地球でもっとも大きな動物はシロナガスクジラだ。
太古の時代を生きた恐竜にはとてつもなく巨大なイメージがあるが、実のところ、シロナガスクジラはそれをもしのぐ大きさである。
なんだ、クジラに負けちゃうなんて、恐竜って案外大したことないんだな。…などと思ったら大間違いである。
めったにお目にかかれない生き物だから想像がつきにくいが、シロナガスクジラの大きさは明らかに異常だ。マジで『ゴジラVSシロナガスクジラ』なんて映画があってもおかしくないぐらいだぞ!
今回の雑学は、そんなシロナガスクジラの大きさや、その興味深い生態に詳しく迫っていく!
【動物雑学】地球最大の生物・シロナガスクジラの大きさがスゴい!
【雑学解説】シロナガスクジラの大きさってどのくらい?
シロナガスクジラは地球上最大の動物で、その体長は34m、体重は200トンにも達している。
その大きさをわかりやすくたとると…
- 心臓は軽自動車と同じぐらい
- 血管のなかを人間が通れるぐらい
- 舌の重さが象の体重と同じぐらい
って感じ。デカすぎだろ…。
太古の時代から数えても、シロナガスクジラより大きな生物はいまだ見つかっていないという。
史上最大の恐竜・アルゼンチノサウルスなら体長で勝つことはできるが(35~45m)、彼らは体重が100tしかない。つまり長さはあっても大きさでいえば、シロナガスクジラの半分ほどなのだ。
以下の動画では、海岸に打ち上げられたシロナガスクジラが映されている。なんだそんなに大きくないじゃん…と思いきや、実は生まれて数ヶ月の赤ちゃんだというから驚きだ。
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シロナガスクジラの心臓は限界の大きさ
そうはいっても、「虫がとんでもなくでかい!」みたいな時代もあったのだから、発見されていないだけでシロナガスクジラより大きな生き物がいたんじゃないか? と思う人もいるかもしれない。
しかし…おそらく今後も、そんな生き物の化石が見つかることはない。シロナガスクジラの心臓は、地球上で稼働できる限界の大きさだといわれているからだ。
2019年に発表されたスタンフォード大学の生物学者らの研究によると、シロナガスクジラが海面で空気を吸っているときの心拍数は1分間に40回程度だが、海中に潜ると数回程度まで急激に低下するという。
この心拍数の差の開きが、心臓がかなりギリギリの状態で動いていることを物語っているのだ。つまりシロナガスクジラの心臓が今より大きくなれば、地球上では鼓動を打つことさえできなくなってしまうということである。
シロナガスクジラの赤ちゃんも大きい
地球最大の生物であるシロナガスクジラは、生まれたころからデカい。
生後間もない段階で体長は7m、体重は2トンを超えており、すでに大人のシャチぐらいの大きさはある。ちなみに、シャチはイルカなどに比べれば倍以上の大きさをもつ生物である。
さて、赤ちゃん時代からデカすぎるシロナガスクジラだが、さらに驚かされるのは、その異様な成長スピードだ。身体は1日で約4cm大きくなり、体重は1時間で約4kg増える。たまごっちぐらい早く育つ。
シロナガスクジラの赤ちゃんは毎日400~700リットルの母乳を飲み、その大きな身体を成長させていく。そして9か月後には立派な大人になり、食事も親と同じになるのである。
ついでに寿命は80~120歳。長生きしたものだと200歳なんてのもいるらしい。やっぱり大きな動物はそれだけ長生きするんだなあ…。
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【追加雑学①】シロナガスクジラの食事はプランクトン!
シロナガスクジラは、オキアミという3~6cmぐらいのエビによく似たプランクトンをエサにして生きている。魚も食べるには食べるが、ニシンやシシャモなど、意外と基本は小型のものだけである。
シロナガスクジラの摂食方法を「ろ過摂食」といい、これがちょっとおもしろい。シロナガスクジラはヒゲクジラの仲間で上あごにヒゲが付いており、プランクトンと海水を一緒に飲み込むと、このヒゲをろ過装置にして海水だけを吐き出せるようになっているのだ。
と、ここで気になるのは、そんなに大きな身体なのに、プランクトンなんて腹の足しになるのか? ということである。
大きな口で一気に飲み込んだオキアミの量は、一口で500kgにもなるのだ。一日の食事量は約4トンといわれているので、8回も口を開けば完了である。
体が大きすぎるので意外と小食な気もするが、あんまり食欲を出されてもオキアミが絶滅しそうだ。そのままでお願いしたい。
ちなみにほとんどの期間は子作りで忙しいので、一年のうち4分の1ぐらいの間しか食事はしない。…やっぱり、ちょっと心配になるからもうちょっと食べてほしい。
以下の動画では、シロナガスクジラの捕食シーンが捉えられている。とりあえず口デカすぎ…遠めからのアングルなのでわかりにくいはずなんだが、すんごいわかる。
大きな魚は飲んでも吐き出します
…というか、そんなに大量に飲み込むなら、でかい魚も一緒に入っちゃうでしょ。絶対マグロとか食ってるでしょ。と思うところだが、やっぱりシロナガスクジラの生態をなめちゃいけない。
口の大きさに反して、シロナガスクジラは喉が狭いので、大きな生き物が入れば基本的には吐き出す。大きな魚は「食われたー! と思ったら出られたー!」みたいな感じになるわけだ。進撃の巨人状態である。
ちなみに最大のサメであるジンベエザメもプランクトンを食べている。プランクトンは大型海洋生物の定番メニューなのだ。
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シロナガスクジラが大きくなった理由とは?
そもそもシロナガスクジラがここまで大きくなったのは、実はプランクトンをメインのエサにしていたからだという。
これはシカゴ大学のグラハム・スレイター博士らの研究チームが辿り着いた論で、アメリカのスミソニアン国立自然史博物館にて、絶滅した種類も含めて76種類、140頭以上ものクジラの化石を調べる大研究を行った。
小さなプランクトンをエサにしたから大きくなったなんて…なんだか矛盾しているようにも思える。しかしその原因は、プランクトン特有のある性質にあったのだ!
読者のみなさんも小学校の授業で、プランクトンが異常繁殖する「赤潮」については習ったことがあるだろう。そう、彼らは水温や水流など、ちょっとした環境の変化で異常繁殖する。
地球の長い歴史を辿ってみれば、赤潮なんて足元にすら及ばないくらいの異常繁殖をした時期もあった。それが450万年前の話で、このころのシロナガスクジラはプランクトンの食べ放題状態を受け、急激に大きく成長したのだという。
また、プランクトンはそれだけ環境に左右されやすい生き物のため、季節ごとに繁殖の場所が変わる。そうなるとシロナガスクジラは、エサを求めて長距離の移動をしなければならず、そのエネルギーを蓄えるためには、大きな身体が必要である。
こういったいくつもの条件が重なって、彼らは史上最大の生物へと進化していったといわれている。
【追加雑学②】シロナガスクジラの天敵は?
ここまで大きいのだから、シロナガスクジラに天敵なんていないのではないか…。そう思わされるところだが、実はシロナガスクジラを襲うハンターが海にはいる。
…シャチだ。
シャチがイルカやサメを捕食することは知られているが、まさかのまさかで、彼らはシロナガスクジラまで襲ってしまうことがある。
以下の動画では、シャチがシロナガスクジラを襲っているシーンが映されている。
前述したように、シロナガスクジラの赤ちゃんはシャチと同じぐらいの大きさだ。シャチは自分と同じ大きさぐらいの生き物なら、平気で襲い掛かっていく。
大人のシロナガスクジラを襲うことはまずないが、それでも面白半分で体当たりしてくることは稀にあるという。…血の気の多いヤツである。
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実は泳ぐスピードが速い
シロナガスクジラは大人でも臆病な性格なので、シャチがいくら小さいからといっても、体当たりされれば戦わずに逃げる。うん、逃げるが勝ちだ!
そのサイズ感からゆったりと優雅に泳いでいるように見えるが、実はシロナガスクジラは泳ぐのがかなり速い。その速さはなんと時速50km。200tの巨体が原付バイクぐらいの速度で進むと考えると普通に恐怖である。
わかりやすく比較を出しておくと、ジョーズに出てくるホオジロザメは時速35km。おなじみの危機迫るBGMが流れても、シロナガスクジラが相手なら追いつけもしない。
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【追加雑学③】シロナガスクジラの脳は意外に小さい
シロナガスクジラの脳の重量は約7kgで、動物のなかではマッコウクジラに次いで2番目に大きい。これは人間の5倍ほどあるのでとんでもない大きさに思えるが…実はそうでもない。
体重200トンもあるシロナガスクジラの脳が7kgしかないというのは、むしろ小さすぎるぐらいである。
たとえば、ダチョウの体重は100kgを超えるが、脳の重量は約40gしかない。お世辞にも知能の高い動物とは言い難い…。しかし! シロナガスクジラはその大きな身体を踏まえると、実はダチョウよりも脳の割合が少ないのだ。
こう考えると、シロナガスクジラの脳は、あくまでその巨体を動かすためだけのもので知能はあまり高くないのでは…? といわれているのだ。
しかしシロナガスクジラと近しい存在のマッコウクジラのなかには、独自の文化をもっている種類がいるともいわれ、脳の比率の割に知能が高いのかも? なんてこともいわれている。
うーん…じゃあシロナガスクジラも、身体との割合だけで考えるのは違うかもしれないってことなのか…? このあたりの研究が進むといいのだが…。
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【追加雑学④】シロナガスクジラは絶滅危惧種
何億という地球の歴史のなかで、地球最大の生き物であるシロナガスクジラと同じ時代に生きられていることは、考えてみれば奇跡に近い話だ。しかしそんな奇跡も、人間の手によって消えかかっていることを忘れてはならない。
かつてシロナガスクジラは世界に30万頭近く生息していたが、現在は1万頭ほどにまで減り、絶滅危惧種に指定されている。明治時代までは日本でも姿を見ることができたが、今となっては日本に来ることなどほとんどない。
どうしてこのような事態になってしまったかは言うまでもなく…産業革命から1965年ごろまで盛んに行われていた、クジラの乱獲が元凶である。シロナガスクジラにいたっても、この時期に年間3万頭ずつも捕獲されていたという。
現在は規制によって個体数が少しずつ回復し、南極海で700頭以下に減っていたのが、3000頭ほどまでに増えてきてはいる。
とはいえシロナガスクジラの生態を考えると、絶滅危惧の問題はまだまだ解決しそうにない。彼らは一度に一頭ずつしか出産をしないため、急に数が増えることはないのだ。
天敵はシャチ…という話があったが、シロナガスクジラの一番の天敵は、実は人間のかもしれない。
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【追加雑学⑤】シロナガスクジラの生息地は?
現実的な方法でシロナガスクジラを見ようと思うなら、近年はスリランカや、アメリカのカリフォルニア州でホエールウォッチングが行われていることがある。
以下はスリランカのホエールウォッチングの様子を映した動画だ。シロナガスクジラは2:44~登場するぞ!
スリランカで見られるのは最大サイズより少し小さめのシロナガスクジラだというが、それでも20m超え。これだけ至近距離で見れたら感動するに違いない!
初夏~秋にかけてはトリンコマリー、秋~春まではミリッサという都市でそれぞれツアーが行われているぞ。さっそく行ってみたい国リストに追加だ!
雑学まとめ
今回は、地球最大の生物・シロナガスクジラの雑学をご紹介した。
シロナガスクジラの心臓は軽自動車ぐらい。血管のなかは人が泳げるぐらいデカい。地球上の堂々たる限界サイズだ!
今となっては見られる機会もそうそうない動物なので、正直、その大きさにピンとこない部分もあるだろう。
どれだけかかるかわからない話だが、彼らの繁殖がうまく進んでその数が回復し、また日本でも見られる未来がくるといいな。