あなたが普段使っている1万円に、1万円分の価値があることは言うまでもない。しかしその1万円に、どのぐらいの製造コストがかけられているかを考える機会は、あまりないだろう。
ズバリ1万円の原価は22円である。ぼったくりとか、そういう話ではないぞ!
「まあただの紙切れだし…」などと思った人もいるだろう。しかし1万円が22円で作られていることは、実はとんでもないことなのだ! 今回は、1万円札に関する雑学をご紹介しよう。
【生活雑学】1万円札の製造原価はいくら?
【雑学解説】1万円札の製造原価は日銀への引き渡し価格
まず基本的なこととして、1万円札などの紙幣は日本銀行が発行枚数などを管理し、国立印刷局へ印刷の発注をかけている。
その国立印刷局から、発行元である日本銀行への1万円札の引き渡し価格が22.2円とされているのだ。発行する年によってバラツキもあるが、おおむねこのぐらいの価格である。
ちなみに印刷局から日銀への引き渡し価格ということで、厳密にいえばこれは原価ではない。しかし実際の原価は公表されておらず、おおよそこの引き渡し価格ぐらいではないかと予想されているのだ。
1万円札の偽造対策がスゴい【動画】
原価の内訳は、「紙のコスト」・「印刷のコスト」が大半だろう。
1万円を触ってみると、ざらっとした独特の手触りで、いちいち見なくてもそれが1万円だとわかる。そして水に濡れても、そう簡単には破れない丈夫さも兼ね備えている。簡単には偽装できないほか、丈夫で手に入りにくい特別な繊維で紙を作っているのだ。
また印刷の技術にしても、透かしやホログラムをはじめ、マイクロ文字や特殊発光インキなど、このほかにも数えきれないほどの技術を費やして作られている。偽造など絶対に許さないといわんばかりの仕上がりだ。
日本の紙幣の精巧さは、世界でもトップクラスだというし…原価22円で作られていることは、ひょっとしてとんでもないことなのかも?
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以下の動画では、貴重な紙幣の製造シーンが公開されているぞ! それにしても印刷に使う原版を彫れるようになるまで、18年もかかるとは…。偽造なんて到底無理な話である。
【追加雑学①】1万円の価値は「価値がある」という共通認識で成り立っている
「22円で作られる1万円に、なぜ1万円分の価値があるんだ?」と疑問に思った人もいるかもしれない。結論からいえば、1万円の価値は紙幣そのものではなく、「紙幣にそれだけの価値がある」と、人々が認識していることにあるのだ。
これを説明するためには、少しお金の歴史をさかのぼる必要がある。
その昔、商品の価値は希少性の高い「金(きん)」を基準にして定められていた。これを「金本位制」というが、商品を買うのにいちいち金を持ち歩くわけにはいかない。重くてかさばるのは、想像に容易いだろう。
そこで金の預かり証として、紙幣が用いられるようになったのだ。持っていれば、その分の金といつでも交換できるため、そこから「紙幣にはそれだけの価値がある」という認識が人々に広がっていくことになる。
この認識が元となって、現在の貨幣の仕組みにもつながっているのである。つまり「国民の誰もがそれだけの価値があると知っていること」が、お金に与えられた価値なのだ。
【追加雑学②】その他の紙幣や硬貨の原価は?
1万円以外の原価を辿ってみると、5000円札は20.7円、1000円札は14.5円と推測されている。
また硬貨については素材から、より正確な原価が計算できるぞ!
- 500円玉…ニッケル黄銅・7グラム・30円~45円
- 100円玉…白銅・4.8グラム・15~30円
- 50円玉…白銅・4グラム・8~20円
- 10円玉…青銅・4.5グラム・3.5~12円
- 5円玉…黄銅・3.75グラム・2~4円
- 一円玉…アルミニウム・1グラム・0.7~3円
500円玉や100円玉を作るのには1万円札以上のコストがかかるのか…。また10円や1円なんて、原価のほうが高い場合もある! これを見ればお金の価値に原価は一切関係ないことも一目瞭然だ。
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1万円札の雑学まとめ
1万円札の原価がたったの22円ということにまず驚かされたが、それよりも驚いたのは、その22円に込められた製造技術である。何気なく使っているお札が、ある種、芸術品のようにさえ思えてくるぞ!
なんにせよ、原価はお金の価値とはまた別モノの話。実際、「原価は22円だよ」と言って1万円をもらっても、損した気分になどならない。すっかり浸透した価値観だが、こう言われてみると不思議な感じである。