郵便を表す「〒」マークの由来を知っているだろうか。筆者は長らく郵便ポストを表しているのでは? と思っていた。箱型のポストに、細い脚の付いた見た目がなんとなくそれっぽくないだろうか。
しかし考えてみれば、郵便ポストは脚の細いものだけじゃなくて、筒形もあるような…と思っていたら、案の定あのマークはポストを模したものではなかった。ではどんな意味があるのか? 郵便事業が始まった明治期にさかのぼってその由来に迫ってみよう。
【生活雑学】郵便マーク「〒」の由来とは?
[st-kaiwa-10679]郵便番号の前にあるマークってさ、なんでこれ?「T」っぽいけど、「ゆうびん」なら「Y」だよね。[/st-kaiwa-10679]
[st-kaiwa-10676]今は郵便事業は民営化してるけど、その前は「郵政省」の管轄だったのは知ってるね?郵政省の前身が「逓信省(ていしんしょう)」で、その頭文字の「テ」を図案化したものらしいよ。[/st-kaiwa-10676]
【雑学解説】郵便マークの由来は逓信省の頭文字?
国内の郵便物に〒のマークが使われ出したのは、明治20年のこと。郵政民営化前、国が運営していた郵政省の前身である「逓信省(テイシンショウ)」が提案したものである。
なんだか急に難しい漢字が出てきたなと思わされるが、明治時代の漢字なんてだいたいそんなものだ。「逓」には"互いに"という意味があり、要するに「郵便物を互いに行き渡しますよ!」ということだろう。
どうして逓信省のマークが〒なのかというとそのまんまで、頭文字の「テ」を図案化したものなのだとか。なるほど、よりマークっぽくしたかったわけだ。
[st-kaiwa-10679]まぁたしかにいわれてみれば「テ」だわ。[/st-kaiwa-10679]
と、意外に単純な理由だなと感じるが、実はこのマークに行き着く前はローマ字の「T」にしようという案があったとか。それが〒マークに変更された理由には以下のような諸説がある。
- ローマ字の「T」とカタカナの「テ」の案があり、「テ」が選ばれた。しかし間違えて「T」が採用され、後日両方の間を取った「〒」に訂正された
- Tは国際郵便の料金不足の印(taxの頭文字)として使われていたため
- Tは契約書などに使われる「甲乙丙丁(こうおつへいてい)」の丁に似ているため
さまざまな憶測があるが、なかでも有力なのは"国際郵便の料金不足の印に使われているから"という説だ。
たしかに間違えてTを採用したというのはなんだかマヌケだし、契約書に使う漢字にしても甲乙ぐらいは知っているが、丙丁なんて聞いたこともないし、滅多に使われないだろう。まあ、今となっては真実を知る術はないわけだが。
[st-kaiwa-10676]間違えて採用、しかも両方の間を取って…とか、さすがにそれはちょっと…って感じがするねぇ。[/st-kaiwa-10676]
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郵便マークはダジャレからできた説
〒マークを考えたのは当時、逓信省の職員として働いていた中島泉次郎という人だという。
実は上記で紹介したもののほかに、この中島さんがローマ字のTにダメ出しをくらい、考えあぐねたところ目に入ってきた、「日本郵船株式会社」のロゴを参考にしたという説があるのだ。
日本郵船のロゴといえば、赤色の二本線が入った旗のマーク。なんでも中島さんが日本郵船の社員にロゴの意味を聞いたところ、"二本の線で日本"というダジャレが返ってきたのだとか。
これを受けて中島さんは逓信省の「テ」にちなみ、二本線に一本の縦線を足した〒を編み出したという。実名や逸話が残っている辺り信憑性があるような気もするが…これもあくまで諸説のひとつである。
[st-kaiwa-10679]これなら「テ」にも似てるし、二本線で「日本」だ!こりゃいいぞ~!って!?[/st-kaiwa-10679]
以下は日本郵船の社歌の動画で、2:43~赤い二本線の旗も登場するぞ! 「二引きの旗」と歌詞にもなっている辺り、伝統のあるロゴだということを物語っている。
[st-kaiwa-10679]なんかみんな楽しそう…。[/st-kaiwa-10679]
[st-kaiwa-10676]そうだね…。というか昔働いてたころ、社歌なんて覚えた記憶ないよ…。[/st-kaiwa-10676]
【追加雑学①】郵便マークが「〒」になった理由とは?
日本で郵便事業が始まったのは明治4年のこと。〒マークが生まれたのは明治20年だから、それ以前には別の印が使われていたことになる。
これにも年月を追って変貌があり、当初は「郵便」の文字だけ、明治10年ごろからは日の丸に赤い横線を重ねた「丸に一引き」のマークが使われるようになった。郵便物だけでなく、郵便局員の帽子や制服にもこのマークが入っていたというぞ。
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なんだ、マークがあったのなら、わざわざ〒マークに変えなくてもよかったのでは? と思わされるが、これにも興味深い理由があった。
なんでも当時、逓信省の会計局長を務めていた山内堤雲(やまうちていうん)が、外国人にマークの意味を聞かれて答えられなかったのだとか。これを受けて彼はマークを変更する案を出し、前述の中島泉次郎にアイデアをゆだねたのだ。
[st-kaiwa-10679]え~!?言うだけ?言い出しっぺなのにあとは任せちゃったの?[/st-kaiwa-10679]
[st-kaiwa-10676]委ねられた中島さんも、「それならお前が考えろよ~」って思っただろうねぇ。[/st-kaiwa-10676]
なるほど、普段から見慣れている日本人は気にしなくても、外国人ならたしかに意味が気になりそうである。そして自分たちのマークなのに答えられないのはバツが悪いのもわかる。
明治の郵便事情を現代の私たちが知るのは容易ではないが、動画などを通して少しは感じることができる。以下は明治からのポストの変貌を収めたものだ。
個人的に昭和12年のコンクリート製が印象に残った。ポストまで戦争の影響を受けていたとは…。
[st-kaiwa-10679]私が行ってた幼稚園に丸型ポストあったな~。懐かしい~。[/st-kaiwa-10679]
[st-kaiwa-10676]あぁ、あったあった。あれは使えるポストだったのかねぇ。[/st-kaiwa-10676]
【追加雑学②】郵便マーク「〒」を書いてはいけない!?
無地の封筒やハガキに自分で〒マークを書く人は多いと思うが、実は厳密には書いてはいけないことになっている。
内国郵便約款に、以下のような一文があるのだ。
郵便番号の前後には、「郵便番号」、「〒」その他これらに類する文字または記号及び「親展」、「至急」、「重要」その他これらに類する文字または日時並びに会員番号、電話番号、口座番号その他これらに類する事項を記載できません。
(出典:内国郵便約款)
[st-kaiwa-10679]えっ!?ダメだったの!?[/st-kaiwa-10679]
つまり正確には〒マークは書かずに「○○○-○○○○」という郵便番号だけでOKなのである。ただ送り主によって〒マークが書かれていても、取り扱えないといって送り返すようなことはもちろんしない。
よって書いていてもいなくても届くには届くのだが、手書きの〒マークがあると機械での判別が難しく、手作業で仕分けを行う必要が出てくるのだという。何の気なしに書いていたが、実は郵便局員の仕事を増やす行為だったのだ…。
[st-kaiwa-10679]局員さんの仕事を増やしちゃってたんだね…。うわ~、私普通に書いてたよ。局員さんごめんなさ~い![/st-kaiwa-10679]
郵便マークの雑学まとめ
〒マークの由来は逓信省の頭文字を取った「テ」。なるほど、郵便物を扱う機関の名前が変わっていれば、マークの由来もわからなくなるわけである。
[st-kaiwa-10679]うんうん。「逓信省」なんて知らないもん。[/st-kaiwa-10679]
成り立ちは至極単純だったが、今となっては誰が見ても一目でわかる、おなじみのマークとなった。アイデアを出した中島さんも、現代でこれだけ浸透していることを知れば浮かばれた気持ちになるだろうな。
[st-kaiwa-10676]オシャレなロゴとかマークもたくさんあるけど、やっぱりシンプルなのは覚えやすいし、忘れることもないんだろうねぇ。[/st-kaiwa-10676]