松竹梅という言葉があるように、松は昔から縁起の良い植物のひとつとされてきた。日本絵画に描かれていることも多く、古くから日本人に愛されてきた木である。その独特に湾曲した幹のシルエットが、盆栽マニアを魅了してやまない。
さらに、寿司や鰻重の等級も松竹梅で呼ばれており、その中でも松は最上級を指す。松はそれだけ格式高く品格のある、日本を代表する名木なのだ。それだけに、日本の城の周りには必ずといっていいほど松ノ木が植えられている。
そう、城と松ノ木は誰が見ても、絵になる組み合わせである。が、しかし! 城の周りに松ノ木が植えられているのには、意外すぎる理由があったのだ…。今回は日本人として知っておくべきそんな雑学をお楽しみいただきたい。
【歴史雑学】戦国時代、城の周りに植えられた松ノ木は籠城の非常食になった
【雑学解説】城の周りに松ノ木が植えられているのは食べるためだった!?
独特の風情と趣のある日本を代表する松ノ木がお城の周りに植えられているのは、単に美しい景観のためだけではなかった。なんと、いざというときに食べるために植えられていたのだ。いったいあのツンツンした松のどこを食べるというのか。しかもなぜ? ではご説明しよう…。
戦国時代、合戦が起きたときに、敵に攻め込まれて城の周りを包囲される場合があった。そこで攻められた側は、城の防御性を活かしながら持ちこたえる。籠城と呼ばれる状態だ。当然だが城の外に出られない。敵は相手の食糧が尽きるのを待ちながら攻撃し続ける。じわじわと弱らせる作戦だ。
そんなときに備えて、城には数年分の米や保存食がストックされていた。そして、それさえも尽きたときのために、城の周りには柿や栗などが食べられるよう、実のなる木が植えられたりもした。さらにさらに、何もなくなったときのために、なんと松ノ木を非常食としていたのだ。な、なんてストイックなんだ!
松ノ木のどこを食べていたのかというと、木の皮を剥くと出てくる薄皮だ。最初に食べた人、勇者すぎる。その薄皮を煮て他の穀物と混ぜ、餅にして食べていたようだ。実は現在でも、秋田県では松皮餅という伝統的なお菓子として名残が残っている。
【追加雑学①】松ノ木がもつ、驚きの効能とは?
松ノ木が非常食とされていたことだけでも驚きだが、実は松の皮には豊富な栄養が含まれている。ある実験によると、松の樹皮から抽出した成分には、たんぱく質0.3%・脂質0.5%・炭水化物93.9%が含まれており、持久力を保つのに必要な栄養素を含んでいることがわかっているのだ。
さらに、最近ではフラボノイドやポリフェノールが豊富なことにも注目され、松樹皮を使用した美容サプリも人気のようだ。長期戦を強いられ、仕方なく松ノ木を食べていた武士たちのお肌はきっとツルツルだっただろう。
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【追加雑学②】実は松ぼっくりも食べられる
松ノ木が非常食で、しかも栄養素たっぷりというのは意外な事実だった。そして、さらに驚いたことに、松ぼっくりまで食べられるらしいのだ。もう、松ノ木のサプライズが止まらない!
松ぼっくりといえば、小学生が意味もなく拾って集めて、お母さんたちが処分に困る物ベスト5に入るやつだ。あのゴツゴツしたものが食べられるなんて信じがたい…。しかし、なんとロシアには松ぼっくりジャムなるものが普通に存在するらしい。
ジャムにするのは松ぼっくりの若芽で、緑色の柔らかいものだ。なんとこちらもビタミン・ミネラルが多く含まれ、風邪予防にも効果があるという。
木の皮や松ぼっくりまで余すところなく食せる松ノ木。見てよし、食べてよしの万能さだ! アナタも庭に植えたくなっただろう。
雑学まとめ
今回は、城の周りに植えられている松ノ木についての意外過ぎる雑学をご紹介した。松ノ木が食べられるうえに栄養満点なんて、昔の人の知恵はスゴ過ぎる。
そして松ノ木を食べながら戦い続けた昔の武士たちの忍耐力は、ファーストフードとスマホに慣れた現代人が見習うべきことかもしれない。
今度お城を見に行ったときには、松ノ木が美しいだけでなく、かつて戦渦で命をつないだ大切な糧だったことに思いを馳せてみることにしよう…。
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