歴史が大嫌いな人でも、西郷隆盛という名前は聞いたことがあるだろう。そして、ちょっと歴史をかじった人なら、西郷隆盛が歴史上のすごい人物だということもわかるだろう。
上野公園にある銅像! そう、まるで浴衣姿で夕暮れ時に近所を犬と散歩しているようなごっついおじさんの像! あれが西郷隆盛である。
西郷は犬好きで、よく犬を連れて歩いていたという話は有名で、実際たくさんの犬を飼っていた。あの銅像を見れば当然、飼っていた愛犬のうちの一頭で、西郷隆盛と愛犬との仲むつまじいワンシーンに見える。
しかし! 西郷隆盛と一緒にいる犬は、実は西郷隆盛が飼っていた犬ではないのだ。どういうことだ!? では一緒にいるのはどこの犬だ!?
今回は、西郷隆盛とその隣にいる犬についての雑学をご紹介しよう!
【歴史雑学】西郷隆盛と一緒にいる犬は西郷の犬がモデルではない
【雑学解説】西郷隆盛の愛犬はメス!銅像の犬は…オス!?
西郷隆盛は大変な犬好きで、なんと13匹もの犬を飼っていた。その中で最もかわいがっていたといわれているのが、薩摩犬の「ツン」と名づけられたメス犬だ。
西郷はよくこのツンを連れて歩いていたので、上野公園の銅像で西郷隆盛と一緒にいるのは当然ツンだと思いきや…
銅像の犬は、オスなのだ! ん!? ツンはメスのはずだが…
実は、上野公園の西郷隆盛の銅像が作られたのは、死後21年も経った明治31年のこと。当然、ツンも生きているはずはない。当時のツンの写真も残っておらず、ツンと同じ犬種である薩摩犬を探したのだが、なかなか見つからなかった。
そこでやっと見つけたのが、当時の海軍中将が飼っていたオスの薩摩犬だったのだ。上野公園の西郷隆盛と一緒にいる犬は、このオスの薩摩犬をモデルに作られたというわけだ。
モデルがオスでも、メスとして作ればよかったんじゃ…。
実はこの銅像、西郷隆盛と犬は別々の作者が作っている
それはそれで驚きなのだが、犬の方を作ったのが後藤貞行という彫刻家で、彼はモデルに忠実に作るこだわりをもっていた。そして完成した犬は、モデルのとおりオスだったというわけだ…。
モデルに忠実だと事実とは異なるが、そうなっても西郷隆盛と一緒に犬を並べたかったのか…。それほど、西郷隆盛といえば犬! のイメージが強かったのだろう。
たしかに、あの浴衣姿の西郷隆盛だけでは、銅像としてちょっと寂しいが…。
【追加雑学①】なぜ犬の散歩姿が西郷隆盛の銅像に?
歴史上の人物で、これほどラフな格好で銅像になった人も珍しいのではないだろうか。
西郷隆盛はいうなれば、政府に歯向かい戦をしかけた朝敵。当時の明治政府からすれば、とんでもない反逆者だったわけだ。
しかし、西郷は明治政府を作った一番の功労者だったことも事実だ。だからこそ西郷隆盛の人柄を慕う者も政府内にはたくさんいた。
そこで! 時が流れ名誉が回復されると、「西郷隆盛の功績をたたえて銅像を作ろう!」ということになったのだが…。
当初は、政府の陸軍大将だった頃の正装である軍服を着た西郷隆盛の銅像が作られる予定だったのだが、政府が「ちょっと待て!」と言い出したのだ。
政府に歯向かった人物を讃えるように、政府の軍服を着た勇ましい姿の銅像を建てるなど、けしからん! ということで、政府での功績や戦を起こしたことなどみじんも感じさせない、あの庶民的な姿で作られたのだろう。
軍服姿の凝った作りをする資金が足りなかったという話もあるが、それであの浴衣姿になったのでは、あまりにも西郷隆盛がかわいそうだ…。
ちなみに、どう見ても犬の散歩にしか見えないが、実は散歩途中の西郷と犬ではなく山に兎狩に行くときの様子なのだ。
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【追加雑学②】震災では西郷隆盛像が掲示板になった
大正12年にマグニチュード7.9という大地震が起こった。関東大震災である。この震災で、西郷隆盛の銅像は奇跡的に助かり、当時目立つ建物などがなかったこともあり、西郷の銅像は遠くからでも目立っていた。
震災で行き場を失って避難してくる人々も、大きく目立つ西郷隆盛の銅像を目指して上野公園に集まった。そして、離れ離れになってしまった家族や行方不明者を探す貼り紙が、西郷隆盛の銅像にベタベタと貼られていった…。
当時の人々にとっては震災に耐え、犬を連れて変わらずそこに残った西郷隆盛が、とてつもなく大きくあたたかいものに映ったに違いない。
【追加雑学③】西郷隆盛は愛犬ツンにひとめぼれだった
西郷隆盛とツンの運命の出会い。
ツンはもともと農民が飼っていた犬だったのだが、兎狩が得意で、いかにも薩摩犬という見た目のメス犬にひとめぼれしたのだ!
「譲ってほしい!」
そう頼んでも断られ、それでもどうしても諦められない西郷隆盛は、土地の有力者に頼み込み、農民が譲ると言うまで猛アタックしたのだ…。
有力者の力まで借りて手に入れたメス犬。耳がツン! っと立っている事から、「ツン」と名付け、それはそれは大変な可愛がりようだった。
西郷隆盛は愛犬ツンに2回も逃げられている
ひとめぼれして、なかば強引に手に入れたツン。
兎狩に行くにも朝夕の散歩にも、西郷隆盛はツンを連れて歩いた。一番愛情を注いでいたというのに…。ツンは2回も脱走し、元の飼い主の農民のところに帰っている…。
このツンデレなところもまた、西郷にとっては可愛く思えたのだろうか。
雑学まとめ
今回は、西郷隆盛と愛犬の銅像についての雑学を紹介した。まさか一緒にいる犬が西郷隆盛の犬ではなかったとは…。震災時の掲示板になっていたのも、あのほのぼのとした西郷隆盛と愛犬の銅像だからこそではないだろうか…。
実は良く紹介される西郷隆盛の肖像画も、西郷隆盛自身をモデルにしたものではないのだ。西郷は大の写真嫌いで、一枚も残っていないからだ。西郷隆盛の銅像ですら本人の写真を見て作られたものではないのだから、ツンがツンではないことも仕方ないか…。
モデルが違っても、のんびりと歩く西郷隆盛と愛犬の銅像になんだかほっとした気分になる。
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