『星の王子さま』や『人間の土地』の著作で知られるフランスの作家・サン=デグジュペリ。現在でも多くの読者を魅了してやまないこの作家は、大空を駆けめぐった飛行家としても知られている。
彼が飛行士として活躍した時代は、航空業界の黎明期にあたり、その技術水準の低さから多くの飛行士たちが命を落としている。サン=テグジュペリも飛行中、幾度か命の危険にさらされた経験をもっている。
それは彼の操縦技術に問題があったのではなく、当時の航空技術が安全な水準に達していなかったからである。今回はそんなサン=テグジュペリにまつわる雑学をご紹介していこう。
【歴史雑学】サン=テグジュペリは操縦が下手で事故多発?
【雑学解説】勇敢さと悲劇に包まれたサン=テグジュペリの生涯
フランスの作家であり、飛行家でもあるサン=テグジュペリ。黎明期の民間航空事業のパイロットとして、欧州ー南米間の空路を開拓した物である。そんな彼は飛行中、何度も命の危険にさらされた経験をもっている。
1900年、フランス・リヨンで生まれたサン=テグジュペリは、幼少の頃から空に対する憧れを抱き続けていた。21歳のとき、フランス陸軍の飛行連隊に志願して入隊。民間の飛行免許と軍用機の操縦免許を取得する。軍を退役した後、陸軍での経歴を活かすために、民間の航空業界に入る。
この選択が彼の一大転機となった。民間の航空会社に職を得て、郵便飛行のパイロットとして働き始めるのだ。だが、当時の航空業界は現在とは異なり、安全性や技術レベルなどが未熟で、空を飛ぶ行為は飛行士たちにとって危険極まりないものだった。
当時、機体に搭載されたレーダーや無線機も十分な機能をもっていない時代だ。不完全な機体で大空を飛ぶことは、飛行士たちの命を危険にさらす行為に等しかった。彼の僚友だった飛行士たちも、墜落や遭難などによって多くの命を落としている。
サン=テグジュペリもまた、任務中や試験飛行中に重度の怪我を負った経験がある。それは彼の操縦技術が下手だったのではなく、安全に飛行するための航空技術が、当時はいまだ確立されていなかったからである。
なお、砂漠に不時着した経験をもとに執筆されたのが、世界中で親しまれている『星の王子さま』である。同書が出版された翌年の1944年、サン=テグジュペリは、当時、ナチス・ドイツが占領していたフランス本土の偵察飛行に出た。しかしその飛行中、永遠に消息を断った。
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【追加雑学①】サン=デグジュペリの最期は、長いあいだ謎に包まれていた
サン=テグジュペリが消息を絶ったのは、第二次世界大戦の末期にあたる夏の盛りの頃だった。彼は単独でナチス・ドイツの偵察飛行に出撃したのを最後に、永遠に地上に戻ることはなかったのだ。
サン=テグジュペリの死については、フランス上空を飛行中、ドイツ軍に撃墜されて地中海に墜落したものと考えられていた。しかし、搭乗した機体や彼の遺品などが見つからなかったために、あくまで推測の域を出るものではなかった。
ところが、1998年、地中海に浮かぶ島の海上で、サン=テグジュペリと名の刻まれた遺品が見つかったのである。それまで近くの海域で、機体の一部と見られる残骸が確認されてはいたが、彼の遺品が発見されたのは初めてだった。
その発見を受けて大規模な捜査が行われた。そしてついに、サン=テグジュペリの搭乗機だった機体がついに発見された。2003年、機体は海上から引き揚げられ、正式に彼が搭乗した機体だと認められることになる。
【追加雑学②】サン=テグジュペリを撃墜したのは彼の作品の愛読者だった元ドイツ軍パイロット
地中海で引き揚げられ機体の一部が、彼の搭乗機であったことは先に記した通りである。それから5年後、驚愕の事実が明らかになる。
フランスの地方紙のWebサイトに、ある人物のインタビュー記事が掲載された。それは、サン=テグジュペリの操縦機を撃墜したと告白する、元ドイツ軍パイロットのインタビュー記事だった。
インタビューに答えたのは、元ナチス・ドイツ軍のパイロット・ホルスト・リッパート曹長。サン=テグジュペリの機体を撃ち落としたのは私であり、彼の操縦機と知っていれば、撃墜してなかったと語った。また、幼い頃から彼の作品が大好きだったとも付け加えている。
証言が本当ならば、サン=テグジュペリは、彼の著作を愛読していたファンに撃墜されたことになる。これを悲劇といわず、何といえばいいのか。戦争はあらためて残酷なもの、と考えさせられるエピソードである。
雑学まとめ
以上、サン=テグジュペリにまつわる雑学をご紹介してきた。黎明期の航空業界において、彼は飛行士として勇敢に大空を駆けめぐった。だが、結果的に、その使命感によって戦争の犠牲者に名を連ねることになった。
勇敢さと悲劇の生涯を送ったサン=テジュクペリ。不幸なかたちで生涯を終える結果になったが、彼が胸に秘めた飛行士としての矜持や勇敢さは、生前に残した著作のなかに永遠に閉じ込められている。
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