マスクメロンというと日本では代表的な高級果物の1つだろう。価格は高いもので1玉3万円を超える。このメロンは湿度や温度の管理が行き届いた温室でなければ、栽培することができないという。
特徴的な網目があり、これがマスクを連想させ、マスクメロンという名前がつけられたと考える人は少なくない。しかし、マスクメロンの名前の由来は香りであり、マスカットとも関連があるという。
マスクメロンの名前は香りが由来という雑学についてご紹介しよう。
【食べ物雑学】マスクメロンの「マスク」の意味とは?
【雑学解説】マスクメロンの「マスク」の意味は香り
高級なメロンの代名詞ともいえるマスクメロンはマスクという響きから、英語の「mask」が由来と考える人が多いという。
英語の「mask」は仮面を表す単語で、日本ではマスクと読む。日本では仮面というよりも、花粉症や風邪などの時につけるマスクのイメージが強いかもしれない。
しかし、マスクメロンのマスクは「musk」から来ている。「musk」は英語で、麝香(じゃこう)を意味する言葉だ。麝香は雄のジャコウジカの腹部にあるジャコウ腺から採れる分泌物を乾燥させた香料のこと。
つまり、マスクメロンの香りが麝香に似ていることから「musk melon」と名付けられたのだ。
この「musk」の発音はマスクに近く、ローマ字読み的なムスクとは発音しない。つまり、日本人の感覚でいえばムスクメロンと読みがちだが、マスクメロンに聞こえるのである。
聞いたときにマスクメロンと聞こえるため、ムスク=麝香のことに気づけないのだろう。
ちなみに、「マスカット」も同じく麝香の香りに近いことが由来して名前がつけられた果物だ。ほかにも、麝香の代用ができる物質が採れるジャコウネコ「Musk cat」をもとにして、マスカット「muscat」と名前が付けられたという説もある。
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【追加雑学①】マスクメロンの模様はひび割れの跡
マスクメロンは1つの果実を残して、それ以外の果実は全て摘んでしまう栽培方法をとるようだ。
そのため、1つの果実に栄養が集中するためマスクメロンは味が良くなる。しかし結果として、1つの株から1つの果実しか収穫できないので価格が高くなってしまう。
また、マスクメロンの網目模様もマスクメロンの味と関係がある。マスクメロンは肥料が少ないと果実も葉も十分に育たたない。肥料が多すぎると、葉が育つが果実は育たなくなってしまう。
水が少ないと枯れてしまうが、水が多すぎると病気になりやすく、果実の味や糖度も低くなってしまうのだ。そのためマスクメロンの味を良くするためには、水と肥料の量を増減させ、適切に調節する必要がある。
この調整の結果、マスクメロンの皮にひび割れができるのだ。
水と肥料を多く与えると皮が成長して大きくなり、減らすと皮は固くなる。再度水と肥料の量を増やすと、今度は皮があまり成長しない。しかし、皮は大きくならなくても、果肉の部分は成長し糖度も高くなっていく。
そして、中身の体積が増えた結果、皮はひび割れることになるわけだ。ひび割れた部分は時間が経つと修復され、そこが網目模様になる。
マスクメロンの網目模様は、メロンの味を良くしようとした結果なのだ。
上の動画はメロンの模様ができる様子を撮影しているが、ひび割れが塞がる様子を見ることができる。網模様が細かく、均一なメロンほど順調に成長し、品質が高いといわれている。
【追加雑学②】マスクメロンはがんに強い食品とされていた
マスクメロンはかつてがん予防に効果がある食品として、デザイナーフーズ計画の中で紹介されたことがある。
デザイナーフーズ計画とは1990年代にアメリカで計画されたもので、アメリカの国立がん研究所で2000万ドルの予算でがんを予防しようとしたものだ。
がん予防効果のある野菜や果物が40種類ほど公開され、マスクメロンはその中に含まれていたのである。ちなみに、その中でもっともがん予防に効果があると考えられていたのはニンニクだった。
その後、デザイナーフーズ計画自体が消滅したせいか、マスクメロンにがん予防に効果があることはあまり聞かれなくなった。
しかし、マスクメロンの効果が否定されたわけでない。マスクメロンには精神を安定させるギャバや血行を良くするアデノシン、βカロテンなどが多く含まれている。
また、ナトリウムの排出を助け、血圧の上昇を防ぐカリウムの量も多い。カリウムが多いといわれるスイカの3倍の量が含まれているのである。
マスクメロンは高価なため、簡単に食べられないのが欠点だろう。しかし、マスクメロンが特別栄養価が高いわけではなく、メロン全般が栄養価の高い果物である。ほかのメロンを食事に取り入れるのは良いかもしれない。
マスクメロンの雑学まとめ
マスクメロンのマスクは香りが由来だという雑学についてご紹介した。麝香に似た香りのメロンだから、マスクメロンになったわけだが、麝香自体も非常に高価なものである。
麝香を採るために、ジャコウジカは乱獲されたこともある。現在は、麝香を採ること自体がワシントン条約で規制されているのだ。
規制前の時点で、価格は1kgあたりで250万円もしたという。高級なメロンにつける名前としては、ピッタリな名前かもしれない。とはいえ、麝香の方がマスクメロンよりもはるかに高価なようである。