京都や奈良に行くと必ずといっていいほど見物する、三重塔や五重塔。中には入れないし、中にお坊さんが住んでいるわけでもない。しかし、お寺には三重塔や五重塔がたいていあるが、どういった建物なのか。一体、仏塔の中には何があるのだろう?
今回のテーマはずばり、三重塔や五重塔の中身についての雑学だ。その意外な中身に驚くこと間違いなし。
【歴史雑学】お寺にある三重塔・五重塔には何が入っているのか?
【雑学解説】お寺の三重塔・五重塔には、仏舎利(釈迦の骨)またはお経が入っている
三重塔や五重塔などの仏塔の中には一体何があるのか、その謎を解くために、仏塔の起源を少し見てみよう。
仏塔の起源は、インドの仏教建築「ストゥーパ」である。
仏教の開祖・釈迦の遺骨を(ぶっしゃり)と呼ぶが、ストゥーパは仏舎利を納めるために建てられた記念碑のことをいう。釈迦の死後、その骨は8等分され、それらを保管するために最初のストゥーパが建てられた。
その後、紀元前3世紀頃、仏教を深く信仰したアショーカ王によって、さらに細かく再分配されて、インド各地にストゥーパが建てられたという。
ストゥーパは、古墳のように土で作られた半球状の大きな塚のような形。そして、一番大切な仏舎利を納めている真上に当たる半球の頂上には、暑いインドの日差しをさえぎるために、幾重にも日よけの傘を模した建造物が建てられた。
そして、この傘の部分のみが残ったものが、日本でよく目にする木造の仏塔、つまり三重塔・五重塔なのだ! そのため、日本の仏塔も理屈の上では、仏教の開祖の骨を納めた墓といえる。
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日本の全ての仏塔に仏舎利が入っているのか?
しかしだ。果たして、日本にある全ての仏塔に仏舎利が入っているのだろうか? 釈迦は紀元前の人物だし、仏塔は形は違えどインドをはじめ東南アジアなどにもたくさんあるではないか。
正直、仏舎利がそんなにあるとは思えない。
調べてみると、予想どおり、かつてインドで分割された仏舎利は、手に入れるのがとても難しいものらしい。一人の人間の骨を世界中のお寺に配ったために、手に入ったとしても、米粒ほどの小さな白いかけら数粒だけなのだ。
そして、日本で正真正銘おり紙付きの釈迦の遺骨(真舎利)があるのは、たった一箇所のみだった!
その真舎利を納めている寺が、愛知県名古屋市にある日泰寺である。外務省によると、この日泰寺の新舎利は1900年にシャム(現在のタイ)から贈られたものだ。ただ、この真舎利が収められた塔はインドの形式で建てられていて、日本的な三重塔や五重塔ではなかった…。
では、本物の釈迦の骨がないのであれば、大抵の三重塔・五重塔には何が入っているのだろう?
その答えは、真舎利の代用品である。代表的なのは、米粒や石英、ヒスイなどの宝石だ。共通するのは、小さな白い粒であるということ。なるほど、真舎利に見た目も似ていて、違和感も少ないだろう。
実際、これらの代替品も、通常は仏舎利として認められている。ちなみに、日本最古の仏塔、法隆寺の五重塔の仏舎利はダイアモンドという説がある。
他には、清書したお経を「法舎利」として、仏塔に納めたものもある。これは、ひとつのお寺に2基以上の塔が建てられるときに取られる方法らしい。
幸運にも、仏舎利の様子を垣間見られる動画を発見した!
こちらの動画は、奈良の薬師寺にある五重塔・東塔で見つかった仏舎利と、それを再度奉納するための新しい容器を報道したもの。この動画をみると、仏舎利の小ささがよく分かる。
そういうわけで、日本の三重塔・五重塔には、主に釈迦の骨と見なされる宝石やお経といった、色々な仏舎利が納められているのだ。
【追加雑学】三重塔と五重塔の違いは?
ここまで、仏塔の中身について紹介してきたが、たびたび触れてきた三重塔と五重塔の違いは何だろうか?
中身に違いはなく、どちらにも仏舎利が納められているが、象徴しているものが違うのだ。ふたつの仏塔はそれぞれ…
- 三重塔:宇宙を体現する大日如来
- 五重塔:仏教の宇宙観である五大(地・水・火・風・空)
どちらも壮大な宇宙に関するものを象徴しているが、五重塔の方が屋根の数が多い分、より壮大なイメージのようである。
雑学まとめ
今回は、お寺で目にする三重塔と五重塔についての雑学を紹介した。仏塔が釈迦の骨を納めたところだったとは…そして、まさかほとんどが代わりの仏舎利を保管していたとは…世の中には釈迦の仮のお墓がたくさんあるのだ。
今度お寺に行ったときは、塔の前でもきちんとお参りしなくてはいけないかもしれない。