音楽の授業で手にする「リコーダー・ピアニカ・カスタネット」。これらは小学生の三種の神器ともいえる。
子どもの頃からこんなにいろんな楽器に接することができるとは…日本の義務教育ってすごい。しかし小学生がそんなことを知るはずもなく、特にカスタネットなんてボケの格好の餌食だ。
指を挟んで「噛まれた!」と悲痛な叫びをあげていた小学生の頃。懐かしいなあ…(遠い目)。
そんなカスタネットさん。実は、「ミハルス」という正式名称がある…という噂をご存知だろうか。
なに!? 小学校の6年間、カスタネットだと聞かされ続けてきたものが、実は「カスタネット」という名前ではなかったというのか!?
今回はそんなカスタネットの雑学についてご紹介していく!
【生活雑学】カスタネットの正式名称は「ミハルス」ではない!
【雑学解説】カスタネットと「ミハルス」は別物ですよ
ネット上でひそかに論争の的となっている、「カスタネットの正式名称=ミハルス」という噂。真相に迫ってみると、どうにもこれが間違っているくさい。
ミハルスは1930年代に発案された楽器で、舞踊家の千葉躬春(みはる)が考案したもの。みはるさんが考えたからミハルスである。ミハルスは、かつて学校の授業でも使用されていた。
あれ? …カスタネットって日本の楽器だっけ? この時点で怪しくなってきたぞ?
我々が知っているカスタネットといえば、貝殻型の木をゴムで留めたものだ。
しかしミハルスは、ゴムではなく蝶番(ちょうつがい)で留めてあり、片手で持てるように指通しがついている。よく似てはいても、まったく別の楽器なのだ。
よってカスタネットはカスタネット。ミハルスはミハルスである。
私たちが小学校で手にしていた赤と青の「教育用カスタネット」は、ミハルスをモデルにしてさらに簡易的に作られたもの。つまりミハルスは、教育用カスタネットの前身モデルみたいな感じだ。
教育用カスタネットとミハルスの違い
教育用カスタネットとミハルスの違いを、わかりやすく表にしてみよう。
教育用カスタネット | ミハルス | |
色 | 赤と青 | 黒 |
鳴らし方 | 両手 | 片手 |
留め方 | ゴム | 蝶番(ちょうつがい) |
うん、けっこう違う。
そしてこのミハルスはそもそも、スペインの伝統楽器である本家のカスタネットを改良して作られている。
まとめると、「スペインのカスタネット→ミハルス→教育用カスタネット」という順に改良が重ねられてきたわけだ。以下よりそのいきさつを解説していこう。
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「本場のカスタネットは鳴らすのが難しい…」→「ミハルス」に改良
ミハルスの元となったスペインのカスタネットは、フラメンコなどの伝統音楽で用いられる。教育用カスタネットのゴムをヒモに変えたような楽器だ。
カスタネットという名前はスペイン語で「栗の実」という意味の「カスターニャ」からきている。
そのとおり。フラメンコの踊り子さんが、踊りながらカチカチ鳴らしているアレだ。専門用語では「パリージョ」と呼ばれるぞ!
フラメンコにおけるカスタネットの演奏動画も紹介しておこう。
これ…カスタネット…なのか? 小学生が叩く教育用カスタネットとはどう考えても次元が違う。
そう、伝統楽器のカスタネットは、このような独特な奏法を前提に作られており、素人が扱うのはどうにもハードルが高い。
そのため日本に伝わる過程で、子どもたちでも扱えるようにと、簡易バージョンのミハルスが考案されたのだ。そこからさらに改良され、現在の教育用カスタネットの形に落ち着いたのである。
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専門家も認める「カスタネット」と「ミハルス」の違い
ちなみにいくら教育用カスタネットが簡易バージョンだといっても、極めればこんな芸当も可能だぞ!
また動画のカスタネット奏者・山本晶子さんも、ミハルスとカスタネットの混同についてTwitterで言及していた。
https://twitter.com/akiko_yamamoto/status/1082052524679417859
うん、やっぱり専門家が言うんだから「カスタネットはカスタネット。ミハルスはミハルス」で間違いない!
【追加雑学】教育用カスタネットはなぜ赤と青の2色なのか?
ミハルスにしても、スペインのカスタネットにしても、使われる木の色はだいたい黒。現在の教育用カスタネットになったときに赤と青が一般的になったわけだが、これはなぜだろう?
実はもともとは、青は男子用で赤は女子用になっていたそうだ。
しかしそれだと、学校が発注するにも男女の人数と個数を合わせる必要がある。どう考えても労力を割くところが間違っているぞ…。
案の定、業者も手間に感じていたのか、いつしかひとつのカスタネットが赤青の2色で作られるようになったのだ。なるほど、これなら「男なのに足りないから赤」みたいなことにもならない。
学校のカスタネットの色は、かつての男女で色を分ける教育の名残りだったわけか!
「カスタネットとミハルス」の雑学まとめ
今回は、「カスタネットの正式名称はミハルス?」という噂の真偽についての雑学をお届けした。
ミハルスは現在の教育用カスタネットの前身モデル。スペインのカスタネットを誰でも簡単に演奏できるよう、日本人が改良したものである。
「ミハルスはカスタネットの一種」というならまだしも、正式名称としてしまうのはやはり違う。噂は噂であり、今回のように微妙に間違っているものも多い。なにごとも鵜呑みにせず、正しいことをしっかり見定めていこう!