「寺が多い都道府県はどこか?」と聞かれれば、京都をイメージする人が多いだろう。
京都には日本を代表する寺社仏閣がいくつもあり、清水寺・金閣寺・西本願寺と、興味の薄い人でも知っているような寺が軒を連ねている。
しかし、寺が最も多い都道府県は実は京都ではない。戦国時代にゆかりのあるあの県が日本一なのだ! そして京都が日本一だと勘違いされることにも理由があるというが…。
【歴史雑学】寺が最も多い都道府県は京都ではない
【雑学解説】京都の寺の数は日本で5番目
政府が行った宗教統計調査によると、2018年時点で一番寺が多い都道府県は愛知県で、その数は4,572件にも上る。対する京都は3,068件で、これは全国でも5番目の数字だ。
えー! 寺巡りといえば京都なのに、5番目なの!? と思った人もいるだろう。
もっと多い都道府県があるのに京都に寺が密集しているように感じるのは、「総本山」と呼ばれるような各宗派を代表する、ネームバリューのある寺が集まっているからである。
これは江戸時代、幕府が宗教団体を管理するのに、政治の中心地である京都に代表の寺を置いておくと便利だったことが関係しているとか。宗派を代表する寺となれば建物も立派で、観光名所としてもそりゃあ注目されるわけだ。
戦国時代の供養のために寺がたくさん建てられた愛知県
一方、首都ではない愛知県に寺が多いのはどうしてかというと、戦国時代の主戦場だったからだ。歴史が好きな人ならすでにピンときているかもしれない。何を隠そう愛知県は「織田信長・豊臣秀吉・徳川家康」という三英傑の出身地なのだ。
信長が生まれたという説がある那古野城や、その城跡に家康が建てた名古屋城はもちろん、名古屋市中村区の常泉寺は秀吉が生まれた土地としても知られている。
そしてこの3人が活躍したこの地では、戦国武将たちによる数々の激戦が繰り広げられた。代表的な戦いを挙げれば、信長がたった2,000人の軍勢で、数万を率いる今川軍に勝利したという「桶狭間の戦い」も愛知県が舞台である。
戦が起これば、命を落とす人も当然多くなる。その供養のために、愛知県にはたくさんの寺が建てられることになったのだ。
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以下は愛知県名古屋市にある大須観音を映した動画である。大須観音も、信長が五百万石の領地を寄付していたり、家康が移転に携わっていたりと、何かと英傑たちに縁のある寺だ。
【追加雑学】寺の少ない県トップ3は沖縄・宮崎・高知
寺が最も多いのが愛知県ということはわかった。そうなると逆に少ない都道府県も気になってくるところである。
まず断トツでトップを突っ走るのが沖縄の90件という数字だ。これは琉球王国と呼ばれていたように、明治初期まで沖縄が日本本土とは別の国とされていたことが理由である。国が変われば文化も変わり、沖縄では仏教が主流ではなかったのだ。
その次に少ない県になると宮崎県が350件、高知県が370件と続く。これは明治初期に廃仏毀釈(はいぶつきしゃく)という仏教廃止の流れがあり、特に宮崎や高知ではこの動きが盛んだったためだ。
廃仏毀釈は明治政府が打ち立てた政策がきっかけで起こったものだが、そもそもは「仏教と神道の棲み分けをしましょう」程度のものだった。それなのに話を大きくした民衆が暴徒化し、寺の破壊活動を行う事件が発生したのだ。
いくら神道を信仰しているからといって、寺を破壊しにいくなんて、現代ではとても思いいたらない考えである…。務めていた坊さんたちからすれば、恐怖以外のなにものでもない。現代は平和になったものだと改めて実感させられる。
雑学まとめ
数は5番目でも、京都には仏教の各宗派を代表する立派な寺がたくさんある。その事実がある限り、寺巡りといえば京都! はくつがえらないだろう。
またそれぞれの都道府県の寺事情を辿ると、江戸時代や戦国時代、はたまた明治維新など、歴史上のさまざまな出来事が浮き彫りになってくるのもおもしろい。寺巡りの際も、そういった歴史に想いを馳せてみると、また違った楽しみ方ができるはずだ。