してきた。納豆は腐りにくいけど、やっぱり腐る。
カビが生えている場合はもちろん、糸を引かなくなっている、水っぽいなどの状態になったら絶対に食べないようにしよう。強烈な納豆菌が弱るくらいだから、間違いなくお腹下しコースだ。
地球上の菌のなかでもトップクラスに強い納豆菌。彼らの生命力をいただいて、今日も元気に頑張ろう!
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