あなたは「絶対零度」という言葉を知っているだろうか?
10代や20代なら、ポケットモンスターの一撃必殺技「ぜったいれいど」として知っているかもしれない。要は一撃でやられてしまうぐらい寒いわけだが…それって具体的には何度なんだ?
…0℃だったらそこまで寒くないよね?
ということで、今回の雑学記事では絶対零度の意味、それに加えて絶対零度の世界で起きる「面白い物理現象」を2つ紹介するぞ。
【生活雑学】「絶対零度」って何度のこと?
【雑学解説】絶対零度とは、熱力学における最低の温度
絶対零度とは熱力学における最低温度で、具体的には摂氏(℃)マイナス273.15度のことだ。ええ…0℃より全然寒いやん…。
物体の熱は分子(または原子)の乱雑な振動によって生じ、これを熱運動という。熱運動が乏しければ温度は低く、熱運動が激しければ温度は高くなる。
絶対零度とは、この熱運動が一切ない静止状態を意味する。ただし、現代物理学(量子力学)では不確定性原理のため、原子の振動が止まることはないと考えられている。
つまり絶対零度は存在しないということか…。それってめちゃくちゃロマンじゃないか!
絶対零度を導き出したのは日本人だった!
現状では存在しない定義なのだから、絶対零度が何度かを推測するのは至難の業である。実際、17世紀フランスの物理学者ギヨーム・アモントンが最初に「絶対零度はマイナス240℃ぐらいだよ」と唱えてから、200年以上ものあいだその議論は繰り返されてきた。
18世紀にはフランスの物理学者ジャック・シャルルとジョセフ・ルイ・ゲイ=リュサックによってマイナス273℃に。20世紀に入るとさらに「マイナス273.11℃だよ」「いやいや、マイナス273.16℃だぞ」という具合に、各国の権威たちの議論は白熱した。
この気の遠くなるような議論に終止符を打ったのは、なんと日本人なのである。
1954年、東京工業大学の木下正雄氏・大石二郎氏のチームが導き出した「絶対零度=マイナス273.15℃」が結論とされたのだ。
両名は1932年から絶対零度の研究に取り掛かり、約20年にも渡って小数点以下の値を導き出すことに心血を注いできた。その根気と正確さが世界から認められたわけである。これぞ日本人の底力!
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【追加雑学】絶対零度では、何が起きるのか?
日常から離れた絶対零度の世界では、特殊な現象が観測される。
代表的な現象を2つ紹介しよう。
超伝導現象
超伝導現象とは「金属の電気抵抗値がゼロになる」ことで、簡単にいうと、ものすごく効率よく電流が流れるようになる。
金属の原子も電子と同様に熱運動しているため、電流を導線に流せば互いに衝突を起こす。電化製品を使用していると熱をもつ理由は、この電子と金属原子の衝突によって熱運動が激しくなるからだ。
電気抵抗とは電子と金属原子のぶつかりやすさのことで、激しく熱運動している金属原子は盛んに電子と衝突する。つまり金属は温度が高いほど電気抵抗値が高くなるのだ。
そして金属を冷やすと、金属原子の熱運動が抑制されて電気抵抗値が下がるため、電気がめちゃめちゃ通りやすくなる。
絶対零度の域まで冷やすと電気抵抗値はゼロ。邪魔するもののなくなった電気は、最高のパフォーマンスを発揮できるわけだ! これが超伝導現象の原理である。
こちらの動画でも超電導とそうでないものの違いが分かりやすく紹介されている。
ボース・アインシュタイン凝縮(BE凝縮)
ボース・アインシュタイン凝縮は、原子の群れが「1つの巨大な原子」のように振舞う現象である。
物体を光学顕微鏡で観察すると、原子と原子の間はすごく隙間が多いとわかる。物体は肉眼では凝縮された単体のように見えるが、実際のところはスカスカなのだ。
これらの原子は1つ1つが個別に運動し、好き勝手に振る舞っている。しかし絶対零度まで冷やすと運動量が極限まで低下し、原子が群れで連動する「波」としての性質が強まるのだ。
これらの原子群に何かしらの力を働かせると、一斉に同じ運動を見せる。まるで「1つの巨大な原子」のように振る舞うわけだ。
絶対零度の雑学まとめ
絶対零度についての雑学トリビア、いかがだっただろうか。
特に超電導現象については、世界中の科学者が熱心に研究している題材だ。室温下でも超電導現象を意図的に起こせる技術を発見できれば、電気エネルギーの送電における電力損失を大幅に削減できるようになる。絶対零度は省エネにつながるのだ!
ちなみに、車体を磁力の反発で浮かせるリニアモーターカーは、超電導現象を利用している。
揺れることなく、颯爽と走るリニアモーターカー。未来の飲ん兵衛には御用達の乗り物となりそうだ!
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