宅飲みおつまみの定番といえば、あなたは何を思い浮かべるだろう。ポテチやサキイカなんかもいいけど、やっぱり柿の種! という人も多いはずだ。
ピリッとした味わいがお酒のいいアクセントになるし、お米が原料だからか、小粒な見た目の割には食べ応えもある。そしてあの細長く尖がった形も食べやすくてどんどん手が伸びてしまう…。
そう、柿の種のヒットには、あの形が欠かせなかったといえるが、実はあの形になったのは、創業者の大ピンチとも取れるアクシデントからだったという。今回はそんなヒット商品・柿の種のトリビアを紹介しよう!
【食べ物雑学】「柿の種」の由来とは?
【雑学解説】「柿の種」はアクシデントから生まれた
大正時代、新潟県長岡市に「浪花屋製菓株式会社」という米菓の老舗があった。この浪花屋こそ、柿の種の元祖を作った会社である。
当時のあられは機械で大量生産されることはなく、ひとつずつ手作業の手作りだ。浪花屋でも例のごとく、クッキーの抜き型の要領で、餅を小判型にくり抜いてあられを作っていた。
しかしあるときのこと、餅をくり抜くための金型を、創業者の妻…つまり浪花屋の女将さんがうっかり踏みつぶしてしまったのだ。
あらら…すぐに買い直さないと…と思うところだが、何せ当時の金型はとても高価で、簡単に新調できるものではなかった。こうして仕方なく、ひしゃげた金型であられを作り出したのが、柿の種があの形になったそもそもの始まりなのだ。
皮肉から「柿の種」と命名!
よく考えてみると、果物の柿の種はもっと丸い形をしていて、お菓子のそれとはあまり似ていない気がする。
どういうことかというと、このネーミングのヒントになったのは普通の柿ではなく、新潟県名産の「大河津(おおこうず)」という品種の柿だったからである。大河津の種は、細長くて尖がった形をしており、お菓子の柿の種によく似ているのだ。
なんでも浪花屋のお得意先だったご主人が、ひしゃげたあられを見て「まるで柿の種じゃないか!」とディスったのをヒントに、創業者の今井與三郎(よさぶろう)さんが命名したのである。
親しみやすい「柿の種」という名前が、まさかお客の皮肉から生まれていたとは…。このことにしても、金型がひしゃげたことにしても、今井さんの逆境を転機にしてしまうところには感心させられる。
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【追加雑学①】いろんなメーカーが「柿の種」を作ってるけど…?
ところで柿の種というと、あなたはどこのメーカーを思い浮かべるだろう。きっと「亀田製菓が元祖だと思っていた」という人も多いのではないか?
このようにさまざまなメーカーから柿の種が出ているのは、元祖である浪花屋が名前や製法の特許を取得しなかったのが原因だ。
特許を取っていないのだから、後発のメーカーも堂々と類似品を作り、柿の種を名乗れる。こうして柿の種という名前がまるであられやクッキーなどと同じ、お菓子の種類かのように一般化していき、現在もさまざまなメーカーから売り出されているのだ。
【追加雑学②】柿の種のピーナッツ、いる派?いらない派?
柿の種の話題になるとまず登場するのが「ピーナッツいる、いらない談義」だ。なかには、いつもピーナッツばかり余ってしまうという人もいるのでは?
実は元祖である浪花屋の柿の種には、ピーナッツは入っていない。少し意外だが、それなら浪花屋とは関係ないところで、ピーナッツが入るようになったということだ。これにもさまざまな説が唱えられているぞ。
帝国ホテルの日本らしさ演出説
帝国ホテルでは当初、お酒のおつまみにピーナッツを出していた。しかし売り上げが伸び悩み、考え出された打開策が柿の種を混ぜて提供することだったという。
あられは日本らしさがある…そして人気のあられといったら、やっぱり柿の種でしょ! といった具合か。たしかにピーナッツだけを出されるより、見た目にも華が出る感じがする。
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亀田製菓の思いつき説
ピーナッツを入れ始めたのは、亀田製菓だという説もある。ある日のこと、直売所で店番をしていた創業者の奥さんが、柿の種にピーナッツを入れて食べてみたところ、その相性の良さに気付いたというのだ。
この説が本当なら浪花屋といい、亀田製菓といい、柿の種界隈には、それぞれ女将さんが転機をもたらしたことになる。女性が主人の家業を支える古き良き時代の背景が垣間見えるエピソードだ。
かさ増し陰謀説
とある販売業者が、なんとかかさ増しして売れないものかと、試しにピーナッツを入れたという説もある。
やっぱり商売人はいろいろ大変なんだな…と思わされるが、かさ増しが目的だったとしても、相性バッチリのあの組み合わせを編み出したことは大発明だ!
どの説が本当なのかははっきりしないが、いずれもピーナッツを入れたことが状況を好転させていることは間違いない。
ちなみに亀田製菓いわく、柿の種とピーナッツの比率は売り上げに深く結びついているらしい。
マツコさんは7:3をご所望のようだ。
柿の種の雑学まとめ
今回の柿の種のようにヒット商品のアイデアを辿ってみると、意外なところから生まれていることも多い。現代なら金型がひしゃげてしまったとしても、直して使ったり、新しいものを買ったりして解決することだろう。
しかしあるものでどうにかしないといけない状況が、思わぬ成功を生むこともあるのだ。なんにせよ今、おいしい柿の種を食べられるのだから、創業者の今井さんには感謝しなければ!