あたるとこの世の終わりくらいもだえ苦しむ。しかし、たとえあたっても何度でもチャレンジしたいもの。宝くじではない、牡蠣のことだ。今回の雑学テーマは、何を隠そうこの牡蠣について。
牡蠣好きは、ほかの人からしたらあきれるくらい牡蠣を食べたがる。中でも大人気の「生牡蠣」は、酒好きなら何個でも食べられるという人もいるくらいだ。
とにかくおいしいものなのだろうが、食中毒だけは避けたい。実は、限りなく安全な牡蠣を選ぶことはできるが、「絶対にあたらない牡蠣」などどこにもないらしい。
それでも、チャレンジし続ける人もいるだろう。生牡蠣、罪なヤツ…!
【食べ物雑学】この世に「絶対にあたらない牡蠣」は存在しない
【雑学解説】「生食用」って書いてあるじゃん! と思っても…
牡蠣の主な食中毒は、現代人には耳慣れた「ノロウイルス」によるものと、「腸炎ビブリオ」によるものの2種類である。ノロウイルスは海水温が10度以下で活性化するのに対し、腸炎ビブリオは4度以上で活性化するのが特徴だ。
スーパーなどで売られている「生食用」の牡蠣。これは、採取後にきれいな海水の中に一定時間入れておくことで、体内の細菌類を吐き出させたり、牡蠣の中の細菌の数をチェックしたもののこと。
ところが、牡蠣は1時間に20リットルもの水を吸ったり吐いたりする。さらに、人が食べる部分がほぼ内臓にあたるので、どうしても細菌の「残り」が生存していることがある。
おまけに食品衛生法の「生食用牡蠣の規格基準」では、細菌の数だけが検査対象。腸炎ビブリオは細菌だが、ノロウイルスは「ウイルス」なので対象外である。法的な検査強制力はないということだ。
たとえ、1個の牡蠣を完璧に調べて水準をクリアしていても、すべての牡蠣を調べている時間はない。そして、流通の過程で4度以上になった瞬間、腸炎ビブリオが活動を開始。調理場の衛生状況などでも簡単に繁殖するので、「絶対安全な生食用」はないのである。
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【追加雑学①】味が違う?生食用より加熱用牡蠣の方が旨みは濃厚
とはいえ、生食用牡蠣のほうが圧倒的に食中毒のリスクが低いのは確かだ。自分の体調と胃腸の丈夫さを信じて生食用を食べている人に、ガッカリなお知らせがある。
実は加熱用と生食用では、圧倒的に加熱用牡蠣の方が旨みが濃厚なのだ。
牡蠣の旨みは生育された海水状況によって異なるのだが、生食用はきれいな海水に入れて数十時間、ときには何日間も置いておく。
牡蠣にとっては、絶食状態で長時間生き地獄を味わうということだ(牡蠣、かわいそうに…)。細菌やウイルスがいるリスクが減るとはいえ、食料となるプランクトンもなく、生まれ育った水質とは全く違う海水につかるストレスは半端じゃない。
加熱用は生まれ育った海水から直送されるため、解毒は不完全でも旨みたっぷり。生食用は牡蠣の体内のクリア度合いに比例して、本来もっている旨みも減っていると考えよう。
【追加雑学②】まさかの「完全陸上養殖」で無毒の牡蠣が爆誕
そんな状況だった牡蠣界に、まさかの「世界初の技術」が開発された。沖縄の久米島、海岸から100kmも離れた陸上で、ウイルスや細菌をもたない「絶対にあたらない牡蠣」の陸上養殖がされているという。
2012年から研究が開始されたこのプロジェクトは、久米島の海洋深層水を組み上げ、その中で牡蠣を養殖している。エサになるプランクトンも海洋深層水の中で養殖し、2020年の出荷を目指して急速度で開発が進んでいるらしい。
今はまだ市販されていないが、牡蠣の陸上養殖方法は特許が取得された。ついに魚貝類を海とは無縁の陸上で養殖する時代が来るとは…。牡蠣好きもビックリの、「絶対にあたらない牡蠣」が市場に爆誕する日も近い。
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雑学まとめ
牡蠣についての雑学、いかがだっただろうか。たとえ完全無毒の牡蠣を養殖できたとしても、流通や調理などの過程で細菌やウイルスが付着すると、普通に食中毒を起こしてしまう。
牡蠣を代表とする二枚貝は、保存の温度や衛生管理が少しでも悪いとあっという間に細菌が繁殖するのだ。
つまり、流通過程まで含めると「絶対にあたらない牡蠣」はこの世に存在しない(残念…)。食べるときは体調がいいときだけにしよう。どうせあたるなら食中毒ではなく、宝くじに当たりたいものだ。